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採用力は言語化×人徳(にん)×スピードである

抽象的な言葉で解釈がわかれる

経営者の社長さんに「ほしい人材」について聞くと、決まって耳にすることばがある。

「ほしい人材って、分かっているでしょう。そりゃあ、仕事ができて、即戦力になる人材がいいね。」

しかしこれでは非常にあいまいである。
ひと言で、「仕事ができる」といっても、その能力は全く違うから。

経理、営業、事業企画、マーケティングなどの職種によって、「仕事ができる」という定義が全く変わってしまうからである。

同じような言葉で「地頭がいい人。頭がいい人。」というにもいろいろある。

また、「ストレスフルな人」というにもストレスは人によって受け取り方が変わる。

たとえば、こちらが伝えようとしていることを素早く理解して、別に人へわかりやすく伝えられるコミュニケーション力の高さも、頭のよさである。

ものごとを論理的に考えて、ビジネスをイメージではなく、戦略的に動かすことができるのも頭のよさである。

コニュニケーション能力の高さと、ものごとを戦略的に考える能力はまったく違うものであり、両方をもっている人材は、ほとんどいない。

どういう立場で、どういう仕事をさせるのかによって、必要となる能力は全く違う。

ところが人材観レベルの低い社長は、頭のいい奴、仕事ができる奴は何でもできると思っている。

そんな人はいないとは言わないが、ただでさえ少ない「よい人材」のなかでも、ごくわずかな人材であると認識をしてほしい。

採用において、できるだけ頭のいい人材、できるだけ仕事の出来る人材を選ぶのは、いうまでものない大前提である。

言語化の難しさ

社長が人事担当者に指示をする場合には、できる人材の中でもどんな能力を持っている人を必要としているのかを伝えなければ意味がない。

そうしないと、人事担当者はどういう能力をもった人を採用すればいいのかわからないまま、「できる」とか、「頭がいい」という言葉に振り回されることになる。
そんな採用で必要な人材が採用できるわけがない。

自分の会社に必要なのは、どんな能力の持ち主なのか。
それを社長がきちんと理解をして、担当者に具体的な指示を出さない限り必要な人材を採用することはできない。

これが確定していないうちに曖昧なオーダーを出されると困るのが、
エージェントである。

不採用の理由も抽象的な言い回しをして、「地頭がよさそうじゃないから」「頭がよさそうじゃないから」など訳の分からない理由で書類選考や面接のフィードバックがある。

もっと詳しいことを聞きたいというと、煙に巻く担当者も多い。

しかし、自分の会社がどんな人材を必要としているか、ちゃんと理解をしている社長は少ない。

自分の会社に必要な人材がわかるためには、自分達のビジネスモデルをよく理解していないといけない。

その上で、どのような能力をもった人を入れれば、会社が伸びるのかという事をわかってはじめて、具体的な指示が出せるのではないだろうか。

会社を伸ばしていける社長は、どういう人材が自社の業績にもっと貢献しているのか、また、さらに伸ばしていくにはどんな人材が必要なのかという事を具体的な言葉で説明をすることができる。

反対にやみくもに、「できる奴を採用しろ」といっている社長は、
自社のビジネスモデルを理解していないという事になる。

誰でも入りたくなる会社と、誰も行きたがらない会社。
誰もが欲しがる人材と誰もがほしがらない人材。
今は企業も、人材の二極化が進んでいる。

採用力って何だろう

エージェントの仕事をしていた時のこと。

給料は低水準であり、仕事は多忙、会社はお世辞にもきれいとは言えず、社長自身は自分の考えをぶちまけ、自分勝手ではあるが、それでも、「採用のプロ」として、よい人材を提案してこいという社長に出会う機会もあった。

いくら採用のプロといわれても、できない事はできないとはっきり言った。
市場の規模、そのにいる潜在人数、社長の人材観にあった人材を探し出すのは、トレジャーハンティングで宝物を見つけるぐらいの確率であることや、
いろいろな注文を出すことによって、スキルの掛け算をしていくことになり、確率がドンドン減っていき、希少価値が上がると同時に、年収交渉や待遇など対応ができなくなっていく。

「プロならいい人材を連れてこい」という社長の多くは、「企業の採用力は社長の人材観で決まってしまう」ということにまったく気づいていないのだ。

「人材は集めるものではなく、集まるもの」という事実に気付いているのだろうか。

採用力の高い会社には、黙っていても、自然と人が集まってくる。

そういうと、「なんだ、やっぱり大手が有利じゃないか。
うちのような規模では所詮だめだ」と思わるかもしれない。
しかし、それは間違っていて、社長が知恵を絞っていないといいたい。
採用力というのは必ずしも企業規模によって優劣が決まっているのではない。

会社の採用力をアップさせようと考えて、仕事を依頼してくれる社長は少ない。

多くの社長は自分たちは何も変えずに、テクニックだけではよりよい人材を採用したいと考えている。

会社を変えてとか、自分を変えて、採用力を高めるというより、金を出すからそれで何とかよりよい人材を採用してくれというのだ。

しかし採用というのは、テクニックも必要ではあるが、それだけではうまくいくというものではない。

結局は、その会社の持つ「採用力」がモノをいうのだ。

企業の持つ採用力は、業種や知名度といった変えられない固定概念の部分と、採用ノウハウや給料のように変えやすい流動的な部分、そして社長の人材観や会社の文化、社内のシステムなど、なかなか変えられないが、変えようと思えば変えられる準固定な部分に分解して、考えられることができる。

採用の先にある人材の定着というゴール

エージェント時代には採用のテクニックを教えることがメインだった。
しかし、テクニックで変えられるのは、採用力の中でも流動的な部分にしか過ぎない。

エージェントとしての仕事はその先にあると常に考えていた。

つまり、テクニックで変えられる部分は教えながら、できるだけ純固定的な部分まで変えて、企業に本当の意味での採用力をつけてもらう事を目指していた。

だから必要なときには、「御社の企業力では採用できません」と採用の仕事をしているものとしては、禁句のようなことを言ってしまう場合がある。

採用力は社長の人材観で決まるものであり、社長の凝り固まった人材観は、変えようにも変えられない場合がおおい。

私の経験からすると、100人の社長と話をして、すぐに変わってくれる人は
2~3人ぐらいである。

それぐらい、なかなか変えられないものなのだ。

97人ぐらいの社長のうちから、30人ぐらいは、変えなけれないけないという事を理解してくれるのだか、すぐには変えられないという社長。

残りの約70人の社長は変えられないというより、変えようとしない社長である。

こういう社長には何を言ってもムダなので、例え依頼をもらったとしても、私から断っていた。

労力をかけるだけムダであり、数字につながらない、貢献できない会社に時間をかけても誰も得をしないからである。

社長に人材観を変える意思が無ければ、システムも社内の文化も、採用戦略も変えることはできない。

なぜならそれらはすべて社長の人材観に根差しているからだ。

企業の採用力は、トップである社長の人材観が大きく変わらない限り大きくアップすることはない。

そして採用力が上がらないと、いい人材が来なくなり、業績も上がらない。

いい人材観をもたない社長の会社は、結局淘汰されてしまう運命にあるといってもいいと思う。

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