単数扱いのThey ~ジェンダーとニューヨークの今
ニューヨークではとてもよくLGBTQカップルを見かける。男女のカップル同様、路上でチュッチュしているのを見ることもある。ニューヨークはLGBTQに寛容、というか、他人のことを気にしない人たちの集まりなので特段取り立てない、というか、そんな雰囲気がある。もちろん、快く歓迎していない人たちもいる。私のクリスチャンの友人は、教義に従って、LGBTQを歓迎しない(具体的にどのような教義を根拠にしているのかは不明)。だからといって、キリスト教会全てがLGBTQに否定的というわけでもなく、レインボーの旗を掲げている教会も見かける。…総じて、自分がどういうスタンスを持っていても、他人に対して差別的視線を向けるわけではなく、「他人は他人、自分は自分」というあり方、というのが的確な描写だと思う。
実際に生活をしていてジェンダーフリーな風潮を感じる事例の一つが郵便物だ。宛名にMr. / Ms. が付けられていない。アパートのマネージメントからのメールでも(こちらの名前、性別を把握しているはずであるが)同様である。
あちこちでGender Free Restroom (トイレ) を見かけるが、MOMAの男女別の女性トイレの入り口には「Women」と大きく書かれその下に小さく「as you identify」というような表現(正確な表現は覚えていないが)が書かれていた。
かつて観劇を見に行った、LaGuardia Community College のオープンスペースにはLGBTQの展示があった↓
各人の名前と信条や心情、そうなった経緯などの説明がついていた。展示の概要説明には、「Generation Z 世代は男女の2つのくくりで分けるのを好まない。様々な立場があるし、流動的とみている人もいる。」とも書いてあった↓
ここにも書いてあるが、LGBTQの人たちの中には彼(He)/ 彼女(She) と呼ばれるのを好まず、単数扱いで”They” と呼ばれたい人もいるそうだ。”They”は日本語に訳すと”彼ら” ”彼女たち”というようにどちらかの性別に区分されてしまうが、英語表現では唯一、(文脈なしでは)性別が判定不可能なニュートラルな表現だ。なお、こういうケースでTheyを用いた場合でも、動詞には三単現のsを付けることはせず、文法通りの活用を続ける。
若い人たちのトレンドでは、メールの署名部分に、どう相手から呼んでもらいたいかを明記するそうだ(LGBTQであってもなくても)。例えば女性と認識しているし、認識されたい私を例にすると
Suttoco-doccoi (she/her)
XYZ Co., LTD.
と表記する。ポイントは太字部分(署名欄では太字にはしない)。認識されたい代名詞を書く。They と呼ばれたい人の場合、ここにThey/them と書く。LGBTQでない人もこのように表記することで、「LGBTQフレンドリーな社会を目指すことに共感し、これをスタンダードにしていこう」という意思表示にもなるのだろう。あるいは、They/She(どっち使ってもいいよ)という表記もアリだそうだ。
私の身近にもゲイちゃんがいる。その人はいつも笑顔でピースフルだ。ニューヨークではその人に限らず、LGBTQの人たちはこちらを笑顔にさせるようなハッピーオーラを持った人が多いように感じる。ピースフル人たちをピースフルに受け入れる社会の雰囲気は誰にとっても居心地が良いように思う。