ママ猫がある日聞きました。
「ルーは大きくなったら何になりたい?」
「ボク空を飛びたい」
子猫のルーは答えました。ママ猫はちょっと驚きましたが
「そうね。一生懸命頑張ればきっと飛べるようになるわ」とルーに微笑みました。
翌日ルーが友達に話すと
「バカだな。猫は飛べないんだよ」
「今まで空を飛ぶ猫なんて見たことないよ」
皆ルーをバカにします。
「猫が飛べないって、誰が決めたの?今まで飛んだことがなくたって、ボクが一番に飛ぶかもしれないじゃないか」ルーは友達に言い返しました。
それからルーは毎日どうしたら空を飛べるのか考えました。
物知りのフクロウじいさんに聞いてみます。
「ねえねえ。どうしたら空を飛べるようになるの?僕も飛びたいんだ」
フクロウじいさんは困り顔で答えます。
「そうさなあ。お前さんには翼がないからなあ。鳥は翼で羽ばたいて飛ぶんだよ」
「じゃあ翼を付けたら飛べるかな?」
「どうじゃろうな。鳥は翼を最初から持っているからな」
「あとから翼を付けた友達を知ってる?」
「蝶々に聞いてみたらどうだ?彼女は幼虫の時には飛べないが蝶々になったら飛べるようになる。何か知っているかもしれないよ」
「そうなんだ!ありがとう。蝶々さんに聞いてみる」
ルーは喜んで蝶々に聞きに行きます。
「ねえねえ蝶々さん、どうしたら飛べるようになるの?」
「さなぎになったら次に目が覚めた時には飛べるようになっているよ。でも猫はさなぎになれないんじゃない?」
「さなぎになれなくたって飛べればいいんだけどなあ」
「飛びたいなら、飛行機に乗ればいいじゃない?」
「ちがうんだ。それじゃ飛んでいる飛行機に乗っているだけだもん。ボクが飛んでいるわけじゃない」
「じゃあ分からないわ」
蝶々にそう言われルーはションボリうちに帰りました。でも決して諦めません。
フクロウじーさんや鳥の友達に抜けた羽をもらい、まとめて大きな翼を作りました。「できた!」でも重たくてとても羽ばたくことができません。
コウモリみたいな薄い羽ならどうだろう。ルーはゴミ袋で羽の様なマントを作りました。そして崖の上から「えいやっ!」と飛びました。
ズテーン。大きな音を立てて落っこちました。
「これもダメか」ルーは傷だらけになってうちに帰りました。
ママ猫は「そんな夢みたいなことやめなさい!」と怪我をしたルーを叱りました。「猫が空を飛べるわけがありません!」
「ママは頑張ればできるって言ったじゃないか。あれはウソだったの?」
ルーは泣きながらうちを飛び出しました。
木の下で泣いているとパパ猫がやってきました。
「ルー。ママが心配しているよ」
「ママなんて知らない!頑張ればできるって言ったのに、ボクが頑張るのをジャマするんだもん」ルーは泣きながら怒ります。
パパはルーの背中をさすりました。
「ねえルー。大きな大きな夢はね、一人じゃ叶えられないものもあるんだ。自分が一生懸命頑張って、友達や家族も一緒に頑張ってその子供たちも何代も頑張ってやっと叶うこともあるんだ。キリンの首が長いのはそうやってずっと昔のキリン達が沢山沢山頑張ってきたからなんだ。フクロウじいさんが翼を持っているのもそうなんだよ。ルーが皆と一緒にずっとずっと頑張ればもしかしたら未来の猫は飛べるようになるかもしれない。でもきっとすごく時間がかかるんだよ。ルーが生きている間には飛ぶ事は叶わず、ただ苦しいだけかもしれない。それでも頑張りたいかい?ママはルーが苦しむのを心配しているんだよ。だから止めたんだ」
「僕一人じゃ叶わない夢もあるってこと?」
「本当の事は誰も分からない。やった事がないからね。やった事のない事を誰かが始めようとすると皆反対するもんさ。だからどうしても叶えたい夢があるなら一番大事で一番大変なのは、反対の声でやめてしまわない事だよ。もう一つ大事なのは一緒に頑張る仲間を見つける事。諦めずに頑張っていれば応援する人も出てくるかもしれないよ」
パパはそう言ってウィンクしました。
「僕は諦めなくてもいいの?」ルーは聞きました。
「それを自分で決める者だけが夢を叶えられるのかもしれないね」
パパはどうしろとは言いませんでした。
ルーは空を見上げました。そこにはルーが飛びたいと思った明るい星が沢山輝く夜空が広がっていました。
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