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瞑想と呼吸、脳の酸素の話2~ケアの時代11

前回、悩むことで脳は大量の酸素を消費しているという説を書いた。

メディテーションなどで①呼吸をコントロールし、体内に取り入れる酸素を多くすること、また②思考をコントロールすることで、脳で消費する酸素を減らすことで、メンタル不調を改善できるのではないか、という話だった。


脳を使いたくない人類

そもそも人間は、脳を使うことが嫌いな動物だ。
というか、すべての生物は、生き延びるためにエネルギーを節約しようとする。
ライオンは狩りのとき以外はほとんど寝ているし、コアラもユーカリから摂取した少ないエネルギーを眠ることで節約している。
人間がサボるのも、食物が少なかったころからの本能だろう。
厳しい自然の中で、消費するエネルギーを少しでも節約しようとするのは、生物の本能だ。
休むとか、サボるとか、無理をしないということは、生きるために必要なことなのだ。

認知のバイパス化

だから、脳でもなるべく考えないようにして、エネルギーを節約する機能が備わっている。
例えば、「りんご」という単語を見た瞬間、ほとんどの人は、あの赤いりんごを思い浮かべているだろう。
実際は青かったり、いびつな形のりんごもあるのだが、りんごは何色?どんな形?などと考える間もなく、「りんご」といえばあの赤いりんごが思い浮かぶ。
それは「りんご」という単語と赤いりんごの映像が脳の中でバイパス化されていて、余計な思考で脳に負荷をかけないようになっているからである。
生まれて初めてりんごを見る人は、りんごの形や色、質感、味などをひとつひとつ丁寧に確認していくだろう。
しかし、会話の中で「りんご」が出てくるたびに、いちいちその作業を繰り返していては、脳に負荷がかかりすぎて、処理が追い付かなくなってしまう。

認知のゆがみ

しかし、この機能が認知のゆがみを生んでしまうこともある。
例えば、色黒で目立つ金のネックレスをしている男性に、道端で突然乱暴な言葉をかけられたとする。
すると、次から色黒で金のネックレスのしている別の人を見ても、なんとなく警戒してしまう。
本来、乱暴な言葉で攻撃されることと、色黒で金のネックレスをしていることに関連性はないのだが、これらがバイパス化されて認知するようになってしまっているからだ。
脳は、色黒で金のネックレスをしている人を見たら、その人が安全かどうかをいちいち判断する負荷をかけずに、すぐに警戒態勢に入れるようにしているのだ。

これがいわゆる偏見だ。
「外国人」、「LGBT」、「老人」などと、集団で特徴や傾向を捉え、個別の人をじっくり観察しないで勝手に判断をしてしまう。
その良し悪しはおいておいて、このように判断を簡単にすることで、脳の負荷を減らそうとしているわけだ。
赤信号は止まる、青信号は進む。
日本人はこれを律儀に守る、世界でも珍しい国民性らしいが、これもいちいち車や歩行者を確認する負荷をかけずにいられる。
コロナ禍においてマスクをするしないの判断をその都度するよりも、何も考えずにマスクをしておいたほうが楽だと、多くの日本人が感じているのも同じことだ。
これらを「思考停止」だと批判することもできるが、実は思考は停止していたほうが、生きるためのエネルギーは節約できる。
考えるのをやめるという状態が、もっともエネルギー消費を抑えられている効率の良い状態なのだ。

メンタル不調の原因

鬱や適応障害などのメンタル不調では、考えすぎてエネルギー消費が激しい状態が継続してしまうことで起きると、私は考えている。
現代人は頭を使いすぎている。
判断や決断には多くのエネルギーを使う。
近代以前には何かが起きてもすべて「神」のせいにできた。
不条理なことが襲い掛かっても「神の思し召しだ」とか「神の与えた試練」だと、悲しんだとしても、そこまで頭を悩ませることはなかった。
現代では、「神は死んだ」ので、「なぜこんなことが起きたのか」と考え続けなければならない。
それは脳に大量の酸素を使わせ、相当なストレスとなっている。

メディテーションの効果

メディテーションでは、このように悩みすぎて働きすぎた脳を休ませることができる。
メディテーションの基本は、何も考えずに、誘導してくれる人の言うとおりにすることだ。
これが、メディテーションがうまくいくコツだ。

かつて、私は一人でメディテーションの本の内容のとおりに試してみたことがあったのだが、まったくうまくいかなかった。
今思いかえすと、本を読んでその内容を理解して、実践して、と、ひとつひとつ考えながら行っていたからだと思う。
その数年後、あるお寺で阿字観という瞑想を、住職のいうとおりに行ったところ、たちまち効果を実感できた。

このように、最初は必ず他人のガイドがあったほうがうまくいく確率が高い。
それに慣れて、段取りや順番を考えずに行えるくらいに慣れたら、自分だけでもできるようになるはずだ。
いかに考えずにできるかが、メディテーションのポイントである。

そのほか、静かな場所であったり、自然に囲まれている、心地よい音楽が流れているなど、リラックスできる環境が望ましい。
メディテーション(瞑想、マインドフルネス、ヨガ、座禅などを含む)では、問題を脇に置けるようになったり、自分が本当に望んでいることと向き合えたり、悟りを開いたり、集中できたりする。
メディテーションに興味はあるが、うまくいったことがない、なんとなく疑問を持っているかたも多いと思うが、是非実践してみてほしい。


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