ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第150わ「連帯と倦怠」
……視界の共有。現在、俺の視界は吸血女に筒抜けになっている。それさえ無ければ隙を見て妹との連絡を試みているのだが。
「私の視界を、そのままダンナの視界にしてあげるということです」
吸血女が指を鳴らすと生暖かい頭痛が広がっていく。危険な何かが脳に浸透しつつある。怯える暇もあらばこそ、視界に砂嵐が吹き荒れた。何が起きた?俺は棺桶に押し込められた俺の姿を見ている。そのイメージは古い新聞の写真のように不鮮明なモノクロームだ。
「今だけ特別ですよ。それ以上は解像度を高くしてあげることは出来ません。白と黒さえ区別が出来ればチェスをするには十分でござまいしょう?」
それは分かった。分かったから早くチェス盤に向かってくれ。他人から見た自分の姿というのは、どうにも落ち着かない。まるで昔のホラー映画のワンシーンだった。怪物から逃れて棺桶に隠れた男が隠蔽を暴かれ、悲鳴もあげられずに石の如く固まっているというような……。