【 Care’s World case 04 限られた時間の中で、今しかできない私なりの看護を 〜看護師 しほ さん 〜 / -後編- 】
前編では、しほさんが病院勤務を経て、医療とは違う世界に触れたところまで伺いました。
後編では、訪問看護師になってからの気づきやしほさんが考えるケアについて深掘りしていきます。
前編はこちら。
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時間が有限だからこそ
しほ:パン屋を辞めてからまず迷ったのは県外にそのまま残るのか、それとも家族がいる鹿児島なのかということでした。
簡単に数ヶ月で辞められるものではないですし、数年のビジョンで考えないといけないと感じていたので、大きい選択だったかと思います。
家族との時間を大事にしたい。鹿児島へ戻りたい。その気持ちが強く、鹿児島で看護師として働くことにしました。
そこで選んだのは訪問看護でした。コロナの影響もあり、ご自宅でお看取りすることも多く、死に対して今まで以上に触れることが増えてきました。
20代って、あまり死に触れる機会は少ないと思います。だからこそ、いろんな現場を通して、死に対する見方も変わってきました。怖いといったネガティブな印象が多いと思いますが、そうじゃないんです。
「頑張ったよね」「今までありがとう」と温かい空気感で亡くなるケースもあります。人間って誰しも生まれた時から死は決して離れられないものです。そことちゃんと向き合って、命の期限が見えてくるからこそできるケアもあると思います。
「あの時、こうしとけばよかった」「もっと話せばよかった」という後悔をなるべく少なくしたい。訪問看護の仕事をしてから、時間が有限だからこそ、今を楽しむこと、時間を大切にすること。それが大事だと気づかされました。
しほ:訪問看護でお世話になったご夫婦がいらっしゃるのですが、そのお二人のことは忘れられません。
ある日の夜中に「夫が“息ができない”と言っているから早く来てほしい!」と言われ、急いでご自宅へ向かいました。そしたら「どうしてそんなに早く来たの?」「事故でも起こしたらどうするの!」と緊急事態だったにも関わらず、私の心配をしてくれたんです。
旦那さんも体調が良くないのに、自分が好きなジャリパンを奥さんにお願いして私のために買ってくれたことがあって…。どんなにしんどくても、赤の他人を思いやってくださる温かいご夫婦でした。
しかし、最後まで在宅で一生懸命介護を続けていらっしゃいましたが、最終的には旦那さんは病院で息を引き取られました。その後、奥さんに個人的に会いに行くと「待ってたわ…」と明るく迎えてくれました。
旦那さんの闘病生活は辛く、きついものだったはずです。でも、そんな素振りは一切見せず、笑顔で旦那さんのことを語りながら「担当があなたでよかった」とおっしゃってくださって「死は決して怖いものじゃない」とさらに思えるようになりました。
コロナ渦で訪問看護を経験したからこそ、大切な人のことをもっと想えるようになったと思います。目には見えないけれど、その感覚はずっと大事にしたいです。
看護を通して自分と向き合う
しほ:訪問看護では2年半程働きました。改めて「看護が好きだな」と再認識できたし、そこでの学びは今後の人生においても大きなものだったと思っています。
訪問看護って、年齢が上の方がされている印象があるかもしれませんが、若い方もいらっしゃるんです。必ずベテランがしないといけないわけではなく、例えば体力だったり感性だったり、若さがあるからこそ発揮できる場面も多いです。
訪問看護のことを知らない方もいらっしゃるので「24時間いつでも電話してもいい場所があるんだよ」「一人じゃないんだよ」と在宅の患者さんやご家族には知ってもらえたら嬉しいです。
確かに合う・合わないもあります。現場では自分で判断しないといけないこともありますし、責任が問われるのも事実です。
ただ、それ以上に感動や人との大切な関わりが待っています。だからこそ私は訪問看護が好きだと思えたし、頑張ってこれました。
特に20代のうちに経験できたのは大きいです。人として大きくなれたし、患者さんとの時間を大切にしたい気持ちがより一層強くなりましたから。患者さんの声も拾って、その想いに寄り添いながら看護ができることも一つの魅力だと思います。
しほ:自分では気づかなかったのですが以前従姉妹から「人間大好き人間だよね」と言われたことがあって。確かにそうだなと思いました。
何かを決める時の根本に、自分がワクワクすること!がありますし「誰かの役に立ちたい」「人が好きだから」という想いもあります。今までいろんな選択肢がある中で、ワクワクすることを行動した上での後悔はありません。
「うん、あの時があったから、きっと大丈夫」という自信が積み重なってどんどん大きくなっている気がします。
もちろん、生きれていれば悲しいことも辛いこともあります。それでも、今の自分があるのはいろんな人達が背中を押してくれたり、優しく見守ってくれたからだと思いますし、その中でやりたいと思ったことを選択してきたからなんです。
時々振り返って「自分は間違っていない」と向き合う作業もしています。看護って誰かをケアしているはずの立場ですが、気づけば私たちがケアされていることも多いんです。
いろんなことを知れる、いろんな気持ちになれる、いろんな言葉をいただける。それが私たちにとって「これでよかったんだ」と思えるし、自信にも繋がって、次に進めるきっかけになるんです。
限られた時間の中で目の前にいる誰かと向き合いながら、その人に私は何ができるのか?そこはどこにいても、どんな仕事をしてもずっと変わらない芯だと思います。
(終わり)
(前編はこちら)
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