喀痰吸引(7) 侵襲的人工呼吸療法
気管カニューレと気管切開部
空気を送り込むために気管に穴を空けて、そこから呼吸を補助することを「侵襲的人工呼吸療法」と呼ぶ
また気管に穴を空けることを気管切開という
通常、気管切開をすると声を発することが困難になり、気管カニューレは、首の中央部から気管に挿入される
気管カニューレの先端近くには、外側の周囲に小さい風船のようなものを膨らませる部分があり「カフ」と呼ぶ
カフはチューブがずれないように固定したり、十分な換気を維持したり、口や鼻からの分泌物が気管に入り込まないようにするためのもの
カフの中には利用者の状態に合わせた設定の空気が入っており、空気はパイロットバルーンというところから注射器で入れる
空気が多すぎると、気管の表面を圧迫して傷つけてしまう、またカフの中で空気が抜けてしまうと送り込まれるはずの空気が気管から肺へ十分に届かず漏れ出してしまうため注意
カフの管理については事前に医師や看護職と連携して相談しておく
気管カニューレの種類
・カフがついていない気管カニューレ
・カフ付き気管カニューレ
・カフとサイドチューブ付き気管カニューレ
サイトチューブとは気管カニューレの外側であるカフの上部に溜まっている分泌物などを吸い出すための細い管を指す
サイドチューブから分泌物などを吸い上げるということは吸引圧が直接気管内壁位かかることになり、分泌物の性状によってはチューブが詰まりやすくなるため、効果的に吸い上げるためにはカフ内の空気圧が適切に保たれていることが大切
気管カニューレ内部の吸引
気管カニューレからはみ出さない深さまでの吸引を指す
気管カニューレより先の気管部分には迷走神経があり、この神経を刺激すると心臓や呼吸を停止させてしまうリスクがあるため吸引チューブの挿入は気管カニューレの先端を超えないように注意
気管カニューレは固定ベルトを首の周りに通して、ずれたり抜けたりしないように固定する
利用者の体動や頭の向き、回路が引っ張られることなどによりずれることがある
気管カニューレの挿入部分の皮膚は、長時間固い器具が接触しているために、皮膚のただれや出血、滲出液がみられることもあるので、常に清潔に保つことが重要
気管カニューレ内部の吸引の留意点
気管にカニューレという異物が入っていることにより痰が増えたり、吸い込む空気が口や鼻を通過しないことで乾燥し痰が硬くなりやすい
細菌などが空気の共に侵入しやすいためそれによっても痰が増加したり、空気の出口が多いことで咳をしにくくなり、痰を吐き出しにくい状態になる
そのため清潔な吸引チューブや滅菌精製水などを用いた無菌的な操作が必要
吸引する時は一度気管カニューレと回路を繋ぐコネクターを外すことになり、その際に清潔に取り扱い、外した回路内に水滴が気管カニューレや利用者の口に入らないように注意する
コネクターに付着している痰は清浄綿などで拭き取る
吸引前後に利用者の状態を確認することと、吸引後は確実にかつ速やかに人工呼吸器回路を接続することが重要
人工呼吸器の着脱によってアラームがなる仕組みになっているが、再度人工呼吸器を装着してもアラームが鳴らない場合は緊急を要する状態の可能性もあるため医師や看護職に連絡する必要がある
介護職による喀痰吸引の範囲は気管カニューレ内部となっているため、十分に痰が吸い取りきれない場合があり、その場合は医師や看護職に対応を依頼する