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【ケアまち座談会 vol.3】「都市のハックとケアから考える暮らし」開催レポート

2020年7月22日、21:00〜22:20「ケアまち座談会 vol.3 都市のハックとケアから考える暮らし」を開催しました。27名の方がご参加くださいました。

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※初回開催、「ケアまち座談会 vol.0 なぜ「ケアとまちづくり」は必要なのか」は下記からアーカイブ動画をご覧頂けます。

当日のプログラム
21:00 イントロダクション:守本陽一
21:10 チェックイン(登壇者紹介)
21:15 登壇者ピッチ:泉山塁威・三文字昌也
21:30 ダイアローグセッション:泉山塁威・三文字昌也・守本陽一、小堀祥仁(ガイド)、玉井友里子(ガイド)
22:00 ブレイクアウトルーム
22:10 質疑応答
22:20 雑談会(ブレイクアウトルームで雑談)

登壇者紹介

泉山塁威(都市戦術家 日本大学理工学部建築学科助教 一般社団法人ソトノバ代表理事)
1984年北海道札幌市生まれ。明治大学大学院理工学研究科建築学専攻博士後期課程修了後、明治大学理工学部建築学科助手、同助教、東京大学先端科学技術研究センター助教などを経て、2020年4月より現職。専門は、都市経営、エリアマネジメント、パブリックスペース。タクティカル・アーバニズムやプレイスメイキングなど、パブリックスペース活用の制度、社会実験、アクティビティ調査、プロセス、仕組みを研究・実践・人材育成・情報発信に携わる。主な著書に、「楽しい公共空間をつくるレシピ プロジェクトを成功に導く66の手法」(共編著・ユウブックス・2020),「ストリートデザイン・マネジメント: 公共空間を活用する制度・組織・プロセス」(共著・学芸出版社・2019)など。

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三文字昌也(合同会社流動商店 共同代表)
1992年神奈川県生まれ。都市デザイナー、二級建築士。東京大学大学院都市デザイン研究室で台湾や中華圏の屋台・夜市にまつわる都市計画史を研究しながら、2018年より「合同会社 流動商店」を立ち上げ独立。国内外で都市と建築の空間設計、計画策定、建築空間のリノベーション活用、商店街計画等の事業を行っている。

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登壇者ピッチ

1人目 泉山塁威

都市計画の視点から、今後のパブリックスペースと社会福祉・医療とのコラボレーションの可能性についてお話いただきました。

専門は都市計画。都市計画を、都市、エリア、プレイスの3つのスケールから捉えている。

20世紀は自治体が主体となって都市は計画されていた。近年は自治体や地域が中心となって、もう少し範囲を狭めたエリアマネジメントやエリアリノベーションといった、界隈性を作り出すことが求められるようになった。さらに、最近は市民の活動が中心となって、道路・公園に対してアプローチしていく、「タクティカルアーバニズム」と呼ばれる、ボトムアップ型のアプローチが増えている。

20世紀の都市は、人口増加の中で、衛生治安を守るために管理・規制を行う対象でしたが、21世紀になり、人口が減少し、自治体は財政難となる中で、都市を資源と捉え、都市内の限られた資源を積極的に活用するための制度が整備されつつある。

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飲食店の道路占用許可に関して
コロナの影響で道路や公共空間の使い方が変化した。コロナ禍での飲食店を応援することを目的として、路上客席が特例的に許可されている事例がある。密を避けつつ、飲食店の利用ができる空間が設計されている。

これまで、日本の道路空間は国交省、警察、保健所の許認可が複雑に絡み、路上客席は許可が下りにくかったが、コロナ禍で制度に変化が見られた。

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道路空間を積極活用するアクション(Park(ing)Day)をコロナ禍でどう開催するか?
パーキングデイという取り組みは、駐車場のparkingと、公園のparkを掛け合わせたものである。アメリカから始まり、日本では道路空間を使う仕組みがなかったが、3年くらい前からPark(ing)Dayとして道路空間を使う活動を仕掛けている。コロナ禍と向き合いながら、今年の9月には、ディスタンスを守りながら開催していく予定。ただディスタンスを守れば良い、というだけではないので、実現方法を模索している。

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パブリックライフ
多様な目的を許容する場と、様々な活動をしている人で形成されている状況。一過性のイベントではなく、日常的に行われていることが重要。

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ウォーカブル
「歩きやすい都市」が、都市計画を考える上で、世界的なトレンドとなっている。「居心地が良く、歩たくなるまちなか」を形成する上で、どうやって現状のインフラを利用しつつ、居心地よくできるかを考えている

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パブリックスペースの価値
まちなかのパブリックスペースに賑わいが増えてきた。公園内にカフェや保育園ができたりしている。一方で公園が商業化していくとも感じている。今後はパブリックスペースと、医療や社会福祉の連携を考えていきたい。

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2人目 三文字昌也

大学の博士課程にて都市計画の研究をしている三文字さん。自身の活動についてお話していただきました。

地域に暮らす
神奈川県のベッドタウンのマンションで育ち、都内の大学に通いながら、六畳一間、3万円の風呂なしアパートに住む経験をした。初めて町会に入り、地域の活動に参加する中で、「東京都心の方が"田舎"なんだ」と感じる。

地域の文化資源を守る
風呂なしアパートだったので、銭湯に通っていたが、その銭湯が閉店することになった。銭湯がなくなることが、地域へ与える影響の大きさを目の当たりにした。この経験をきっかけに、積極的に地域資源を守る活動をし始めた。

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場を作る
修士号を取ったタイミングで、友人と「流動商店」(商店で都市を流動化する専門家集団)という会社を起業する。建築と設計の専門家として、様々な場所をリノベーションした。低コストで、実際に利用する地域の人を巻き込みながら、地域の人に愛される場所を作り上げる。

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計画をする
街全体をどう考えていくか、を考える仕事もご依頼頂くようになった。コロナの影響もある中で、空き家をどのようにリノベーションして、人が集まる場所にするか、など、現地に入り検討し続けている。

地域では「都市計画屋さんは絵描きなの?」とよく聞かれる。自身も居酒屋や宿といった、場の運営に関わっていることを伝えながら、空間をつくるだけでなく、場と人との関係性を考え、場を作る活動を続けている。

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遊ぶ
「場を作る」「計画をする」において、今までその地域が培ってきたコミュニティの価値や繋がりを活かせているのか、葛藤があった。

台湾の夜市はパブリックライフの成功例だと考え、研究している。夜市では、食べて飲むだけでなく、射的などの「遊び」もあり、大人も子供も楽しめる作りとなっている。

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様々な銭湯の閉店を見届けてきた中で、銭湯の多種多様な備品が集まった。それらを活かし、「銭湯のコミュニティスペースとしての機能を街に引っ張り出す」というコンセプトで「銭湯山車」という山車を作っている。

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ケアとまち
今までは場所を作ることに注力をしてきた。
去年の夏に祖母ががんになるなど、この一年で様々なケアに関わる経験を通して、心情の変化があった。今まで自分が関わった空間を作る仕事と、ケアと接点がなかったことについて考えるようになった。今回のイベントを通し、皆さんと議論したい。

ダイアローグセッション

公共空間とケアと、どうつながるか?

守本:お二人の話を聞き、昔は都市計画は上から決めるものであったが、徐々にまち側から計画する動きが出てきた、という印象を受けた。その辺りについてお二人に伺いたい。

泉山:戦後〜高度成長期〜バブルにおいては、人口増加に対するインフラ施策、劣悪な都市環境に対する環境改善が、20世紀型の都市計画の軸だった。その後、人口減少による財政難となり、道路と公園が維持されなくなったり、市民のニーズが多様化した。政府が維持できなくなり、ディベロッパーが維持していく傾向が強まっている。

三文字:台湾の事例が興味深い。たとえば公共空間にできる夜市は、交通と衛生の問題などを理由としてずっと規制の対象であり続けた。しかし、近年ではその文化的・観光的価値が注目され、夜市の自主運営組織がルールをつくり、問題を自主的に改善し、最終的には政府がそれを公認して運営を認めるシステムが運用されている。

守本:公の部分が限界になり、民間で対応することが必要になった流れは、ケアも似ている。病院の中だけ(都市計画だと政府だけ)でケアをしていればよかったが、病院では人が溢れてしまい、地域や自宅にケア(台湾の場合では夜市の自主組織)が必要になり、様々な取り組みが開始されている。

守本:どういうコミュニティがうまくいく、という事例はありますか?

泉山:行政から「管理して下さい」と言われても困る。仕事だからしょうがなくやるでは利用者側は熱を感じない。いかに地域の人に愛着をもってもらい、そのプロセスにも関わってもらうことが重要。
「つながるDays」という大阪・泉ヶ丘の事例がある。マルシェをしているように見えるが、出店者はすべてそこに住んでいる人。外部の業者は入れないい。手間はかかるが、長期的にみるとパワーを感じるマーケットとなる。実際に参加すると温かみを感じる。

守本:介護や医療の観点でも学べることがある。利用者さん、患者さんのやりたいことを上手く引き出して、やりたいことをやってもらい、やりがいを感じていただくことは、地域づくりと結びつくと思った。

三文字:「コミュニティを作る」という言葉に違和感がある。そもそも作れるものがあるのか?銭湯での活動を通して思ったことは、そこには元々強いコミュニティがあるということ。都市計画、医療福祉側の人間がコミュニティを作りたかった場合、既存のコミュニティを活用することが、正しい姿なのではないかと感じている。もちろん現代の町会コミュニティなどでは、自然に世代交代がうまく進んでゆく事例は多いとは言えないが、そこに適切な外部の人材を入れていくことが有効な場合がある。福祉施設では、既存のコミュニティがない場合もある、と言う課題を感じるので、既存コミュニティへの接続についてお伺いしたい。

守本:医療と介護は新しい施設となっていて、新しい所を生み出すことは地元との軋轢が生まれやすい。コミュニテイは目的があって作られる。漠然とコミュニティを作ることは難しい。パブリックスペースの種はあるのだろうか?

泉山:「ソーシャルキャピタル」は空間に結びついていないと感じており、「プレイスキャピタル」に注目している。場の力が強くなると、人を引きつけるマグネットとなり、セクターに関係なく人がつながり、良い循環が生まれる可能性があるのではないか、と考えている。

守本:地縁コミュニティと、場のもつ引力による掛け合わせにより、多様なつながりが生まれてきそうな印象を受ける。

泉山:地縁コミュニティだけでは限界があり、「プレイスキャピタル」により生まれるコミュニティと、混ざり合うことで、色々良いことがありそう。

三文字:地縁コミュニティだけでは限界があることについて、全くその通りだと思う。そこにいかに風を起こすかが重要。町会は肝になるコミュニティと言われているが、町会に入って頑張っている人は、地域住民全体から見ると実は少数派だったりする。それを認識しつつ、あるものにのっかり、地域の人を巻き込む、そのバランスが重要。色々なセクターを混ぜることの重要性は、ケアにも通じるのではないか。

守本:パブリックスペースだからこそ、地縁型コミュニティとテーマ型コミュニティが混ざり合う場となる可能性がある。

守本:社会的処方という言葉が流行っている。コミュニティを紹介したとき、紹介先でコミュニティを荒らしてしまう場合がある。コミュニティを荒らす人への対応方法は?

三文字:コミュニティマネージャーの役割が重要。空間と紐付く面が多く、銭湯だったら番台など、民間の施設はわかりやすい。マルシェなどのパブリックスペースは、コミュニティマネージャーが見えにくいことが問題。場の目的や開催者が可視化されることが重要なのではないか。

泉山:大体の場合はプロセスや人間関係が問題なのではないか。問題に対し真正面から向き合うことは難しいかもしれないが、まず話を聞くことが大事。その人は何を求めているのか聞くことを心掛けている。手段を変えると、その人が求めるものだったりする。
例えば、公園で静かにしろ、というおじいちゃんがいたりする。そのおじいちゃんの直接的な問題に対する解決はできないが、一緒にゲートボールする等、その人も混ぜ込みながら、関係性を変え、巻き込む手段を考える。

ガイド(小堀祥仁、玉井友里子)からのコメント

玉井:都市計画は知らないほうであるが、都市デザインの考える範囲は「地域」であり、医療者が「人」と向き合うことと比較すると、枠は大きいと感じたが、考え方は、医療者が普段していることとそんなに変わらないと感じた。

小堀:本職では建築、場づくりの仕事をしている。今日のタイトルは「都市のハックとケア」ということで、「街を使い倒す」と「ケアする」の共通する視座について、より言語化されることでしっくりきた。作り込み過ぎないイベントの企画や空間の作り方について、共感を持った。

コロナ禍での暮らしを再構築するには?

三文字:地域を知る
コロナ禍だからこそ、家の周りに何があったかを初めて知った人が多い。地域にどんな人がいたかを知ることが重要で、都市をハックすることの第一歩である。しっかり新しいものを入れたり、考え抜いて場を作るための、第一歩となる「混ぜる」ことにも役立つと思う。

泉山:人と場のマグネット
「プレイスキャピタル」の話であるが、蜜を避けながら、人と人が合うことや、つながることは、なくならないことだろう。その場にどのような力を授けるかが重要。「その人、その場だからこそ、実際に会いたい」と考えることもある。

会場から質問:人を集める秘訣は?

泉山:「誰がやっているか」は大事だったりする。ファンが愛着を感じてリピートしていくれる。また、「紹介」という関係性で人が人を呼んでくることも大事だと思う。

三文字:端っこの作り方。交流する場所、一人で過ごす場所、色々な場所が選択できること。作る側の気配りが求められている。

今後のお知らせ

今後も様々な方と登壇者としてお招きし、座談会を行いう予定です。

次回は、8/26(水)21:00〜22:20、「ケアまち座談会 vol.4 日常の風景からみるケア〜ランドスケープデザインを手がかりに〜」を開催します。

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#ケアまち座談会

(執筆:小原 恵美、編集:小林弘典)

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