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ケアと公衆浴場-はだかで考えるコミュニティ-ケアまち座談会Vol.5

2020年10月7日、21:00〜22:20に開催した「ケアまち座談会 vol.5 日常の風景からみるケア」のレポートをお届けします。

当日は25名の方がご参加くださいました。

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当日のプログラム
21:00 イントロダクション(モデレーター:玉井友里子)
21:10 チェックイン
21:15 登壇者ピッチ:こばやしあやな、平松佑介
21:30 ダイアローグセッション:こばやしあやな、平松佑介、玉井友里子、守本陽一(ガイド)、小林 弘典
22:00 参加者同士の座談会
22:10 質疑応答
22:20 クロージング

登壇者紹介

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こばやし あやな
神戸出身、フィンランド在住。2011年に移住し、現地大学院で芸術教育学を専攻する傍ら「Suomiのおかん」の屋号でコーディネート・執筆・翻訳活動を始める。フィンランド公衆サウナの歴史と意義という、現地でも前人未到のテーマで執筆した修士論文が話題になり、2016年にユヴァスキュラ大学院修士課程を首席で修了。卒業後に起業しコーディネート業務を続けながら、2018年に著書『公衆サウナの国フィンランド(学芸出版社)』を出版。サウナ文化のエキスパートとして、両国のメディア出演や講演活動、諸外国の公衆浴場文化のフィールドワークを続けている。

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平松佑介(小杉湯3代目)
1980年生まれ 杉並区高円寺出身。
住宅メーカーで勤務後、ベンチャー企業の創業を経て、2016年から家業の小杉湯で働き始める。2017年に株式会社小杉湯を設立、2019年に代表取締役に就任。1日に1000名を超えるお客さまが訪れる銭湯へと成長させ、空き家アパートを活用した「銭湯ぐらし」、オンラインサロン「銭湯再興プロジェクト」など銭湯を基点にしたコミュニティを構築。また企業や地方と様々なコラボレーションを生み出している。2020年3月に小杉湯となりに新たな複合施設をオープン。

登壇者ピッチ

「フィンランド・サウナや社会全体のキーワード=寛容と信頼」
こばやしあやな

皆さんはじめまして、こばやしあやなです。

公衆浴場というテーマでは、皆さんに馴染みのある日本の話から入った方が良い、という議論もスタッフ間でありましたが、あえて、「信頼」というキーワードから掘り下げるという意味で、フィンランドの事例からお話します。

皆さんにとって、おそらく異文化であるフィンランドでは、お風呂の代わりに蒸気を浴びる、「サウナ」という文化が根付いています。

フィンランドでは、サウナは日本人のお風呂に対する感覚と近しく、家にもあります。家だけでなく、私たちが温泉に行く感覚で、まちや郊外のサウナに行くこともあります。まちのいたるところや、サマーコテージなど、どこにだってサウナがあるのです。

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この写真は、私が住んでいる街にある島の中のサウナなのですが、無料で使うことができます。ここにはボートでやってきて、夏の間は自由に入ることができます。

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これは私の家のサウナです。家のシャワー室の隣にサウナがあって、3〜4人で一緒に入れます。左下に見える熱々の石に、桶から水を組んで水をかけて、発生した蒸気を浴びます。

ヴィヒタという白樺の葉で体を叩くことで、血行が促進されます。

学校や会社の打ち上げ、商談の後のレクリエーションなどでサウナを利用することもあるので、学校や会社にもサウナが用意されています。

ホテルにもサウナがあり、ホテル客が無料で使用できます。

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サウナ小屋
これは日本人が温泉、露天風呂など、自然の中で行うリラクゼーションのフィンランド版です。コテージに付いているサウナ小屋です。サウナで温まった後、冷たい湖に飛び込み、クールダウンをします。自然の中で自然の息吹を感じながらサウナを楽しむ、非日常のサウナ体験かと思っています。

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テントサウナ
元々は軍隊の訓練や、冬の寝泊りのために作っているサウナでしたが、最近はレジャーにおいて、レクリエーションとして使用されることがあります。

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貸し切りサウナ
グループで貸し切り、楽しめるサウナもあります。こちらはなんとバーガーキング店舗の地下にあるサウナです。入りながらハンバーガーも楽しめますよ。

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他にも観覧車の中や、

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サウナ付きの船があります。船は運転手付きでレンタルができます。サウナを楽しんで、湖に飛び込んだり、船の屋上でバーベキューを楽しめます。

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公衆サウナ
今日のテーマでピックアップしたいのは、公衆サウナ。日本の銭湯と同様、入浴料さえ払えば誰にでも使用できるサウナです。基本的には男女別になっています。

サウナに入った後は、外気を浴びて休憩します。中庭などにスペースがある場合もありますが、このように店の前で外気を浴びる施設もあり、フィンランドの公衆サウナの風景と言えるでしょう。

さらっと3件ほど紹介します!

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ラヤポルッティ・サウナ
フィンランドで一番古い公衆サウナです。今日一緒に登壇されている平松さんが運営されている小杉湯さんより古いです。

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開店前には何キロもある薪をくべてサウナストーブを温めます。

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これが番台です。ここでお金を払い、右が男、左が女という区切りになっています。更衣室にはロッカーがないので、本当に大事な貴重品だけ番台に預けます。

浴室にはシャワーがないので、浴槽からお湯をくんで身体を洗い、二階にあるサウナを楽しみます。

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中庭に休憩できるスペースがあり、ここで外気浴をしながらリラックスすることができます。

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ウーシ・サウナ
2018年秋に創業された、大都会の新興住宅地にあるサウナです。

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先ほどの「ラヤポルッティ・サウナ」では薪をくべていましたが、こちらは浴室のペレットを全自動でコントロールしながら、サウナを温めます。

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番台も「ラヤポルッティ・サウナ」とは全然違いますね。お金を払ってサウナに入ることはもちろん、バスローブを着てバーでくつろぐこともできます。

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サウナはこんな感じです。

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中庭では外気浴を楽しめます。

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ソンパサウナ
市民が作成している無料のサウナです。市から土地だけ借りて、市民が自由にサウナを建てたり、壊したりしながら運営しています。

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このように建築関係の方々が廃材を置いていってくれます。鳥が巣作りをするように、廃材で新しいサウナを作ったり、薪として利用します。

サウナ室には、基本的に知らない人同士で裸でサウナに入ります。恥ずかしい人は裸でなくても利用可能です。

サウナの後には目の前にあるバルト海に飛び込んでいます。

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こちらは更衣室の写真ですが、ロッカーはなく、雨ざらしのところに、貴重品を置くこともあります。

この写真が象徴しているように、フィンランドの人たちは、人を信じるとか、人に対して自分の価値観を押し付けない、ということが前提になっているからこそ、このようなあり方が成り立っているのではないかと考えています。

「置いたものが盗まれてしまうんじゃないか?」など、過度に心配してしまうと、このような環境をつくることは難しくなってしまいます。

また、「自分はサウナは静かじゃなきゃ嫌!」とか、「こんなことされちゃいや!」みたいな主張が強い方々、それが例えば常連さんで、相手に押し付けてしまうと、押し付けられた側は、「え、それじゃつまらないな〜」と、その場から離れてしまうということがあると思います。

フィンランドのサウナは、公共の場なのだから、「自分が100%楽しめなくても、あの人はあの人で楽しそうだからまあ良いか」ぐらいの感じで、お互いがお互いをなんとなく気遣いながら、許容値の限界点を超えないよう、コミュニケーションをとる場所といった面があります。

まずは他人を信頼する、他人がどう考えているかをさりげなく感知しつつ、基本的には放っておく

そんな感覚の中で成り立っているのが、フィンランド の公衆浴場であり、公衆サウナなのかなと思います。

※書籍内からの抜粋写真撮影者:かくたみほ


「小杉湯の取り組みと今後の展開」
平松佑介

小杉湯の平松ともうします。東京・杉並区にある銭湯、小杉湯を経営しています。

社会的処方は、3年ぐらい前から関わりのある医療従事者の方々とも情報共有をさせていただいています。すごく関心があり、小杉湯にも取り入れているテーマなので本日は楽しみにしています。

あやなさんのプレゼンが非常に良かったです。打ち合わせの時にもお伺いしたのですが、「寛容」と「信頼」だな、と本当に思いました。

従来日本の銭湯の中も、「寛容」と「信頼」で成り立っていたのかな、と思いますが、今の日本でこれだけでやれているかと思うと、ちょっと難しいところもあり。僕自身が目指すべきところが、フィンランドの公衆サウナにあるんだな、とすごく感じています。

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小杉湯は昔ながらの銭湯で、昭和8年に創業、今年で87年目になります。

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このように番台があって

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待合室があり

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お風呂は四つあります。富士山の壁画が描かれているような、すごくオーソドックスな銭湯です。

銭湯業界と小杉湯
日本で一番銭湯が多いのは東京。戦前のピークが約2,900件あったのが、約400件まで減り、戦後、20年ぐらいで2,600件程度まで増えました。そこから少しずつ減っていっているのが現状です。

ピーク時と比較すると、現在のセブンイレブンと同じくらい銭湯があったことになります。

銭湯の数は人口との相関関係が強いです。戦後350万人程度だった人口が、20年程度で1,100万人程度まで増えます。銭湯は一年に120件ぐらいできました。家にお風呂がないので、銭湯をつくっていったという背景があります。

前回の東京オリンピックでユニットバスができ、家にお風呂がある状態が普及したことで、銭湯という家にお風呂がなかった時のビジネスモデルは役割を終えていきます。現状の東京の銭湯は500件程度、1日の平均利用者数はは120人程度と言われています。

銭湯は人口が増えたときのビジネスモデルなので、東京、大阪に多いです。それ以外だと埼玉で70件程度。温泉やスーパー銭湯など、他温浴施設を含めると、温浴施設全国で約2万件あり、総数はここ十何年は変わっていません。

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そのような状況の中、小杉湯は平日は400〜500名、土日だと1000名程度のお客様に来ていただくこともあります。(コロナ禍前の数値)

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年齢構成は様々で、男女比は2:1です。

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銭湯の特徴を私たちは「ケノ日のハレ」という定義付けをしています。

家にお風呂がある時代において、どうやって銭湯に来てもらうか。日常の延長線上に、ちょっと幸せを感じられたり、ホッとできるような、日常の中のハレの日を作れるのが銭湯だと考えています。

また、ビジネスモデルとしては、「シェアリングエコノミー」かなと思っていて。お湯を沸かして、お湯をシェアしているという考え方です。

特徴として、番台でお金を払って、シェアしているお湯を利用するので、僕だったり、スタッフだったり、人によるサービスが発生しません。

場所と人とのコミュニケーション設計

場所と人とで、どのようなコミュニケーションをとってもらうか、を意識をしています。空間をつくること、環境をつくること、綺麗にすること、ポップをつくることなど、が大切になってきています。

人は人を評価するが場所は人を評価しない
このあたりの話が、寛容と信頼に関わってくるのか、と思っています。

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銭湯に来る目的は、コミュニケーションをとることでなく、お風呂に入って気持ちよくなること。その結果として、挨拶をしたり、たわいもない話をすることが生じます。そんな形で、自分一人でいることもできるし、誰かとつながることもできる。そこが銭湯の特徴的なところだと思っています。

プライベートとセミパブリックな場所を共有できる、「中距離の関係」が成り立っている。顔はわかるけど名前や肩書きはわからない、でも、合えば話をすることもある。そんな人間関係が銭湯の中にあることは、大切なことだなと思います。

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小杉湯は環境である、という定義付けをしています。小杉湯はイベントなどを開催しているので、人が集まっていると理解いただくこともあるのですが、自然と人が集まった結果、コトが起きていると感じています手段ではなく、結果として、医療や社会的処方につながっている、と感じられるようになりました。

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小杉湯となり
小杉湯のとなりに新しい施設を作りました。

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一階がキッチンになっていて

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二階が小上がりの和室です。ここでお仕事をしたり、本を読んだり、寝転んで寛いだりすることができます。

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3階は個室でになっています。ベランダにも出られます。

今は(2020年10月現在)会員限定の利用として、月額20,000円でサービス提供しています。

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小杉湯や小杉湯となりでつくっていこうとしているものが「銭湯のあるくらし」。

そんな暮らしの延長線上として、最近では小杉湯の利用される方々に、健康維持につながるような、まちとの関わりしろをご案内する、「となりの保健室」という取り組みもはじめています。


ダイアローグセッション

登壇者ピッチに関する、司会、ガイドの感想

新しい視点であるフィンランドサウナと、なんとなく懐かしい東京の銭湯という二つのお話でした。今回のイベントは、医療従事者の方以外にも、銭湯好き、サウナ好きの方が多い印象があります。(玉井)
小杉湯となりで半年程度会員として暮らしています。銭湯以外で、銭湯的な中距離のコミュニケーションがとれることが面白いです。建物の設計も銭湯的な要素が再構築されていることや、運営の方々の想いも伝わってきます。銭湯での距離感をベースに、そこからどのように関わっていくか、自分で決めていけば良い、そこに関わり方の余白を感じられます。(小林)

どうですか、今のフィンランドは?

フィンランドはヨーロッパ全体でみると、ある程度コロナの影響を抑えられてきました。とはいえ、第二波がきていて悲観的な状況でもあります。

自分の国がある相対的にどうだという話は別として、コロナが人が密集している場所にいくことに対する恐怖感や躊躇を与えたということは間違いなくて。政府からは公衆浴場に対する営業停止の指示などはなかったのですが、飲食店に対しては、6月くらいまで営業停止の指示がありましたし、席数、営業時間の制限などがありました。公衆サウナも飲食店にならっていました。

一番減ってた時期に比べると足並みは戻ってきていますが、コロナ前と比べるとまだ少ないですね。

サウナに全く知らない人と入る、という不安に対して、知っている人とサウナに入る、という方がまだ安心があるようで。知っている人同士で貸し切るサウナ、の需要が増えました。公衆サウナも場所はあるけど人が来ないから、貸し切りの時間を用意していたりしました。

フィンランド の公衆サウナはここ数年外国人の利用者が多かったです。2010年ぐらいまで、フィンランド の公衆サウナの数は日本の銭湯同様減っていました。1950年代が数としてのピークで、それ以降は減っています。それが最近になって、新しいコミュニティとしての価値が認識されはじめ、利用者が増えていました。公衆サウナは観光資源となりつつあった中、コロナとなった状態です。(こばやしあやな)

日本の銭湯は外国人客は増えていた?

コロナ前は増えてはいました。暮らすように旅する外国からいらっしゃる方々が、日本の文化を体験するという文脈できていました。自分で調べたり、友達に紹介をしてもらっていらっしゃっていました。(平松)
温泉は田舎に行かないとないし、もっと手軽に入りたい。銭湯は気軽に体験でき、かつ、古き良き日本の文化も感じられ、いったらハマる人は多いですよね。暮らすように旅する雰囲気を楽しむ人は多いです。日本人はホスピタリティはあるし。ただ、タトゥーがあり、入れないことがあるのかどうかは、気にしている方々は多い気がしています。(こばやしあやな)
銭湯はタトゥーで入れないことはほぼないです。その他温浴施設は禁止のところがあります。(平松)
施設自体の増減のタイミングが、公衆サウナと日本の銭湯は似ていますよね。フィンランドのすごいところは、まちづくりの視点から捉らえて、新しい公衆サウナを行政も一緒につくったりしていることがすごい。(平松)
フィンランド には「公衆浴場組合」的なものはありません。最近増えている公衆サウナは、世襲ではなく、別ジャンルに携わっていた人がはじめることが多いです。まちづくり、建築・デザイン関係、文化人だった人が、その延長で公衆サウナという業態に可能性を感じて一念発起した人が多い。新しい価値は、一つ答えが出るものではなく、様々ですが、都市で暮らしている人々は分断が進み、家族、職場などの、肩書きを持ったコミュニティ以外に、何者か問われないコミュニティに所属すること、そこに心地良さを感じるということは、21世紀にどこの土地でも感じられるものなのではないでしょうか。(こばやしあやな)
フィンランド は広い意味で、外国人、一見さんなどに対していい意味で無関心。何かしらのマナー違反の人がいらっしゃればその際教えれば良いですし。肩書きだけでなく、趣向や好み、価値観などをまるっと受け止めてくれるところがあります。(こばやしあやな)

社会的処方の文脈における公衆浴場の役割とは?

「ケアとまちづくりがとけあい」が良いタイトルだと思っています。

テーマは「信頼」「寛容」「分断」「孤独」だなーと。今銭湯が求められているのは、分断と孤独が進んでいるからだと感じています。若い子達は深刻で、悲しくないけど、寂しい人が多いと聞いています。

様々な方と社会的処方という文脈で話す機会は多くなりましたが、共通することは、分断と孤独というものが原因としてあるなと思います。

そんな社会で、銭湯のような裸の付き合いがいあり、多世代、多様な環境では、その境界線があいまいになり、緩やかに感じられることがある。銭湯の環境をみても信頼と寛容の空気感が生まれてきているし、銭湯とまちという境界線もうまくとけあってきていると、小杉湯をみていても感じます。

社会的処方を目的に銭湯を経営している訳ではなく、お客様に清潔で気持ちの良いお風呂を提供するためにやっています。それがゆるやかにつながっていって、結果的に社会的処方になっていることが大事な要素だなと思っています。(平松)

フィンランドだと医療施策としてサウナが使われることはある?日本だと昔は温泉が処方することがあったが?

サウナ施設を直接医療とか予防とかの場としての考えているアイデアはないと思いますね。サウナ自体が健康に良いという考え方は、認知症に効く、心臓病のリスクを減らす、健康な人が一週間に4回以上入ると差が出る、など聞くこともありますが。何より気持ちいいからサウナに入っているということがフィンランドでは一般的な認識ではないでしょうか。サウナなしの生活は考えられないというのが、フィンランド人が思っていることだと思います。(こばやしあやな)

フィンランドに公衆浴場組合がないのは、歴史的経緯?

1950年代に、フィンランドの人口が増え、集合住宅が増えてきました。その頃のヘルシンキなどは60年代までお湯が家にひけていない状況でした。50年代に浴場委員会的なものがヘルシンキで設立され、この街にはこの割合で公衆サウナがあるべきだ、という話をし場所を確保したりしました。その後、サウナがどこにでも作られるようになってからは、そのような自治体などが対応することはなくなりました。(こばやしあやな)

日本の銭湯の信頼度合いを、どのようにすればフィンランドサウナのように近づけられるのか

公衆サウナの中だから特別な振る舞いをしている訳ではなく、フィンランド国民の人間性から性善説で動いています。

日本ではマイナンバーの導入に対し、情報が抜かれるなど、ネガティブな意見もあります。フィンランド人で導入が議論されたのは何十年も前なので当時の動乱は分かりませんが、現状の医療履歴の共有などが簡潔になったり、税金、大学の成績までアクセスできることに対して、不安より、利便性を感じています。

スーパーに自分の電話番号を掲載して、メルカりみたいな個人間の取引も自分たちでやっていたり。

不信感をもつことでやれることが限られてしまうことはありますよね。フィンランド人もリスクがあることは分かっているけど、楽しみが薄れてしまう方が怖いので、まずは信じてみる、というスタンス。これが国民気質です。

フィンランドの公衆サウナには張り紙がないんです。書いているだけでも楽しさ半減です。(こばやしあやな)
信頼社会のメリットは信頼するから得られている印象があります。平松さんはどうですか?(守本)
僕が理想とするのはそこだなと思います。拒絶と不審が強いので、「〜しないでください」という張り紙を貼って欲しいという依頼はあります。銭湯という空間でその拒絶はしたくないが、現実として難しい場合もあり。信頼と寛容は小杉湯の中でつくりたいと思っています。(平松)

Q&A

国民性と性善説について
フィンランド以外にも、デンマークなどの事情を調べています。赤ちゃんの乳母車の外に出していても大丈夫、と言われれることもあるほど性善説の印象の強い北欧諸国ですが、国民がクラブに多く参加していて、知り合いが多い。結果として監視的な一面もあり悪いことをしない、ということも聞きましたが、フィンランドはどうですか?

コミュニティの人数によります。村など、全員が知っています、というところであれば、そういった面もあると思います。ただ、公衆サウナは大都市にできていて、そういうところに住んでいる人は、お互いを知らないことが多いです。

フィンランドの人たちは基本的にシャイで、同じマンション内でも交流を持たないことが多く、あまり関わりを持ちたくない人も多いです。もちろんそうじゃない人もいます。ただ、自分の時間を大切にした人が多いという印象が経験則ですがあります

言い換えれば、自分のパーソナルスペースを広くもっているんですね。「オマラウハ」というフィンランドの言葉もあり、「自分の平和」という意味なのですが、自分の守りたいパーソナルスペースはあります。それとは別に、程よい間隔でのコミュニケーションに幸せを感じることもあります。(こばやしあやな)

となりの保健室について
どんな取り組みなのか教えてください

きっかけは「EXERCISE IS MEDICINE」という、運動を医療行為に取り入れる活動をされている方が、広報活動をしている中で、東京都の福祉保健局の方に小杉湯を勧めてくださたったことです。小杉湯に来ている方に健康維持のための運動ができる環境を提案してみよう、という感じでスタートしました。

今後「EXERCISE IS MEDICINE」だけでなく、社会的処方という観点で、施策を少しずつ検討していこうとしています。(平松)


※初回開催、「ケアまち座談会 vol.0 なぜ「ケアとまちづくり」は必要なのか」は下記からアーカイブ動画をご覧頂けます。​

note
https://note.com/caremachi

facebook
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#ケアまち座談会

(執筆・編集:小林弘典)

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