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鬱や適応障害に効く?瞑想と呼吸、脳の酸素の話1 ~ケアの時代10

リトリートにおけるメディテーション

前回、リトリートについてのインタビューを掲載した。
実は、その中でいちばん盛り上がった話題が、メディテーション(瞑想)についてだった。
前回書ききれなかったので、今回改めて書いていく。

インタビューに答えてくれた友人は、1週間のリトリートの中で、メディテーション(瞑想)がとても印象に残ったという。
イルカと泳ぐために遠くバハマまで行ったのに、結局悪天候で叶わなかったようだが、リトリートにおけるメディテーションとの出会いは、とても大きな副産物だったようだ。
私も、「阿字観」という密教の瞑想にハマっていたことがあり、共通の話題として盛り上がった。

ヨガ、座禅、阿字観、マインドフルネスなど、世界にはさまざまな瞑想法があり、その方法は少しずつ異なるものの、呼吸と意識のコントロールはすべてに共通しているようだ。
ここでは、便宜的にそれらをまとめて「メディテーション」と表記することにする。

フリーダイビングとメディテーション

友人はフリーダイビングにハマっていたという。
普通のダイビングではボンベを背負って潜るが、フリーダイビングはボンベなしで潜る。
いわゆる素潜りだ。
どれだけ息を止められるかで、潜れる長さと深さが決まる。
いかに無駄な酸素を消費しないかが、ポイントだ。
体の動きの無駄はもちろんだが、どれだけ余計なことを考えずにいられるかでも、呼吸を止めていられる時間が変わるという。

私も子供のころ、スイミングを習っていて、「潜水」でどれだけ長く泳げるかによくチャレンジしていた。
プールでの「潜水」とは、通常の水泳のように水の表面を泳ぐのではなく、底に近い部分を息継ぎなしで泳ぐことだ。
「潜水」をスイミングスクールで技術として教えられたわけではないのだが、コーチや友達に気付かれないように近づいていたずらするためには必須の技術だった(笑)

私は当時、25mプールの端から端まで「潜水」で泳ぎ切ることを目標にしていた。
だが、速く泳ごうとすればするほど力が入り、息が持たない。
また、端までがんばって泳ごう!と目標について考えれば考えるほど、息が持たない
こうして何度かチャレンジしているうちに、目標を意識せずに、ボーッとっとしながら泳いでいたら、いつの間にか25m泳げてしまったことがあった。
気付いたら、プールの端に辿り着いていたのだ。
きっと体の余計な力が抜けていたのもあるし、何も考えていなかったのも、よかったようだ。

水の中では、音が遮断されるからか、喧騒は遠くなり、一人の世界に入りやすい。
まわりはまったく気にならなくなり、ゾーンというのか、集中できている状態になりやすい。
これは、メディテーションの状態に近いのかも知れない。
生物は太古、海の中で生活していたとか、生まれる前は胎内にいたとか、ロマンティックなことを言いたくなるような感覚を味わうことができる。

脳の酸素不足とメンタル不調

海でのフリーダイビングにしても、プールでの潜水にしても、余計なことを考えずにいたほうが、脳の酸素の消費量は少ないことは間違いないようだ。
ということは、普段私たちが地上にいるときも、何かを考えているだけで、もしくは悩んでいるだけで、多くの酸素を脳で使用していることになる。
多くの酸素が脳にまわるので、それだけで肉体的なストレスにもなっていることになる。
加えて、不安やストレスが溜まると自律神経が乱れ、呼吸が早くなって浅くなり、そもそも体に取り入れる酸素も減ってしまう。
これらの一連の悪循環こそが鬱状態なのではないかと、私は考えている。
悩みすぎて、考えすぎて、頭を使いすぎて、エネルギー消費が激しすぎる状態が継続することが、鬱状態や適応障害なのではないかと。

浅い呼吸で体内に入ってくる酸素も少なくなるうえに、脳も酸素を多く消費しているのだから、これは相当な悪循環である。
この状態が継続すれば、具合が悪くなるのは当たり前だ。
夜も眠れないし、眠れても変な夢をみる。
頭も体も休まらないし、エネルギーをとられるので痩せる、太れない。
筋肉も落ちて代謝も落ちる。
あるいは逆に食べすぎる場合もある。
髪が抜けたり、肌が荒れたり、さまざまな肉体的な症状が複合的に現れてくる。

脳の酸素不足は、メンタル不調に、大きく関わっているのではないだろうか。
あくまで個人的な仮説にすぎないが、鬱状態と適応障害の実体験からの直感でもある。


メディテーションの効果とは

精神科医も、鬱や適応障害には、とにかく休むしかないという。
それは、とにかく脳を休ませないといけないということではないだろうか。
実際、私も退職して4か月間働かずにゆっくり休んだことで、ほぼ回復することができた。
今思うと、その期間に、悩みやストレスの原因から離れて、脳を使わず、酸素の消費量を抑えられたことがよかったのだと思う。
家族と平和な時間を過ごし、悩むことをなるべく減らし、大好きな読書や文章を書くことに集中した。
回復するにつれ、だんだんと運動できるくらいの活力が湧いてくるようになり、走ったり、散歩をするようになった。
そして、転職活動を始めることができるようにまでなり、運よく良い環境で働ける職場と出会えた。

休んでいたこの期間、とくにメディテーションをしていたわけではないのだが(阿字観にハマったのは退職前のストレスがピークのとき)、メディテーションで呼吸と脳をコントロールすることは、心身の回復には一定の効果があるはずだ。
普通は、なかなか4か月間も休めないだろうから、メディテーションで効率的に以下の効果が得られるならば、理想的だ。

①呼吸法で酸素を多く取り入れる
②思考をコントロールすることで、脳の酸素の消費量を減らす。

これがメディテーションの効果であると考える。
「鬱や適応障害などのメンタル不調に対して、メディテーションが効果がある」、というよりもむしろ、「そうした不調に対して、人間が体験的に見出だした回復技術こそが、メディテーション」なのではないか。
今まで、メディテーションが、なぜメンタル不調に効果があるのかまったく理屈がわからなかったのだが、友人との対話のおかげで、ようやく納得のできる答えにたどり着くことができた。


次回は、メディテーションにおける思考のコントロール方法などについて、もう少し詳しく触れていきたい。

※今回も前回に引き続き、友人に提供いただいた写真を使用しました。


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