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ケアまち座談会vol.2「暮らしの中のプラネタリーヘルスとケア」開催レポート (ゲスト:川地真史さん)

暮らしや建築、ケアの現場に関わる実践家たちとともに、よりよい暮らしやコミュニティのあり方を探るオンラインコミュニティ「ケアまち実験室」のイベント・ケアまち座談会vol.2 を開催しました。その一部をnote化しお届けします。

今回のテーマは「暮らしの中のプラネタリーヘルスとケア」です。

近年の学会でも取り上げられつつあるプラネタリーヘルスの視点から見る、身近な暮らしとこれからのケアとは?
産むを問い直すデザインリサーチ「産まみ(む)めも」、應典院「あそびの精舎」構想・運営、「多種とケア展」開催など多数のプロジェクトに関わる川地真史さんをお呼びして、地域医療の実践・探求と絡めたお話を伺っていきます。

【日時】7月2日(火) 21:00-22:20
【登壇】川地真史さん
一般社団法人Deep Care Lab代表理事 / 公共とデザイン共同代表
【進行】守本・鈴木
ケアまち実験室ラボマネージャー / 事務局


ケアまち実験室は、ケアとまちづくりに関心のある方の入会を募集しています!実験室の詳細はこちらをご覧ください。

■ 入会特典
・ケアまち実験室slackへのご招待
・ケアまち座談会(オンライン)の参加費が無料(通常3500円)
・年1回程度予定しているリアルイベント「ケアとまちづくり未来会議」の参加費が減額
■ 入会の申込方法
以下のフォームをご確認ください。
https://forms.gle/2DUvfYseTxDrwYyE7



インプット|暮らしの中のプラネタリーヘルスとケア

あらゆるいのちをケアする想像力

川地真史といいます。京都在住の名古屋出身で、4年くらい東京でデザインの仕事をしていました。2018年から2020年末まで、フィンランドのAalto大学で複雑な課題と社会環境にデザインがどう関わっていけるかを研究しました。
現在は、一般社団法人Deep Care Labと公共とデザインという団体を運営しています。
昨年『クリエイティブデモクラシー』という本を出版しました。民主主義とデザインと社会的な課題をどうこうしていくかを書いています。

Deep Care Labでは「あらゆるいのちをケアする想像力」をミッションに掲げています。簡単に言うと、私というものが色んな存在の繋がり合いに依存して生きているし、生かされてるみたいな実感がどう持てるかを考えています。

例えば、お寺で産むから死ぬまでを考えるフェスを開催したり、産むを問い直すリサーチと展示プロジェクトを実施したり、 渋谷区さんと障害者雇用をめぐる対話と共創をしたり、色々な実験的な取り組みをしています。

ケアの多様なまなざし

僕の考えているケアとはなにかを、実体験を交えてお話します。
ケアとは営みのなかの網の目を維持したり修復したりすること、また関わりから自分なりの物語や生きた証を作っていく行為だと思っています。

僕はフィンランドに2年住んでいたんですが、向こうは冬がすごく長いんです。寒い以上に、お日さまがなくて空にはずっと分厚い雲がかかっていて。日本にいたときは気づかなかったんですが、思っていた以上にお日さまに支えらていたし依存していたんだな、と気づきました。
また、コロナ渦では人と会話をすることが減ったんですが、森に行ったらキノコやうさぎやリスなどの生き物がいることに救われました。こういう無数の依存が本当はもっとあるはずなんですよね。

政治学者のジョアン・トロントさんは「ケアは人類的な活動であって、この世界を維持し、継続し、修復するすべての活動」だと言っていて僕も指針にしています。大事なのは、この世界が自分だけでなく、周りの人々や自分の身体、そしてそれらの関係を支えるさまざまな環境は網の目のようなものであるということです。その網の目を維持したり修復したりする行為をケアと捉えています。

『コンパッション都市』という本の翻訳者のひとりである竹之内さんの著書には「色んな関わり合いを通じて生の物語を語る」という一節があります。写真は僕が育てているみかんですが、みかんの樹はうまく育てれば100年くらいもつと言われています。自分が死んだときのことをふと想像することがあって、自分がいなくなってもそのみかんの樹を見た人が、お世話している僕の姿を思い浮かべるかもしれない。そういう刻みこみや色んなものとの関わりが残っていくのがいいなと思ったんです。

惑星・暮らし・ケアを考える

あらゆるいのちと生きていることに気づき想像することを「ディープケア」という概念として、具体的にどう実践できるかを様々なプロジェクトを通して模索しています。
(Deep Care Labで実施されている各プロジェクトはこちらをご覧ください)

表題の「プラネタリーヘルス」に戻りますが、今、子育てや孤立など社会課題が無数にあり、それは1人1人の生きづらさの表れでもあると思っています。一方で、それは惑星の課題でもあります。気候変動などによって生態系や環境が失われることが喪失感に感じられちゃうとか。人も環境も動物も、基本みんな繋がってるねっていう話だと思うんです。

自然環境の危機なども突き詰めると「想像力の危機」で、人が自然を道具として見ている関係性があるんじゃないかと思っています。木をCO2を吸収するモノとして見てたり、コンビニの店員さんにありがとうを言わなかったり。
お互いがもっと関わり合うことで、 生々しい関係になっていくのは、人同士じゃなくても実現できると思っています。

私たちを支えているのは人だけではないです。
例えば、魚屋さんは海とつながる回路になるかもしれませんし、お花屋さんは植物をケアし合う場所になるかもしれません。お寺はご先祖様との時間を感じたり、精神的な深まりを得たり、喪失の悲しみを癒す場所になるかもしれません。

こうした場所の可能性や意味は、ケアの視点を踏まえることで変わっていきます。暮らしの中でさまざまなよりどころが増えていくことで、ポテンシャルにつながるんじゃないか、その方法を模索していっているところです。

ダイアログ|ケアの広がりとケアデザイン

「見えないもの」を見つめ直す

守本:
ありがとうございました。人間中心主義の話を少しできたらと思いますが、いかがでしょうか?

川地さん:
色んな人が集まる中で、制度から取りこぼされてしまう当事者同士で関係が生まれて、その関係を通して自分たちで営んでいくサービスを増やしていこう、という話は出てきていますよね。例えば、配送サービスを自分たちで営むとか。
一方、欧州にいると気候変動の影響を如実に感じます。自然との関係を見つめ直そう、という動きも大きいです。

自然だけではなくて、無意識のうちに「支えられていた」ものは無数にあると思います。身近な例だと、お気に入りのお皿が割れて悲しいとか。
暮らしの中で、すでに関係にあるものを一個一個見つめ直すことを、僕は扱っていきたいです。

守本:
人間に悪影響を与えるからプラネタリー単位で何とかしなければいけないんだ、ではなくて、もっと相互依存的なものですよね。

川地さん:
はい、「自然を守っていこうよ」という話がしたいわけではないんです。
無意識にも意識的にもよっかかっている関係者がいる感覚が増えていくことが、私たちもより豊かに、楽に生きられる感覚に繋がっていくんだと思っています。

ケアしあえる関係性を可視化する

守本:
川地さんが様々な共創プロジェクトを実施されてて、最終的なアウトプットまで見据えながらデザインされているのか聞いてみたいです!

川地さん:
プロジェクトの状況によって違うので一言で言えないのですが、「表現するためのクッション」をどう作るかは大事です。安心して語り合える関係の場になっているとか。

一方でシステム上の関係の枠組みをどう取るかも考えています。
例えば、障害者雇用では雇用後のサポートは雇用担当者の役割ではなくなりますが、精神障害のある方の場合は人間関係の影響を受けやすく、職場の人間関係が働き続けられるかに大きく関わってきます。
そうなったときに、誰とどこを、どのように連携すれば良いのかを考えるようにしています。

守本:
視点や時間を変えながら見ていくと、どこでどの関係性がうまくいくのか、どこに引っかかるか、など関係性の可視化をしているんですね。

川地さん:
そうですね。例えば海がテーマであれば、都市から遠い海洋環境をケアするために、魚の流通経路など海と都市をつなぐさまざまな関係や情報の流れを可視化します。どの流れがどう変わると、もっと自然も人もケアし合えるかを考えることが大切です。


noteでのお届けはここまでです。この後も座談会参加者から「役割を脱いで地域に出る工夫とは?」「想像力をはたらかせるワークショップづくりの際に意識していることは?」などの問いが立てられ、川地さんを含めた対話の時間となりました。全貌は実験室メンバーのみが視聴できるアーカイブ動画でご覧いただけます。

終わりに

ケアまち実験室では、今後もアート、建築など、様々な方を登壇者としてお招きし、座談会を行っていきます。
ケアまち実験室のメンバーになると、ケアまち座談会への参加費が無料になるほか、ケアまち座談会アフタートークへの参加(Slack)、ケアまち座談会アーカイブ視聴も可能となります。

ケアまち実験室でできること

詳細は、以下URLの公式ホームページをご覧ください。
https://carekura.com/caremachi

ケアとまちづくりにご関心がある方は、ぜひ実験室にご入会ください。
ケアまち実験室にて、皆さまとお会いできることを楽しみにしています!

■ ケアまち実験室へのお申込はこちら


(執筆:鈴木唯加、恒本茉奈実)


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