ネットワークビジネス離脱者の友人
先日大学時代の友人(Aさん)から電話がかかってきた。
「私ネットワークビジネス辞めたんだ」
Aさんとは1年ほど前に会ったきり連絡を取っていなかった。
1年前、AさんからLINEが来た。
Aさん「久しぶり！元気にしてる？ちょっと仕事のことで相談があってさ。会えない？」
Aさんとは大学時代のサークルが同じで定期的に何人かで飲みに行くような間柄だった。
特に断る理由もなかったので飲みに行くことにした。
一通りお互いの近況報告が終わると本題に入った。
Aさんのビジネス
Aさん「みかん君ってビジネス興味ない？私最近ビジネス始めてさ、副業みたいな感じでお金稼げるんだよね。」
私はお金大好きおじさんなので一応話を聞いてみた。
なにやらコスメやヘアケア商品などをAさんは販売しているらしい。
私が会員になって商品を販売すると私にも利益が入るのだとか。
その会社の社長さんは超有名人なのだとか。
私が新たに会員を獲得し、その会員が商品を売ると私に利益が入るのだとか。
「ねずみ講やん（笑）」
※調べてみるとねずみ講は違法な商売らしいのでネットワークビジネスが適切な表現ですね。今回は分かりやすくねずみ講と書きます。
ネットワークビジネス（別名：マルチ商法やMLM、マルチレベルマーケティング）は、参加者が商品やサービスを販売することで報酬を得るビジネスモデルで、勧誘した新しい参加者がさらに商品を売ったり、新たな参加者を勧誘した場合にも報酬を得る仕組みを特徴としています。
当時Aさんはそのねずみ講、いやビジネスを信じていたので私は「へー。すごいね！羨ましいな！」なんて言いながら当たり障りない会話をした記憶がある。
否定してもよかったのだが、なんとも洗脳が行き届いていた。
Aさんはこんなことを聞いてきた。
人生の目的ってなんだと思う？
みかん君の夢はなに？
成功者ってみかん君の身近にいる？私の周りにはたくさんいるよ！このビジネスの利益でハワイに行ったり、ヨーロッパに行ったり、別荘を持っている人もいるんだよ！
気になったのでいろいろ質問してみた。
私「そのビジネスって家族や恋人、仲のいい友人に胸を張って言えるビジネスなの？」
Aさん「理解できない人もいるだろうね。2対8の法則で2割に理解してもらえればいいよ。それにビジネスをやる時は退路を断つことが大切って教えられたし。」
私「そのビジネスの社長さんに貢ぐためにAさんはがんばっているの？」
Aさん「あの人はすごいよ！私たちを成功者に導いてくれているんだ。」
私「Aさんはそのビジネスで利益出ているの？」
Aさん「私は今のところ赤字だけど続ければ結果が出るんだ！だって周りのすごい人たちも頑張って続けて結果出してるし。」
私「赤字ならNISAで投資始めた方がいいんじゃないの？」
Aさん「今は自己投資が大切な時期なんだ。自己投資を今のうちにすると将来もっと大きな利益が出るからね。」
だめだ。会話が成立しない…。
それから1年が経過した。
Aさん「私ネットワークビジネス辞めたんだ」
私「完全につながりを断ったの？」
Aさん「一応まだLINEグループには残っていて、ビジネスのおかげで繋がれた人もたくさんいるし。みんなにお世話になったし。」
私「利益出たの？」
Aさん「結局赤字だった。」
私はこんな話をした。
※ここから書くことはAさんのネットワークビジネスに対してだけです。他のネットワークビジネスは知りませんので。
Aさんは何を得て何を失ったんだろうね？
Aさんがそのねずみ講の会員をする中で得たものもあったのかもしれない。
1年ほど続けたとの事なので、その間に何人の知人に声をかけたか分からない。そのうちの一人は私だ。
私は興味深かったので話を聞いたが完全にAさんのことをヤバいやつ認定していた。
私のように思った人間も多かったのではないか？
Aさんは1年ねずみ講をがんばった。赤字だった。Aさんのことをヤバいやつ認定した人は一体どれだけいたんだろうね？
そしてAさんが勧誘して会員になった人もいただろう。その人たちはみんな利益が出ているのかな？1年頑張ったAさんが赤字なのだとしたら赤字の人多いんじゃない？
Aさんはその人たちに対して何を思うの？
もちろんその人たちも自分の意思で入ったから自己責任だ。でもAさんが勧誘しなければ入らなかったかもしれないよね。
このビジネスは誰が得してるんだろうね？
Aさんが1年赤字を垂れ流して頑張ったビジネスはいったい誰に利益をもたらしているのだろうね？
Aさんは私に言ったね。
「社長は私たちを成功者に導いてくれるんだ！」
私は何をもって成功者なのか全くわからないけど、この会話の流れではお金でしょ？お金がある人が成功者なんだよね？
Aさん1年頑張って成功者になれたの？
1年頑張ってヤバいやつ認定されて、お金も失って。
私からしたらその社長に貢ぐためにAさんが時間とお金と信用を失ったようにしか見えないんだ。
もちろん私が知らないこともたくさんあると思う。でも今までの情報を整理すると私にはそう思える。
若者から金を巻き上げる社長って私には何がすごいか分からない。
ただのクソじじいにしか思えない。人の価値は過去の実績だけで決まるものじゃないと思うよ。
その人が今何を考えてこれからどうしようとしているのか、そんなことも大切だと思うよ。
迷いがない人間は魅力的に映るよね
電話で話したけどAさんのねずみ講のことが気になって、その会員の人たちの何人かと会ったんだ。
その人たちは1年前のAさんと同じだったよ。
みーんな夢を語ってた。
そして目の奥に迷いがないんだ。それは以前記事にしたエホバの証人の人やヤマギシ会の人たちと同じだったんだ。
迷いがない人間って魅力的に映るよね。でもね、私から見れば迷いながらも1歩ずつ前に進んでいる人の方が100倍魅力的に映っている。
目の奥に迷いがないということはたいていの場合、何かに思考を預けている。
Aさんの場合はねずみ講に、エホバの証人の場合は新興宗教に、ヤマギシ会の場合は思想に。
なにかに思考を預けることはラクだけど、それは周りからは異質な存在に映るよ。
それこそ退路を断ったら？
Aさんは「退路を断ってビジネスを頑張る」って私に言ったね。
その言葉は今のAさんに私がかけてあげたい言葉だよ。
退路を断つ。つまりねずみ講とのすべての関係を切った方がいいんじゃない？
人間は弱いから今後Aさんのメンタルが不安定になったとき、また優しい言葉をかけてくるんじゃないかな？
でもその人たちとAさんの関係はお金のつながりだよ。その中にはすごい人もいるかもしれないけど、私からしたらただのヤバいやつでしかない。
Aさんの人生だから好きにしたらいいと思うけど、私が今言えるのはこれだけ。
「ねずみ講との関係は全て断った方がいいよ」
書きながら先日読んだヤマギシ会の本を思い出した。
ヤマギシ会を脱会した人のコメントだ。
「村を出るとき、もう一度うしろを振り返り、働いていた豚小屋をみたんやわ。そうしたら屋根はデコボコに歪み、汚らしそうだった。驚いたのなんの。だって、働いているときには、ものすごくきれいに見えてたんや。屋根はデコボコではなくてきれいな曲線を描いていた。」
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今のAさんならこのコメントの意味が分かるんじゃない？
1年前はそのビジネスに対して私とAさんは全く異なるものを見ていた。
もしかしたら今は近しいものが見えているかもしれないね。
おしまい！
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