駐在妻インターン生ってどんな人?【第6期vol.6 小塩奈緒さん(タイ在住)】
2022年10月より第6期インターンが活動中です。第5期から継続の2名を含め8名、アジア、アフリカ、中東、アメリカと世界中から集まった駐在妻。第6弾は2020年よりタイに帯同中の小塩奈緒さんです。
インターン生同士のインタビューは自身では“普通”だと思っていた経歴や強みを掘り起こし、頑張ってきた軌跡を棚卸しする機会になっています。インターン生のことを知っていただきながら、皆さんも「自分がインタビューを受けたら」と是非想像しながらお楽しみください。
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はじめに
日本では仕事も育児もバリバリとこなしたのち、駐在帯同した奈緒さん。現地就労やブログ・インスタグラムでの情報発信、駐在妻向けのお茶会開催など、積極的な活動を続けてきたポジティブでパワフルなイメージの裏には、“暗黒期”を経験するなど様々な葛藤がありました。
女性だからという理由で強いられる我慢
ーーまずは、駐在帯同の経緯からお伺いします。ご主人と同じ会社に所属されていたんですね。
はい。海外事業部所属で「グローバルな仕事がしたい」と言っていたので、海外赴任の可能性があることはわかっていました。
ーーなるほど、それでは海外赴任の話があった時はそこまで抵抗がなかったのでしょうか?
想定していたものの、実際に話があった時にはすぐに受け止め切れませんでした。以前、長女の育休中にも赴任の話があり、その時は語学の勉強をすぐに始めるなど前向きでした。なぜなら、私達の会社は帯同休職制度がないため、育休中であれば退職せずに帯同できるからです。でも結局、その話は流れてしまって・・・行く気満々だったので、気持ちの整理に時間がかかりましたね。
気持ちを切り替えて保活をして、仕事に復帰し、初めてのワーママ生活に奮闘する毎日。目の回る日々でしたが、時短勤務をして夫婦で協力しながらなんとか過ごしました。その後、次女の産休・育休を取得し、再度職場復帰して5か月ほど経ったタイミングで、また夫に赴任の話がきました。その時は「今かーい!」という気持ちで(笑)育休中ならば休職中に帯同できたのに、復職してしまった後では退職するしかない・・・。
さらに、復帰してようやく腰を据えて「今後どうキャリアを積むか」を考えて頑張ろうと思っていたタイミングだったのでショックが大きかったですね。
帯同するなら退職、帯同しないならワンオペでワーママ生活頑張る、という究極の選択しかなく、とても悩みましたし「なんで私が我慢しなければいけないの」という気持ちもありました。
ーー確かに「今かーい!」となりますね(泣)。同じ会社だと、働く姿が想像できるので、辛い部分もあるのではないでしょうか。
はい。同じ会社の同期だったので、部署や階級は違えど意識は対等で、育児と家事を分担してきました。なのに、“女性だから、妻だから”必然的に私が退職する立場にある。そのことを想定することができるにも関わらず、会社が夫の人事を決定したことに憤りとやるせなさ、もどかしさを感じました。夫と比較したときに、自分の方が会社員としての価値がないと会社が判断したのではないか、と勝手に考えてしまうこともあって・・・。夫、会社、社会に対するモヤモヤをなかなか払拭できませんでした。夫のチャレンジを応援したい気持ちもありつつも、なんで夫だけが・・・といううらやましい気持ちや、自分が犠牲になるなんて悔しい、という気持ちが渦巻いていたんです。「退職して帯同するしかない」と結論を出したものの、ぜんぜん納得感がなく、後ろ向きな気持ちでの渡航でした。
モヤモヤを抱えたまま渡航。そして訪れた暗黒期。
ーー後ろ向きな気持ちでの渡航だったわけですが、その後の生活はどうでしたか?
その期間のことを【暗黒期】と自分で呼んでいるのですが・・・
ーー暗黒期?!
そうそう(笑)。最初の半年くらいはとても辛い時期でした。15年以上働いていたので、会社員ではない自分、肩書のない自分には価値がないように思えて、アイデンティティロスになりました。帯同して専業主婦になり、2歳の次女といきなり1日中家に2人きり!その状況に結構やられてしまいましたね。時間は有り余るほどあるのに、初めての海外で、さらに子連れだと思い通りに動けないから家に籠りがちに。友達もいない、子供とどう接していいかわからない、不安とストレスしか感じませんでした。成長していない自分、社会の役に立っていない自分を突き付けられて、気持ちがすごく落ち込みました。
ーー旦那さんにその気持ちは伝えなかったのですね。私は夫に思いっきりぶつけていました!(笑)
夫は事業立ち上げの業務だったので、本人もストレスフルで話を聞いてもらう余裕もなく・・・。さらには「私のこの辛さは、あなたのために帯同したせいだ」とどうしても責めてしまう自分がいて、辛い気持ちを誰にも伝えられずに一人で抱え込んでいました。ストレートにぶつけたほうが、お互いの気持ちが分かり合えたかもしれない、でも、当時は夫の精神状態もギリギリだったので、言えませんでした。
前向きになるきっかけはコミュニティとの出会い
ーー私にも子供がいるのですが、「今日も何も生産的な事ができなかった」と感じることが多くありました。暗黒期を抜けるきっかけはありましたか?
このままでは私の心がダメになる、と感じ、何か行動を起こさねばと思いました。「次女を週3日ナーサリーに通わせて欲しい」と夫に頼み、一人の時間を作って、近所のカフェでほっとする時間を過ごしたり、ヨガクラスに参加してみたりすることで、少しずつ気分が上がっていきました。
そして、「働くママの会」というコミュニティを見つけて、藁にもすがる思いでランチ会に飛び込んでみました。初対面の方々ばかりだったにも関わらず、働きたいのに働けないモヤモヤや、昔と比べて何もできていないことに落ち込む気持ちなどをみんなでシェアできたんですね。渡航後に溜め込んでいた気持ちを初めて他人に話して、「同じ気持ちの方がこんなにもいる!共感してもらえた!」ということにとても救われました。
子供を通じたママ友はいたけれども、「自分のキャリア」といった踏み込んだ話題までは出せずにいたので、その会で自分のモヤモヤを吐き出すことができてスッキリ。その時から「今ここにいるからこそできること、やりたいことをとにかく全部やってみよう!」という気持ちにシフトしていきました。その後、駐在妻向けのグループコーチングに参加し、自分を見つめ直すことで、「この駐在帯同期間は私にとってプラスだし、チャンスだ!」と徐々に思えるようになりました。収入がないからといって、自分に価値がないわけではない、と捉え方を変えられたことで気持ちが随分楽になりましたね。
ーーなるほど、それから精力的な活動に繋がったのですね!帯同中の企業での勤務経験やご自身で開催されたお茶会について伺いたいです!
シンガポール1年目はボランティアをしたり、語学や興味のある勉強をしたりしました。2年目は現地の日系企業でパート勤務をして、ライティングやWebサイト編集などの経験を積みました。3年目は、子育てで悩んだ経験から、”マザーズコーチ”という子育て講座の講師になる勉強をしました。
その他に、シンガポール帯同が決まったころから現地情報を発信するブログを書き続けています。これから帯同する人の助けになりたい、自分が発信することで誰かの役に立ちたい、という思いが継続のモチベーションになっています。そのブログをベースに「もっと何かできないか?」と考えて、渡航前の方や渡航したばかりで友達を作りたい方向けの情報交換や交流の場として“ZOOMお茶会”を始めました。ちょうどコロナ禍でリアルで人に会えない時期だったのもあり、シンガポール向けに計14回、定期的に開催を続けて、のべ150名近い方が参加してくれました!
暗黒期Part2と新たな活動
ーー前向きな気持ちになってからは充実した日々を過ごされていたのですね!本帰国は予定通りでしたか?
それが・・・当初予定していた3年では本帰国できませんでした・・・。
帰国時期を想定してパートを辞め、仕事復帰に向けて気持ちを整えていたのですが、夫に急な辞令が出て、タイにスライドすることになりました。さらに、コロナの影響でなかなかタイへ入国ができず、いつ移動できるかわからない状態でじりじりと毎日を過ごしました。
夫に付随するだけの人生、自分で決めることができない人生だとまた落ち込んでしまって。夫にとってタイでの業務はステップアップになるので喜ばしいことだけれど、私のキャリア再開は遠ざかる一方だというジレンマ。タイではビザの関係で帯同する妻は仕事ができないという事実がさらにモヤモヤに拍車をかけました。
予定から8か月後、タイに入国できたものの、コロナで学校に登校できない状態からスタート。外出もままならず、親も子も友達ができないまま、厳しいロックダウンとなり、半年以上家族4人がずっと家にいるという環境に。暗黒期Part2ですね(苦笑)ストレスフルすぎて記憶がありません・・・。何のために私はタイに来たのか、夫を残して母子で帰ろうかと何度も悩みました。
ーー確かに、暗黒期Part2ですね・・・どのようなきっかけでそれを乗り越えたのでしょうか?
夫は在宅で仕事をしているけれど、私は3食ご飯を作り、子供のオンライン授業のフォローをするだけ。成長できていない、充実感のない毎日にまた焦りを感じて、「外出できないならば、家でもできることを何かやらなきゃ」と思って(笑)オンラインでタイ語を習ったり、新たな資格を取得したりしました。バンコク向けの“ZOOMお茶会”もその一つです。
開催においては心理的ハードルがありました。シンガポールの時は自分が3年住んでいたので伝えられる情報があったけど、自分も来たばかりでバンコク情報に詳しくないし、「そんな私が企画して役に立てるのかな、偉そうだなと誰かに思われるかな」とか思ったり。
でも「とにかく家族以外の大人と話がしたい!」と私自身が思ったので、「もうやってしまえー!」という気持ちでスタート。そこから1年半続けて、計16回、130名の方に参加してもらえました。お茶会を通じて友達ができて、ロックダウンが明けた後も楽しく過ごせたので、想いをもって開催して本当によかったと思っています。行動し続けることで、暗黒期を乗り越えました!
ーー決断力と行動力がすごい!さらには継続している・・・その原動力はどこにあるのでしょうか?
私自身、初めての海外生活での最初の半年がとても辛かったから、同じような境遇の方の助けになりたいという想いでしょうか。渡航前に少しでも不安を取り除くことができたら、入国後の立ち上がりも早かっただろうなって思うし、一人でも知り合いがいたら全然違うと思うし。私がコミュニティのランチ会で救われたように、そういう場が心の救いになると実感しているからですかね。
お茶会での繋がりの輪が広がって、感謝してもらえて、それが自分の励みになって、私がここにいる意味はある、タイに来た意味はある、と納得できるようになりました。誰かの役に立っていると実感できることが、私にとって大事な原動力なんだなと思います。
会社に勤めて働けない期間だからこそ、別の形で貢献したい、この期間だからこそやってみようと自分で自分の背中を推し続けてきました。
「終わりは自分で決める」その意味とは?
ーー今年度中に本帰国すると伺いました。母子帰国なのですよね?
はい。夫の赴任は残り1年ですが、先に母子帰国することを決めました。長女が中学生になるタイミングだからということもあるのですが、私自身も「もうやりきったかな」という気持ちがあるからです。
帯同生活は仮の生活という感じがしていて、6年経ってそろそろ現実に戻ったほうがいいと感じました。年齢的にも再就職活動が厳しくなっていくことや、自分の中で「終わりは自分のタイミングで決めたい」という気持ちがずっとあったことも理由です。
当時、帯同すると決めたのは自分だけど、そうせざるを得ないというネガティブな選択。でも最後は、突然辞令が出て後悔が残るまま帰国するのは嫌だから、前向きな気持ちで選択して、全てをやり切って晴れ晴れとした気持ちで帰国したいんです!
ーーなるほど「自分で終わりを決めたい」というのは、私の中では新しい考えでした!最後に何をやり切りたいと思ったのですか?
帰国を自分で決めて、帯同生活の最後に何をしたいかを考えたときに、ちょうどCARRER MARKのインターン募集の情報が目に飛び込んできたんです。日本で働くことから6年間離れているので、ビジネス感覚を取り戻したい、帯同期間中にインターンというものを経験したい、ならば「やるしかない!」と思って申し込みました。
多くの駐在妻さんとお話しする中で、本当に優秀な女性が多いことを実感していて、「駐在妻はもっと活躍できる!」という想いがあったので、CARRER MARKの理念やその取り組みには常々共感していました。なので、微力ながら何か貢献したいと思いました。
ーーCAREER MARKでの活動を通して達成できたことはありますか?
あっという間の半年でしたが、コミュニティの企画・運営に携わりました。帯同前はIT系の職場でしたが、帯同中に多くの方と繋がる経験を通して興味が変わり、人と関わることが好きになりました。なので、世界中の駐在妻さんと関わりながら、その方たちのはじめの一歩を応援するコミュニティ活動は、私の想いそのもの。ワクワクしながら、楽しみながらコミュニティを盛り上げる活動に注力できました。インターンに申し込んだことで自分が「人に関わる仕事・人を応援する仕事」に興味があることを再確認できたので良かったです。
ーーCAREER MARKインターン活動の醍醐味はありますか?
「こうあらねばならない」ということはなく、「こうあったらいいな!やってみたらいいかも!」と思うことをどんどん提案してチャレンジできることだと私は感じました。そういう土壌がCAREER MARKにはあります!自分自身が当事者だからこそ活かせるアイデアがあるし、それをインターンという立場であっても、世の中に向けて発信したり、企画したり、形にしていくことができるってとってもありがたいことです。素敵な仲間にも出会えて、参加して本当によかったです。運営の方々含め、皆様ありがとうございました!!
あとがき
これまで、働く女性として第一線で活躍してきた奈緒さん。出産・育児があるからと逆算してキャリアを考えていくというのは、女性ならではかもしれません。そして、どんなに計画的に進めていても、その通りにはいかないもどかしさ、とても共感します。夫の仕事や社会に振り回されていると感じていた状況から、「終わりは自分で決める」と自らの意志へ。駐在妻だけでなく、働く女性みんなを勇気づけてくれるお話だったのではないでしょうか。
様々な困難な状況を、ひたむきな努力を積み重ねて乗り越え、更には周囲をどんどんサポートして進んでいく姿は圧巻でした!苦労した経験があるからこそ、困っている人たちに寄り添うことが出来、幸せの輪を広げることができるのだと感じました。奈緒さん、ありがとうございました!
インタビュー・文:
CAREER MARK 第6期インターン 山下
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