【コラム】『インサイド・ヘッド』の面白さを、構造化して考えてみた
『インサイド・ヘッド2』、かなり好評のようですね。
もう観た方も多いと思いますが、この手の動きが遅い僕はこれからです。
ただ、いちピクサーファンとしてきちんと満を持して観たい!と思っており、そこで、前作『インサイド・ヘッド』を例によって構造分析してみました。
すでに観たという方も、ぜひ復習として観ていただければ。
これは、「主人公ヨロコビが成長していく物語」だというのが、整理してみるとよく分かります。
改めて観ると、ヨロコビって最初はけっこう嫌なヤツですよね。
彼女は、自分という感情の持ち主である少女ライリーを独り占めしたいと思っている。ライリーが幸せになるためには自分だけいればよくて、他の感情たちが邪魔だとさえ思っている。
特にカナシミへの当たりは強い。カナシミの存在はライリーにとってマイナスでしかなくて、出来るだけ何もしてほしくない。
床に円を描きカナシミを立たせて「そこから出てくるな」とまで言ってたり、常にポジティブな口調ではあるけど、やってることは結構えぐい。
そんな彼女が、いかにしてカナシミや他の感情たちを受け入れるか。
話の大筋はそういうものだと思います。
伏線も少ないシンプルな動線ですが、「主人公の心理的な変化」がかなり丁寧に描かれた作品ではないでしょうか。そこに面白さがある。
またもうひとつ感じたのは、トイ・ストーリーと構造がすごく似てるな、ということです。
ヨロコビとライリーの関係は、ウッディと持ち主アンディの関係によく似ています。
ヨロコビがライリーを大好きで独り占めしたいという点も、ウッディのアンディに対する気持ちと共通している。
またヨロコビとカナシミのふたりも、ウッディとバズの関係に近い。
両方の主人公ともに、相手を邪魔な存在だと強く思っており、そんな相手と協力しないといけない状況に陥る、という展開も共通しています。
ピクサーの王道パターンのひとつではあるんでしょう。
だけど似ているからといって既視感を持ってしまうとかはなくて、分析してようやく見える構造上の類似。テーマや世界観はまったく違うので、どちらも新鮮に楽しめます。
逆にこの作品ならではの構造上の特別な点でいえば、インサイド・ヘッドは感情世界とライリーの現実世界が同時並行で進んでいき、互いが常にリンクしているということ。
感情世界の行動が現実に影響したり、その逆もあったり、そういう繋がりを見ているだけでも楽しいですよね。
そしてなんと言っても、「ひとりの人間の心の成長」に対するリアリティが本当に高い。
僕は心理学にすこし興味があって本をよく読みますが、たぶんこの作品、心理学者ががっつり監修入っている気がします。
感情たちの関係性、感情世界の構造など、本当によくここまで綺麗に落とし込めたな、とマジで尊敬します。
心と感情なんてテーマ、ある意味すべての観客が当事者だから、そのぶんハードルはめちゃくちゃ高くなると思うんです。
それをきちんと超えてきているからスゴイ!(少なくとも僕は超えたと思ってます)
インサイド・ヘッド2も、とても楽しみ!