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ケアまち座談会vol.1「住民参加のまちづくりとケア」開催レポート

4月24日21:00-22:20、オンラインコミュニティケアまち実験室のイベント・ケアまち座談会vol.1をオンラインで開催しました。

今回は、「都市の問診」「都市をたたむ」の著者であり、都市計画家で東京都立大学教授の饗庭伸さんをお招きして、「住民参加のまちづくりとケア」をテーマにお話を伺いました。

【登壇】饗庭伸さん 都市計画家/東京都立大学都市環境学部教授
【進行】守本・鈴木 ケアまち実験室ラボマネージャー/事務局


ご登壇いただいた饗庭伸さん

インプット|住民参加のまちづくり

住民参加のまちづくりが始まったのが1970年代と言われています。
模造紙が貼ってあって住民さんに見せて、市の職員さんですとか都市計画コンサルタントが説明をしている、こんなところからまずコミュニケーションがスタートしていきました。教室型のコミュニケーションて言うんですかね、前の方に情報が貼りだしてあって、みんな座っているので、なんとなくコミュニケーションがつまらなさそうだなという感じがしますよね。

そこで、これをもっと楽しくしよう、住民さんたちのクリエイティビティを引き出そうということで、地図とか模型とかそういう物を工夫していこうということになります。

まちづくりが面白くなる時代です。
これは1988年に行われたガリバーマップという方法です。
まちづくりの課題を考える時に巨大な地図を作って床に置くと、住民さんたちが乗ってきて、なんとなくリラックスした感じになって、そして地図の上に座り込んで色んな議論をするんですよね。
なのでさっきの教室型のように前に地図があるよりもより本音に近い話ができるというんですかね、深い話ができる、よりクリエイティブな話ができる。そんな工夫がされたんです。

住民参加のまちづくりというのはどんどん広がっていくんですけれども、こういったコミュニケーションの工夫がどんどん発達していきます。

これはですね、僕が20年くらい前に、山形県の鶴岡というところで公園の計画を考えたときに作ったコミュニケーションのための準備物です。
模型を作ってみたり(左上)、ゾーニングが直感的に分かるようなカード(左下)とか、模型の材料を準備しておいて(右上)それを組み合わせて議論をしてもらったり、アクティビティのフラッグを作っておいて(右下)どこで何をしたいか住民さんたちが表現できるようにしたりといった準備をしました。
住民さんたちがどんな公園が欲しいか、彼らがやりたいことがここに表現されていく。そしてわたしたち専門家はここから情報を読み取って公園の計画を作っていく。そんなことをやってきました。

もうひとつ、空き家を使ったまちづくりの事例も持ってきました。
それまでは公園を作ったり再開発の計画を考えたりっていうのがまちづくりだったんですけれども、人口が減ってきたので、空き家を使ってなんかやろうというのが生まれてくるようになりました。

これは国立で14年前から始まったプロジェクトで今も続いているんです。
まず最初は空き家を知るっていうことから始めるんですね。
それでいろんな人をそこに呼び込んできて、何ができるんだろうとか自分たちがやりたいことは何だろうって話し合いをして。それでこのプロジェクトの場合は割といろんな人たちが現れてこの空き家を使ってこんなことをしたいっていう提案をしてくれました。
人口減少時代における住民参加のまちづくりってこんな感じかなって思います。

都市がどのように出来、そしてどのように無くなっていくかという、長いスパンのことを考えてみました。
画像の1番左から、右に向かって変わっていくんですよね。
はじめに自然があり、 木を切ったり土地をならしたりして、都市を作るってことが行われました。
自然から都市に変わる時っていうのははっきりと認識されるんです。何年何月何日にここに家が建って、あの木が伐採されたと、分かります。 一方で無くなる時は、人がいなくなって、 木が生えてきちゃって、いつの間にか都市が再自然化するということが起きます。建物を作るときは行政の届け出がいるけど、空き家にする時には届け出はいらないですよね。 だから、誰も空き家がいつ発生したかって把握していません。
その自然に戻るまでの状態が結構長いのが面白いなっていう風に思っていてですね、これを最近僕は、「前自然」って呼んでるんです。再自然化の前の状態っていうのがあって、それは1年とか2年じゃなくて30年、40年ぐらいあるかもしれない。
この前自然状態の時に、空き家からいろんなものをハンティングしていったら、豊かな暮らしって作っていけるんじゃないかなと、この辺りが将来に繋がる面白い可能性かなという風に思って見ているところです。

ダイアログ|人口減少時代のまちづくりとケア

守本:
前自然の話が面白いなと思っていて、前自然になる手前の状態に関わっているのって、本人と本人家族と、それから訪問診療やってるドクターなのかもしれないと思うんですよね。
病院から家に帰られて、訪問診療して、本人がいなくなってっていうところのお看取りをしてたのはドクターなんだなと。それってもしかしたら、その前自然の入り口を見てたっていうことになるんですかね。

饗庭さん:
住み開きっていうのがありますよね。使わなくなった子ども部屋を地域に開放するだとか、家の一角を図書館にしてたくさんの蔵書を地域の人に活用してもらおうとか。
それぐらいの段階から前自然って呼んでもいいのかもしれないですね。前自然状態はすごく長く続くので、そこでどういう風に自然を耕していくかですよね。そんなことがなんか色々描けると面白いですし、その中で医療の方が果たしてくださった役割も相当たくさんありそうだなと思います。

守本:
人間関係の再構築みたいなことが、私たち医療関係者も関わるタイミングで起きてきていて、そこからさらにいろんな展開がありうるんでしょうね。

鈴木:
お話を聞いて、私は大学のキャンパス内にがらくたを持ち出して空間づくりをする学生さんへの授業が面白いと思いました。活動の中で印象的なエピソードはありますか?

饗庭さん:
「何かに使えるかもしれない」とゴミを学生と集めた時が盛り上がりましたね。大学のゴミ捨て場の中に弓道部の矢の的のようなものがあり、それを見つけたときは「何に使えるだろう!」と盛り上がりました。使えないものや意味の分からないものにこそ再利用の面白さがあります。空き家の中の遺留品を漁っていて、盛り上がるのもそういう時ですよね。
あと面白かったのが、学生たちが行った交通標識のプロジェクトですね。自分たちで作った交通標識を街に置き、そこに「ここに立っていると涼しい風が吹きます」等といった看板の設置したり「お気に入りの場所を表現するピクトグラム」を作成したりしました。これが非常に好評で、まちの多くの人が参加しました。

鈴木:
目には見えない、まちの人たちが知っている魅力を共有することで地域の魅力が引き出されたんですね。

饗庭さん:
はい。あとはゴミの転用で最強なのは「大学の生協食堂が使わなくなった食品サンプル」です。例えば、食品サンプルを駅のベンチなどに置いてみると、その場所がまるで食堂のように見えました。食品サンプルは情報量が多く、みんなが知っているものなので、見る人に強い印象を与えるなと思いました。

守本:このような遊び心や発想の転換は、医療やケアの現場で応用できますよね。

饗庭さん:
人間はどうしても効率性を追求しがちですが、そこに遊び心を取り入れることは大切です。効率性に重きを置きすぎると、どんどん窮屈になってしまいますから。
郵便局って民営化されたじゃないですか。現場はすごく忙しそうです。効率的に配達することが求められていますが、配達をリデザインすることを提案しています。例えば、郵便員が配達の際に決まったルートを運転するだけじゃなくて、適度に時間に余裕を持って、公園でおばあちゃんと立ち話をしたり、街の景色を眺めるなどです。
医療やケアの現場でも、地域の人とコミュニケーションを取れる時間を意識的に作ったり、事例などのデータやお互いの行動を見直し合うことで、診察の新しいアイデアが生まれてくると思います。

終わりに

ケアまち実験室では、今後もアート、建築など、様々な方を登壇者としてお招きし、座談会を行っていきます。ケアまち実験室のメンバーになると、ケアまち座談会への参加費が無料になるほか、ケアまち座談会アフタートークへの参加(Slack)、ケアまち座談会アーカイブ視聴も可能となります。
ぜひ下記リンクから詳細をご覧ください。

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(執筆:鈴木唯加、恒本茉奈実)


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