中途入社者のスムーズな受け入れのための「オンボーディング」プログラムリスト
中途採用(キャリア採用)による人材獲得にも注力されている企業では、採用の強化と同時に、「オンボーディング」の強化も取り組むべきテーマとなっています。
今回は中途入社者の"受け入れ"について、以下の「組織」「業務」「キャリア開発」の3つに分け、これまで手がけたオンボーディングプログラム例をリスト化しました。
組織:入社者が早く「組織」の"一員"となること
・入社者本人:上司・同僚・その他関係者との信頼関係を築くこと
・受入れ側:入社者がどのような人かを知り信頼関係を築くこと
業務:入社者が担当する「業務」を早く理解し遂行できること
・入社者本人:担当業務を理解し(小さくても)成果を出すこと
・受入れ側:入社者の強み・スタイルを知り効果的に協働すること
キャリア開発:入社者がここでの将来に向けた「キャリア開発」に期待を持つこと
・入社者本人:新しい会社・部署での今後のキャリアに(漠然とでも)期待が持てること
・受入れ側:入社者も含めて、お互いに目指していることややってみたいことを知り、協働・研鑽すること
なお、オンボーディングプログラムの多くは、中途入社者だけでなく異動者についても適用できます。
1. 全体: 全体を通じた共通プログラム
「組織」「業務」「キャリア開発」に共通して実施するプログラム例には下記があります。
注:全てのプログラムの実施が必要ということではありません。
(1) 入社後90日プラン
・入社後90日間(または試用期間終了まで)のオンボーディングの予定を計画 (
"中途入社者・異動者のための「オンボーディング」用チェックリスト"をご参照)
*90日プランでは、以下のオンボーディングプログラムの実施も設定
(2) 上司との定例1on1ミーティング
・毎週・毎月など定例的な上司との1on1ミーティングの実施
(3) メンター(バディ)
・同僚の中から会社・部署のルールやその他、"会社生活"の支援を行うメンターをアサイン
(4) 入社研修・イベント
・入社者向け研修や歓迎イベントの開催
(5) 入社者向けガイドブック/サイト
・入社者向けの手続き・ルール等の情報ガイドやサイトの準備
(6) オンボーディングサーベイ
・オンボーディング期間中に定点的に入社者に対して状況や課題等確認のためのサーベイを実施
(7) 人事(HRBP等)面談・フォロー
・HRBP等との定期的な面談による状況確認や必要に応じたサポート
2.組織: 早く「組織」の"一員"となれるためのプログラム
「組織」に関するオンボーディングプログラムは、それぞれ配属先部署で実施となりますが、中には全部署の入社者を集めた全社的プログラムもあります。
(1) ウェルカムイベント
・配属初日の直属上司との1on1や同僚への入社者紹介・歓迎会の実施
(2) 他部署の関係者との1on1ミーティング
・業務上の接点が多い他部署管理職・担当者との1on1ミーティングの実施
(3) アシミレーションミーティング
・入社者(異動者)と組織メンバーがお互いに、知りたいこと・知っていること・知って欲しいこと等をテーマに対話するミーティングの開催
(4) プロジェクト参画
・改革プロジェクト等の社外知見が活かせるプロジェクトへのアサイン
(5) 入社者コミュニティ
・同じ期間(同じ月・四半期等)の入社者を集めたミーティングやイベントの開催
(6) アワード(表彰)
・入社1年以内で活躍した社員を対象とした表彰カテゴリーを設置
3.業務: 担当する「業務」を早く理解し遂行できるためのプログラム
入社者が担当する「業務」を1日も早く理解し、(小さくても)成果を出せるようにサポートするプログラムです。
(1) 確実な業務の引き継ぎ
・特に前任者が退職した場合は、引継ぎ書を文書として残し、関連資料類をライブラリーとして整理して入社者に提供
(2) 業務トレーニング
・業務遂行に必要な知識・手法・ノウハウ等の研修を提供
(3) 業務ガイド/ナレッジサイト
・業務遂行に必要な知識・手法・ノウハウ等に関するガイドや社内サイトを提供
(4) 資格・検定支援
・業務遂行に必要または効果的な資格検定の学習や受検の支援
(5) 成果報告・発表
・部署内(外)で成果を共有するための報告・発表機会の用意
4.キャリア開発: ここでの将来に向けた「キャリア開発」に期待を持てるためのプログラム
入社者が、所属組織を基点として自社でのキャリア開発への期待感を早期に持てるように、キャリア開発支援プログラムを実施します。既に全社員向けに同プログラムが展開されている場合は、初回はHRBP等が個別サポートを行います。
(1)キャリア開発情報
・他部署の仕事内容やキャリアパス事例の紹介
(2)成長機会情報
・研修や社内公募・プロジェクトなど社内のキャリア開発に関するプログラムの紹介
(3)キャリアプラン作成支援
・人材開発担当・HRBP(または外部キャリアコンサルタント)等によるキャリアプラン作成の個別支援
(4) キャリア面談
・直属上司や人事、外部キャリアコンサルタント等とのキャリア面談(1on1)の実施
(5)キャリアモデルとのコミュニケーション機会
・キャリアモデル/メンターへの面談申入れなどコミュニケーション機会の提供
(6)キャリアアセスメント
・自己理解のためのアセスメント機会の提供
(7)キャリア研修
・キャリアを理解し考えるためのキャリア研修機会の提供
5. オンボーディングプログラム設計のポイント
最後に、実際に多くのオンボーディングプログラム設計を通じて感じているポイントを整理しました。
オンボーディングは、配属先の直属上司だけでなく、 部門トップや同僚・メンター(バディ)社員、関係部署、そして人事(HRBP・採用・人材開発)が「チーム」となって取り組むこと
入社者がいかに早く慣れるかという視点だけでなく、受入れ側(同僚等)がいかに早く入社者を受入れられるか、そのためには入社者にはどのような積極的な行動(自己開示等)が求められるか、という視点も考慮すること
入社者への情報のインプットだけでなく、入社者がアウトプット(自己紹介や成果報告、不安やつまづきの相談等)する機会も準備すること
異動者に対するオンボーディングの場合、異動日の事前に、異動先上司に異動者に関する必要データや必要な情報を共有しておくこと (異動日にならないとシステム上で異動者のデータを閲覧できない場合は特に)
評価会議・タレントレビュー時に入社者(異動者)の状況についても確認すること (特に入社者については、在籍期間の短さを理由に検討対象外とするケースもあるため)