【 Care’s World case 01 〜 結庵-むすびあん- 〜 / “ゆるい“空間を通して、ありのままの自分を受け入れる -前編- 】
“ケアすることは、生きること”
そんなテーマでお送りしているCare’s World。
今回の主人公は、姶良市蒲生町で『結庵-むすびあん-』を運営されている山之内せり奈さん、松元さおりさんです。
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一人一人と向き合いたいと思う二人の出会い
せり奈:私は中学校時代から自己肯定感が低い人間でした。ハンドボールをしていて、レベルの高い大会に出ると全く通用せず、心が折れてしまったんです。さらに、高校時代には母を亡くしてしまい、自殺を考えてしまう瞬間さえありました。
そんな時に、私を支えてくれたのは蒲生の親友でした。親友のご両親も「泊まりにおいで」と我が子のように可愛がってくれて、その優しさに救われたと思います。
看護師になってからは筋ジス病棟(※)で長く働いていて、患者さんと家族のように話す機会が多かったです。
私自身、患者さんとゆっくりお話するのが好きでしたし、患者さんも私となら安心して話せるとおっしゃっていたので、そこに喜びを感じていました。
でも、異動で一般病棟に移ってからは、患者さんと話す時間もとれず「何か違う…」とモヤモヤする日々でした。
そんな時、以前から痛めていた古傷の手術をすることになり、2ヶ月程病休をいただくことになったんです。
休んでいる間に「困っている人や悩んでいる人とゆっくりお話をする場所をつくりたい」と思うようになり、看護師を辞めることにしました。それが2021年の夏になります。
さおり:私は以前から “一人一人とちゃんと向き合いたい”気持ちが強く、そのツールとしてパーソナルカラーメイクやカラーセラピーといった仕事をやりたいと思って、2019年の冬に開業しました。
人によって、顔の色や似合う服装など違ったりします。カラーを通して知らない自分と向き合うことで本当の自分と出会える、そんなお手伝いができたらと考えていました。
しかし、2020年に入ると新型コロナウイルスの蔓延で対面での仕事が難しくなってしまって、一人一人と向き合うことが中々できなかったんです。
そんなある時、鹿児島市でマルシエが開催されると友人から聞き、ありがたいことに出店することになりました。
主催はせり奈ちゃんで、その時が初対面でした。マルシエが開催される前に「よろしくお願いします」と固いメッセージを送ったら、とてもふんわりとした返事があって「めっちゃ良い人だな、会ってみたいな」と思ったのが第一印象でした。
その後、せり奈ちゃんの自宅でメイクをさせてもらい、誕生日が一緒だったことも判明して、そこから距離が近づいていきました。それが2021年の秋ぐらいだったと思います。
当たり前だと思っていることを強みだと認識する
せり奈:実は、マルシエを開催するまで看護師以外の世界にあまり触れたことがありませんでした。今思えば「何て軽い考えで主催したんだろう」って。
でも、今繋がっている人たちとは、その時を機に仲良くなった気がします。それ以外にも田んぼで子どもたちとボール遊びをする企画をしました。
その時、高校時代に部活で迷惑をかけていた後輩たちが「せり奈先輩!」と言ってたくさん助けてくれたんです。自己肯定感が低かったせいか、大人になってからも後輩たちに対して「ごめんね」といった気持ちがありました。
企画を練っている時に初めてその気持ちを打ち明けたら「え?何で?全然気にしていないし、できることがあったら、これからも遠慮なく言ってくださいね」と嬉しい言葉をかけてくれて…。
自分の中で勝手につくっていた壁が一瞬で溶けていくのを感じました。ずっと自己肯定感が低かったけど、色々な人に助けてもらって「何かやれる」と思えるようになったのは、その時期ぐらいからかもしれません。
さおり:マルシエで初めてせり奈ちゃんに会った時、純粋に「すごい」と思ったんです。
関わった皆さんに対して温度感のある対応をしていましたし、その場にいる人たちがのびのびと過ごしていて。そんな空間をつくれていることがせり奈ちゃんの凄さだと感じました。
その時に、結庵の看板もつくってもらったんです。せり奈ちゃんの後輩が字体を、せり奈ちゃんのお父さんが看板を、という形で。思い出の看板で今でも結庵の営業日は必ず入り口に設置しています。
世の中のほとんどの人って、自分が当たり前にやっていることを得意と思っていないと思うんです。でも、せり奈ちゃんはそれを「すごいよ」と言って、力を引き出してくれます。
力じゃなくても、例えば、何気ない・他愛ない話も興味深そうに話を聞いてくれたりもするんです。それは私にはできません。元々、結庵は“人が集まる場所をつくりたい”“人と人を繋ぎたい”といった想いでスタートしました。
結果論にはなりますが、そういう何気ないコミュニケーションを通して、私たちがやりたかったことが少しずつカタチにできているんだなと感じています。
受け入れてもらっているから、迷いをクリアできる
さおり:せり奈ちゃんと出会ってから半年後、この場所のリノベーション作業が始まりました。その時からサポートに入っていて、彼女の想いに共感していたのもあって、次第に「結庵を手伝いたい」と思うようになったんです。
その反面、どの距離感が入り込んでいけばいいのか?既に違う誰かと運営していくのか?何を手伝えばいいのか?と考え込んでしまう自分がいて… 。結局、まだ誰とも運営するとは決まっていなかったので、一緒に運営していくことになりました。
私の中で“楽しさ”を大事にしています。私たちもですし、ここに来てくださる皆さんにとって「来てよかった」「話してよかった」って心の底から思ってもらえたら嬉しいと思っています。
そのために「私には何ができるんだろう?」「何をしたら私も楽しんだろう?」と常に逆算して考えているんです。
せり奈ちゃんは絶対価値観を押しつけてきません。それなら、私も押し付けるのではなく「こういうパターンもあるけど、どうかな?」と選択肢を選択してもらえるような提案をしたりすることで、サポート役に徹するようにしています。
せり奈:来てくださった方とゆっくりお話をしたいと思っても、それは一人ではできません。お茶を出したり、色々と気を配らないといけないのでお話に集中できなくなってしまうんです。
そんな時、さおりさんがお茶を汲んでくれたり、私の目が行き届いていない部分のカバーをしてくれたりすることで、お話することに専念できます。正直、最初の頃は「お茶汲みばっかりさせてしまって申し訳ない」と思っていました。
でも、「そういうことは私がやるから、せり奈ちゃんはお客さんとお話して、本当に大丈夫だから」と言ってくれたので、気負わずに皆さんとお話できるようになりました。
私は昔から思い込みを勝手にしてしまう傾向があって、それで余計なことを考えたり、甘えられずにいたりすることが多くて。
でも、さおりさんといることで自分を受け入れてくれますし「甘えてもいいんだ」と確認できて、自分の中の迷いをクリアできている気がします。上辺だけじゃない、ちゃんと深い部分まで、その都度話し合えているからこそかもしれません。
(後編へ)
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