元Appleマネージャーが語る!顧客体験を重視するサポート体制の秘密
<50代経営者・人生後半ミッションコンサルタント>の中川麻里です。
以前こんな記事を書きました。
Appleの顧客サポートから中小企業が学ぶべきことは何か?
この記事の中で私は「大晦日にiMacのトラブルで困った末に頼った、Appleのカスタマーサポートに救われた体験」をふまえ、下記についてお話しました。
しかし記事の掲載後も、私は「Appleの企業文化や教育制度」が気になって仕方がありませんでした。
「スタッフと具体的にどんな価値観を共有すると、こういう感動的な対応ができるのだろう?」と。
そこでAppleの文化や教育制度についてweb検索してみたものの、こうした情報はなかなか出てこず、半ばあきらめていたところ…
1.元Appleマネージャーへのインタビューが実現
なんと、過去にAppleのマネージャーをされていた方とご縁があり、運よくお話を伺うことができました! (これはタイミング的にも本当にラッキーなことでした)
よって今回は、Appleの元マネージャーに、Appleの「顧客体験を大事にする文化」について具体的に伺ったお話を皆様とシェアいたします。
2.聞きたかったのは「顧客体験を重視する文化」
その方には、私が知りたかった下記の3点について順に質問してみました。
その際のお話を元に、皆様に分かりやすくお伝えしたいと思います。
そして最後に、中小企業が学ぶべきことについても最後に考えたいと思います。
3.Apple元マネージャーの佐藤さん
この元マネージャーの方のお名前を佐藤さん(仮名)とします。
匿名を条件にこの記事を執筆するお許しをいただきました。
佐藤さん、インタビューと記事執筆のご許可を賜り誠にありがとうございました!
佐藤さんは男性。
数年前までAppleのカスタマーサポートでマネージャーをされていました。 つまり、私が電話でお世話になったカスタマーサポートのスタッフを束ねる職種の方です。
(なおカスタマーサポートは全国に10拠点あるそうで、そのうちの1つに勤務されていました)
私のあらかじめ「Appleの元マネージャーって、すごく切れ者で近づき難い方なのではないか!?」と勝手に想像していたのですが、その想像はいい意味で裏切られました。
佐藤さんが超絶優秀な方であるのは間違いなのですが、人間味あふれるとても親しみやすい素敵な方でした♪
4.サポートスタッフ用のクレドの中心を貫くのは「顧客体験」
早速本題に入りましょう。
佐藤さんは「Appleにはカスタマースタッフ用のクレドが存在します」と話しはじめました。
そしてクレドの中心にあるのは「顧客体験の重視」だそうです。
「顧客体験の重視」とは、一体どういうことなのでしょうか?
佐藤さんは言います。
「お客様はApple製品を通じて下記のような顧客体験をされるんです」
「そして、このような顧客体験の一部に僕らはいるんです。お客様のApple体験の旅の一部に僕らも一緒にいるんです」
佐藤さんはまっすぐこちらを見てそう話されました。
5.サポートスタッフの仕事は問題解決だけではない
「顧客体験の一部にスタッフが一緒にいる」
これはとても素敵な響きだと感じたのですが、「それは具体的にどういうことですか?」と私は質問しました。
すると佐藤さんは、
とおっしゃいました。
たしかに私自身も、大晦日に電話で話したスタッフの方との会話がとても気持ち良いものだったことを思い出しました。
礼儀正しく、問題を切り分けてくれた技量ももちろんですが、「この人ならなんとかしてくれる」という安心感や信頼感も、わずか15分の間にわいてきました。
結果として、さらにApple製品への信頼度も増しましたしAppleのファンになりましたし、誰に頼まれたわけでもないのにこんな記事まで書いています(笑)。
6.クレド浸透のためのスタッフ教育
佐藤さんはさらに、スタッフへのクレド浸透のための2つの施策を教えてくださいました。
まず1つは、「朝礼や終礼でマネージャーがスピーチするんです」と佐藤さんはおっしゃいました。
(そう聞いて、Appleにも朝礼や終礼があるんだと、その"ふつうな感じ"に私は少しびっくりしました)
クレドの精神に絡めたスピーチを、各マネージャーが日替わりで担当するのだそうです。
具体的には、新製品が出るタイミングであれば、「その新製品が顧客に与えるインパクトやすばらしさ」について、クレドに書かれている文言を引用しながら話をする。
佐藤さんは、「クレドと絡めて、スタッフのモチベーションを上げるような話を僕はよくしていました。自分の家族の話も織り交ぜたりして」と、当時を振り返りながら懐かしそうに話してくださいました。
(佐藤さんは、自然に人の気持ちを盛り上げるようなお話が上手な方です)
2つ目は、スタッフ向けの教育用ビデオ。
「スタッフはお客様の電話応対の空き時間に、30分〜1時間のビデオを見るんですよ。そしてそのビデオの中でもクレドの理念や考え方は当たり前に触れられています」と佐藤さん。
7.Appleファンがスタッフとして働く「いい循環」
私はそう聞いたとき「教育ビデオかぁ。自分の社会人経験を振り返ると”会社が用意したつまらないビデオなんて見たくないなぁ」と心の中で感じていました。
しかし、そうではないんですって!
スタッフが嫌がったり敬遠したりするどころか「新しいビデオはないんですか?」とスタッフから催促されることすらあったそうです。
その理由を「スタッフには、Apple製品への飽くなき知的好奇心があったから、みんな見たがったんだと思います」と佐藤さんはおっしゃっていました。
(そしてAppleが作るビデオですから、きっと視覚的にも美しく見ごたえのあるものだったのでしょう)
また、スタッフ同士の飲み会の席でのエピソードも佐藤さんは話してくださいました。
飲み会ではふと気がつくとサポートの仕事の話になっていたそうで、
「**のトラブルの解決ってどうやってる?こうだっけ?」
「いやこっちからこうやると早いよ」
「え?そんな方法があるの!?」
など、トラブル解決の方法談義で盛り上がることも多かったそうです。
飲み会で仕事の話で盛り上がるとは、本当に驚きですね。
(少なくとも私はそんな会社で働いたことはありません!)
これも製品への好奇心のなせる技なのでしょう。
「結局、Apple製品のファンがスタッフになっているんです。ファンがスタッフになって、サポートを提供することでお客様もファンになっていく、そんないい循環があるんです」 佐藤さんはこの言葉とともにインタビューを締め括りました。
8.まとめ
今回、佐藤さんにお話を伺った内容をまとめましょう。
これらはすべて新鮮な驚きでした。
そしてもう一つの驚きは、佐藤さんはもう何年も前にAppleをお辞めになった方なのですが、すべての会話を「現在形」でお話しされていたことです。
たとえば、「そうした顧客体験の一部に僕らはいるんです」と言い方を佐藤さんはされていました。
数年前のことなら「〜いたんです」という過去形の言い方を普通はなさるはずですよね。
私は「佐藤さんにとって、Appleでの体験はさほどにリアルで生き生きしていて、現在もその精神が佐藤さんの中に息づいているのだな」と、勝手な感想を抱きました。
佐藤さん、大切なお時間と本当に貴重なお話をシェアしてくださりどうもありがとうございました!
9.中小企業が学ぶべきことは何か?
さて、佐藤さんがお話ししてくださった、Appleが重視する「顧客体験」を中心に据えた企業文化とサポートスタッフが果たす役割、これらが中小企業に示唆するものはなんでしょうか?
それは自社商品やサービスを「顧客の体験」の一部として位置付けることだと思います。
お客様が商品サービスを購入する一連の流れの中で、
・お客様にどんな体験をしていただきたいのか?
・それによってどんな感情を味わっていただきたいのか?
想像力をめぐらせ一つ一つの施策として確立していくことだと思います。
そしてその大元にあるのは、会社としての理念や目的です。
各々の施策と理念目的が連動することによって、「顧客体験という大きな流れ」が滞ることなく、お客様に体感していただけるものになるのです。
⭐️中小企業の学びについて、詳しくは前回の記事をご参照ください。
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