ショートストーリー:パソコン
私がはじめてパソコンを手に入れたのは1998年頃だっただろうか。
テレビも持っておらず、Windows95と98の違いもわからぬまま、私は彼を手入れた。
私は彼に梅太郎と名付けた。
画面を開くと梅太郎とスクリーンセーバーが踊るように設定した。
使い方も分からぬまま、私は彼でインターネットの波に飛び込んだ。
ダイヤルアップルで、インターネット接続するとジーコロコロコロといっても繋がった。
つながるまでには時間がかかるのが当たり前だった。
使っていた検索エンジンはgooかエキサイト。
だいたいエキサイトのチャットルームにいた。
何も分からないまま。
何も分からないがインターネットの世界はやさしさに満ちていた。
パソコンの不具合はチャットルームの皆が協力して助けてくれた。
タイピングソフトとチャットルームのおかげであっという間にブラインドタッチができるようになった。
私は梅太郎でチャットをするか、小説を描いていた。
あの頃、一緒に小説を書いていた人たちはその後どうしただろうか。
梅太郎とはお別れしてしまったけど、私は今も物語を描いている。
あの頃とは比べものにならないほどインターネットは普及し、そうしてあの特別にやさしい空間はなくなった。
でも、私は、パソコンを開くたびに思う。
やさしさは一人一人の中にあり、出口を探しているだけだと。
それぞれがそのできることでやさしさを渡しあえるそんな世界はきっとすぐそこにある、と。
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