古いもの いびつなもの
私の作るアイテムは、アンティーク調と呼ばれる、少し古びた風合いのあるものが中心です。
いわゆる金古美(きんふるび)とか、銀古美(ぎんふるび)と言われているもので、真鍮にメッキを施した金属部品に、アンティーク加工を加えたパーツを使っているのですが、この風合いがとても好きです。
これは「時間」を経たもの、長くあり続けたものに価値を感じる、本物のアンティークジュエリーや骨董品に魅力を感じることと同じ感覚なのだと思っています。
古いもの、長く残されているものは、それだけ大切にされてきた証であり、後世にまで残すだけの価値を認められたものです。
私の作っているモノは、所有者の愛着や、経年による風合いが生む魅力を、現代の加工技術によって少しばかり拝借している、といったことになるでしょうか。
また、私は、アクセサリーに関しては、きっちり整ったものより、どこか少し「いびつ」で、バロックなモノに魅力を感じます。
整った形の美しさには、どこかにテクノロジーの差し響きを感じます。
それはそれで機能的で隙のない美しさがあるのですが、装飾品については、人の手によってどれだけ整えたとしても、どこかに残る(残ってしまう)不完全さが作品の魅力になり、観る人の愛着を生むのだと思っています。
私の作っているものは、所謂アンティーク調で(一部のビンテージパーツを除いては)本当に時間を経た歴史のあるものではありません。
ふと、そんなことを少し寂しく感じた時に、あるアイテムをつくりました。
それはガラス瓶の中に溶かした松脂を流し込み、その中に水晶を沈めたものです。
おそらく数百万年後には、美しい水晶入りの琥珀が出来上がるはずなのですが、西の国へ旅立つエルフの方々向けに商品化して、うちの店で取り扱うべきか少し悩んでいるところです。