Ⅶ)悩みがあったりなかったり~企業内キャリア面談のいろいろ~
こんにちは。キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
就職・転職時の相談ならば、自分の方向性や求人の相談、応募書類の添削、面接練習等の相談が中心になりますが、企業内のキャリアカウンセリングやキャリア面談って、どんなお話をしているのかイメージできますか?
今回は、企業内キャリア面談の現状などをまとめてみようと思います。
企業内のキャリア面談って何をするの?
いい会社に入社さえできればこの先安泰!という時代ははるか昔のことです。今は、大きな企業も事業再編で事業ごと他社へ手放すこともありますし、早期退職制度を設けて希望の退職者を募集し続けているところもたくさんあります。昔は若手をゆっくり育ててくれましたが、今は早く即戦力になることを求められています。
生産性や効率化を重視する中で、社員一人ひとりの自主性・主体性・自律性が重んじられ、「何ができるの?どうなりたいの?何をしたいの?」と答えを求められる機会が増えています。社員が自分で自分のキャリアを考え、将来の目標を立てて自律的に歩んでいく時代になりました。さらに働き方や仕事への意識が大きく変わってきた昨今、はたらく人の悩みは多様化しています。でもそういうことを相談できる場が企業内には少ないのです。
キャリアコンサルタントによるキャリア面談は、はたらく人が抱える悩みやモヤモヤを話せる場です。人事の方から「キャリアなんて考えさせたら辞めちゃうんじゃないの?」と言われるんですが、そういうことではなく働きつづける上で大なり小なり誰もが抱える悩みの受け皿になり、話しながら自身で整理していく機会でありたいと思っています。
・・・・・
キャリア面談はどんな時実施しているのか?
キャリア面談で一番多いのは、入社3年、5年、昇進時等の節目に実施する「キャリアデザイン研修」等の研修受講後面談を実施するケースです。集合研修でキャリアを考えるステップを知り、棚卸しをしたり他者からの気づきなども得て、未来を描いたものについて改めて面談で深めていく機会となります。
研修では組織から求められる自分になるための道筋を描く方が多いのですが、個別の面談では個人的な仕事上の悩みや人間関係、生活上の心配事等もお話する方が多いです。キャリアとは人生全体を示します。仕事・生活・心理状態が複雑に絡み合って私たちは生きています。率直に自分の今を語る機会として、思考や感情を言葉にすることで整理できるようにお話を聴きます。
中には企業内にキャリア支援室を設け、キャリアコンサルタント資格を保持している人事担当者が相談対応にあたるところもあります。他にもある大手アパレル企業では、キャリアからメンタルまで幅広く相談予約ができるセクションを設置して社員の相談を受けているところもあります。そういった部署を設けているのは一部の大手企業に限られますが、広がってきているのは事実です。
それは厚生労働省が推進する「セルフ・キャリアドッグ」が少なからず影響していると思っています。「セルフ・キャリアドッグ」についてはこちらをご覧ください。
・キャリア形成サポートセンター
努力義務なので広がりが遅いのですが、企業側もこの人材不足の世の中で、今いる社員に定着してもらいモチベーションを持って仕事してもらうことは重要課題なので、今後広げていくためにも私たちキャリアコンサルタントの役割が大切になってくると思っています。
・・・・・
キャリア面談と他の面談、どう違うの?
企業の中にあるいろんな面談場面とのすみ分けが難しいのですが、私はこんなふうに考えています。
・産業医面談:メンタル不調者やその気配がある人向け
・コーチング:高い目標に向けて進みたい人向け
・キャリア面談:組織上の利害関係はないキャリアコンサルタントと仕事や生活上の悩みを話せる
気分の状態のUP・DOWNの軸と、意識が未来にあるのか過去にあるのかを軸にしてみると、上記の図のようなイメージです。キャリア面談の守備は幅広いと思います。逆に言えば、その幅広い悩みの相談先がなかったことで離職やモチベーションの低下につながっていた可能性が高いのではないかと考えています。
・・・・・
話すことがもっとカジュアルに
私の場合、研修後の面談や企業側からある部署orある年代に対して面談が設定されるケースが多いので、中には「悩みは特にないよ」「自分のことはちゃんと自分でやってるよ」という人もいます。そういう方とは、現状の整理をご一緒にして今後のステップをお話しいただいて終了!ということもあります。
業務は問題ないけど、部下の育成で困っていて同じ管理職同士で「どうしたらいいか」悩んでいるけど答えがない、ということについてお話することもあります。そんな時は、ご自分がどんな育てられ方をしてうれしかったか思い出してもらったり、少し視点を変えて部下目線でシチュエーションを考えてもらったりします。上からの目線で考えていると気づけないことをサポートする感じです。
あるいは、特に話すことがないという人には、単純にこれまでの振り返りをしてもらい、ご自分の強みあげてもらうというセッションになることもあります。社会人になると自分のこれまでの軌跡を話す機会がないので、あれこれ思い出して、「なんで今の仕事をしているのか」を思い出した方もいました。
キャリア面談は、話すことで自分に気づく機会を提供しています。だから悩みがあっても無くても、話していただくこと自体が大事なんです。はたらく人がもっとカジュアルに話ができる場になっていくことをめざしたい、それを広く伝えていきたいと思っています。
※この連載のバックナンバーはマガジンでお読みいただけます。よろしければぜひご覧ください!
・著書紹介