【🏥クウェート#19】クウェートの医療事情(前)
10月27日(金)
メモをもとに、3週間前の「日記」を書いている。熱を出している間も、メモを取っていたのだ。
クウェートの医療事情の一端でも伝われば幸いだ。
しかし、これは日記と言えるのだろうか?
10月6日 夜
TVerでドラマ「vivant」の最終回を見た。
私たちが日本を発ったのは第9話放送の2日後だったので、あよそ3週間越しの最終話視聴となる。
日本では旬が過ぎてしまったのかもしれないが、娯楽から隔絶された私たちにとって、本作の話題は「vivantな」(生き生きした)ままである。
有能な人物を見つけては、「別班」ではいか疑い続けている。
それにしても、同作のタイトルである"vivant"の意味は、何だったのだろうか?
純粋に「別班」の言い換えなのか。
あるいは「生きている」という語義から、某登場人物の生存を示唆しているのか?
10月7日
朝から熱がある。だるい。
今の私は、全然vivantではない。
午前中は自室で療養した後、午後からシュエイフ寮の2階にある医務室を訪れた。
寮のスタッフが対応してくれたが、英語があまり通じない。
アラビア語に関しても、アンミーヤ(方言)が強く意思疎通ができない。
アンミーヤに通じるロシアのムハンマドを呼び、通訳してもらった。
寮のバスを出し、病院まで連れていってくれるらしい。
また偶然にも同じ日に寮の友人の1人が犬に噛まれた。私は彼と同じバスで病院行くことになった。
日本人学生とロシアのムハンマドが夜遅くまで付き添ってくれた。
彼らには感謝しかない。
バスを使わせてくれたのはありがたい。
しかし問題は、寮のスタッフやバスの運転手が、適切な治療を受けられる病院について知らないことだ。
午前に病院に電話をかけてみたが、全く繋がる気配がなかった。
こうなれば、手当たり次第病院に行くしかない。
シュエイフ工業地帯(学校のキャンパスはここにある)の隣に「メディカルエリア」がある。
私たちは、メディカルエリアの病院をたらい回しにされることになった。
最初に向かったのは、アッサバーフ病院だ。
夜中の11時にもかかわらず、人でごった返している。
(おそらく)ここは保健省直轄の公立病院だ。
クウェート国民であれば、無料で医療サービスを受けられるらしい。それが混雑の理由かもしれない。
総合病院というだけあり非常に広いが、施設案内は不十分だ。
病院内をしばらく徘徊することになった。
犬に噛まれた学生は狂犬病ワクチンを求めていた。しかし必要な処置を受けられそうに無いため、去ることにした。
※外務省のホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/nm_east/kuwait.html )には、クウェート国内での狂犬病を含むワクチン接種についての情報が記されている。
2件目はハーディークリニック。
ここはクウェートでも歴史がある私立病院だ。
24時間営業で、真夜中でも数多くのスタッフがいた。
受付してから30分ほどで受診できるのは、公立病院にはない長所だ。
院内は清掃が行き届いていて清潔。市民IDがなくても、パスポートがあれば受診できる点もありがたい。
ただ、受診料が高額なのが私立病院の難点だ。
先に診察費を払ってから受診することになるのだが、最初に25KD(約1万2000円・真剣佑との撮影一回分)請求された。
しかし、私はPCR検査を受けたかったが、夜中は対応していないとのことだった。
そこで、診療費を払い戻して貰った。
VISAカードで払ったが、現金で戻してくれた。
自分の要望を正確に伝えると(例えば「pcrを受診したい」といったもの)病院がその医療サービスを提供可能かを教えてくれる。
確証がないのなら、病気に対する自身の見解(例えば「自分は風邪だと思う」)は言わず、あくまで「症状」の説明に徹することが吉だと思う。
3件目はムバラク・アル=カビール・ホスピタル。
ここも公立病院であるが、真夜中に利用可能だった。
私も、もう1人の学生も必要な治療を受けられそうだ。
市民IDは無いが、パスポートを提出したところ診療してくれるようだ。ありがたい。
ただし、支払いにはKネット(クウェートの公的なデビッドシステム?)が必要である。これは、市民IDを持っていなければ利用はできない。
私は持っていなかったので、受付の人にキャッシュを渡し、彼にKネットで支払って貰った。
受付の人は(だけではく医師・看護師もだが、)インドやパキスタンといった、南アジア系だと思われる。英語が独特で、なかなか聞き取れない。
クウェートの病院の全てに該当するかは不明だが、この病院の診療システムを説明する。
まず、最初に総合受付で市民ID(パスポート)のコピーを取ってもらい、整理券を受け取る。
その後、看護師から検温や症状の聞き取りをしてもらい、別室でさらに医師が問診をする。
看護師や医師は整理券の裏に症状をメモする。
具体的な診療内容が決まり次第、費用を支払うことになる。
私は10KDを支払った。先程の病院に比べると割安である。
私は医師に、インフル・コロナの検査をして欲しい旨を伝えた。しかしレントゲンしか撮影してくれなかった。
pcr検査をしてほしいと交渉したが、とりつく島もない。
だんだん疲れてきた。諦めてレントゲン室にむかう。
レントゲン室前にも受付があり、印紙を入手することを求められた。総合受付に戻りお金を支払った。発熱しているのに院内たらい回しは辛い。
レントゲン室に戻る。
突如、部屋から男性が飛び出して来た。
金切り声をあげながら、女性が彼を追いかける。彼女は何かを叫びながら、物を放りなげている。
この国に来て以来、レントゲンにいい思い出がない。
「パナドール」を点滴してもらい、診療は終わりだ。
医師はインド英語で断言した。
「あなたは、間違いなくコロナでもインフルエンザでもない。」
なぜレントゲンだけで断言できるのか?
私は疑問を率直に述べたが、取り合ってくれない。諦めて帰宅することにした。
最後に院内の薬局に整理券を提出し、5KDの薬をもらった。
真夜中まで一緒にいてくれた、ムハンマドとルームメイトには感謝しかない。
とりあえず水とお菓子を自販機で買って渡した。
真夜中まで付き合ってくれたバスのドライバーにもチップを渡した。
後編に続く。