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短編小説:シュークリーム(はなちゃん物語)

はなちゃんは、生クリームが苦手です。
誰にも言ったことはありません。

だって、みんな、美味しい美味しいって食べてるんだもん。
美味しくない。

その一言を言っちゃダメなことくらい分かります。

だからいつもケーキはチョコレートを選びます。
誰もはなちゃんが生クリームが苦手だからチョコレートケーキを選んでいるとは思いません。
ははちゃんはチョコレートケーキが好きだから選んでるんだと思ってます。

はなちゃんはちゃんと、知っています。
みんなが美味しいというものを一人美味しくない、というのは良くないということを。

これが世界平和だ、と。
これでいいのだ!
はなちゃんはおごそかに、思っています。

ただ、そうもいかない時があります。

それが、シュークリーム。

はなちゃんはカスタードクリームは大好きです。
甘い卵のクリームははなちゃんにはとっても美味しく感じます。
ただ、残念ながら、お母さんもお父さんもみんな、はなちゃんはシュークリームが好き、と思ってます。

そして時々、オヤツにシュークリームを買ってくれます。
そうして、二分の一の確率で、ハズレがやってくるのです。

一口食べて生クリームのシュークリームだと分かった時のはなちゃんは、とてもとてもガッカリします。

でも、言ってはならない、と知っています。
だから、黙々とそのシュークリームを平らげます。
しょんぼりとした気持ちのまま。
どうにかして少しでも生クリームを口に入れまいと、ちょっとづつ下にこぼしたりします。

こぼすとお母さんからメッと叱られます。だからちょっとだけ、です。

はなちゃんには大きな野望があります。
この世のすべてのシュークリームをカスタードクリームにすることです。

そうすれば口にした途端のガッカリ感から解放される。
今、はなちゃんが目論んでいる、一番大きな野望です。

おしまい


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