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ハントマン・ヴァーサス・マンハント/第2章/第2節/「短生種は長命種の隣に立つ夢を見るか?」 #3
ドナの様子がおかしい。それにしても大事な話というのは何だろう。何だって?一緒にヴァチカンに来てくれないかって?報告書の作成に協力者の証言を必要とするからだろうか。……そうじゃない?こっちでの内定を蹴って教皇庁で就職しないかって?ちょっと待ってくれ。確かに君とは長い付き合いだし、俺だって、このまま君と別れるのは寂しいと思ってはいるさ。だからといってだな……。
「……それで朝からこんな感じだと」
「いうわけでございますか……」
彼女からの提案に対して、どう答えたものかと考えあぐねるうちに薔薇の蔓が俺の全身に巻き付いて身動きがとれなくなっていた。このまま俺をチャーター機で運んでいく?季節外れの卒業旅行だと思えばいいだって!?
「必然、一人で出歩かないように拘束することにしました。十六歳の少年には些か過酷な❝ゲーム❞だったのかもしれません。脆弱な精神が現実に耐えきれずに自らに都合の良い白昼夢を見るようになってしまったようです」
「……事情は理解しました」
「彼のお世話は我々に任せて……」
「「お嬢様は休暇を満喫してくださいませ」」
「いやいやいや。ダンナの面倒を見るのもハントマンの役目、貴族の責務です。二人はニンゲンの食事を作って運んでくれるだけで十分ですから!」
「……それはいけません」
「拘束が解かれた瞬間、抑え込まれたニンゲンの獣性が……」
「「お嬢様に牙を剥くやもしれませぬ」」
「それはどういう……この私がニンゲンを相手に不覚をとるとでも?」
「……まぁ、お嬢様には」
「理解できないかな……」
「「この領域の話は」」
「……とにかく私はダンナの容態を見なくてはいけません。二人とも隣の部屋で待機しているように。何かあれば呼び鈴を鳴らします。それまでは決してこの部屋に戻って来てはいけませんよ」
「ちぇッ。結局、❝一番搾り❞はお嬢様のものですか……」
「その間に、二番搾りにどちらがありつけるかを決めるとしましょう」
(続く)