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新卒配属ガチャを回避する方法


界隈の用語で「新卒ガチャ」という言葉がある。
新卒ガチャには会社のガチャ配属ガチャの二種類が存在する。今回取り上げたいのは配属ガチャの方だ。

新卒の配属先は今後の長いキャリアの方向性を決定づけると言っても過言ではないほどキャリア全体への影響が大きい。つまりここをミスるとキャリア的に即死状態になる可能性があるくらい配属は重要なものだ。

基本的に日本の中途採用市場では前職の経験を買われて転職することになる。未経験採用で転職する場合を除いてあなたの転職先は原則的には最初の配属先で学んだことを活かせる仕事に限定される。

あなたがマーケターになりたくてマーケティングが強い会社に入ったのに人事に配属されてしまったら、数年後に元々やりたかったマーケターの仕事をしたいと思い直して行動を起こしても軌道修正するのは(できなくはないが最初からマーケティングの仕事についた場合と比較して)相当しんどい。

社内異動の機会をものにするか、これまでの数年のキャリアを捨てて未経験で転職するかのどちらかを狙うしかなくなるからだ。

やりたいことが決まっているなら新卒配属ガチャを可能な限り回避して大事なキャリアの第一歩を会社に任せずに自分で決める必要がある。

新卒配属ガチャを回避するのに最も有効な方法は「職種別採用の会社に入る」ことだ。職種別採用では採用試験の段階で職種を決めて応募するので入社後に希望職種の部署に配属されることが確約されている。

外資系企業や日系大手の研究開発職、ITベンチャーなどでは新卒で職種別採用を行っていることが多く内定さえとれれば希望の仕事に就くことができる会社も多い。有名な外資系企業であればP&Gは職種別採用をしており、P&Gでマーケティングを学びたいならマーケター職で応募して内定を取ればいい。

日本の大企業でも職種別採用をしている会社は意外と多い。日立製作所は職種別コースとオープンコースを用意しており職種別コースで内定をもらえば配属は確約される仕組みになっている。ITベンチャーの多くもソフトウェアエンジニアコースと企画コースを分けていることが多く、採用の段階で職種を選べることが多い。

また小さい会社であれば社長との直接話せる立場なので内定時にどのような仕事を任されるのか、自分の希望が満たされるかを事前に擦り合わせることができる。このようにキャリアを会社に左右されたくないのであれば「職種別採用」または仕事内容を事前に約束してくれる会社に入るのがベストだ。

しかし全員がこのような職種別採用コースの枠で内定が取れるわけではないし、そもそも職種別採用をしている会社は有名大企業が多いので入社難易度も高い。

また職種別採用で就職しないほうがよいケースもある。多くの人のキャリアを見てきた経験から言えば全ての学生にとって職種が確約された状態で入社することが望ましいとは正直なところ言えない。

人によっては一括採用で採用後に配属先が決まるほうが良いキャリアを歩めることも少なくない。そのため自分が職種別採用で入るべき人間なのか通常の日本型雇用の総合職で入るべきなのかの判断材料になる情報も提供したいと思う。

社会人の最初の一歩を間違えると手遅れとまでは言わないがキャリアで結構手痛いダメージを食らうからだ。

希望の職種に配属される方法

職種別採用以外で希望の仕事に就くための方法は大きく2つある。


1.業務領域が限定される会社に入社する
2.第一希望の部署に配属されるように根回しする


世の中には業務領域が限定されている会社が沢山存在する。その多くはクライアントワーク(企業向けにビジネスを展開している支援会社)だ。あなたがキャリアとしてマーケターになることを考えているのであれば最も確実なのはマーケティング専門の支援会社に入るという選択肢だ。

一方で企業向けの支援会社は特定領域に特化している会社が多いことに留意する必要がある。ここでもマーケティング職を事例に説明しよう。

マーケティングは商品企画からプロモーションまでその対象は多岐にわたる。また取り扱う対象そのものも洗剤などの消費財から無形のサービスまで幅広い。その1つ1つに領域に対し、商品企画コンサルティング、SNS、マーケティングリサーチ、SEOコンサルティングなど特定領域に特化して専門サービスを展開している会社が数多く存在している。

これらの会社では扱う領域が特化しているためマーケティング全般を学ぶことはできないが、そのかわりに特定領域に集中して仕事ができるため該当分野の専門家になれるメリットがある。


多くの場合はユーザ向けの商品・サービスを展開してる事業会社に入社しても最初から製品全体のマーケティングを担当できるわけでない。最初は先輩や上司について特定領域の担当としてキャリアをはじめることが殆どである。むしろ最初は支援会社で働いたほうが特定領域については専門性を身に着けやすいので転職では有利なることが多い。

支援会社に新卒入社して3〜5年働くと分野内の特定領域において一人前になるので、業界のプロとして同職種での転職はいつでもできる状態になる。そこで改めて事業会社に行きたければそのときに転職するという選択肢をとることができる。

基本的には同職種×異業種の転職の難易度は高くなく、転職先で持ってないスキルを補完する役割で採用されることが多いので転職後も活躍の機会が大いにある。転職後はまずは最初の会社で培った経験・スキルを活かして一定成果を残したあとに徐々に仕事の幅を広げていけば良い。

マーケティング職を事例に上げたがこの方法はクライアントワークが存在する職種全てで使えると思って良い。例えばデザイナーや人事なども専門の支援会社が存在するので職種を決めることができる。

少し前に大手自動車において調達を希望したが人事に配属されてしまった新卒の話がnoteにアップされていたが大企業の一括採用ではこのようなことは日常茶飯事である。このようなリスクを受け入れることができないのであれば調達・購買に特化したブティックコンサルに就職して自動車会社に転職すればよい。

大企業→ベンチャーはいつでも転職できるがベンチャー→大企業は難しいから最初は大企業に入るべきという言説を聞いたことがある人は多いかもしれない。しかしベンチャーとこれらの支援会社は全く違うタイプの会社であるので心配はいらない。

ビジネスモデルで勝負する拡大中のベンチャーに新卒で入ると何でも屋になりやすく専門性が身につきにくい状況に陥りりやすいが支援会社に入社した場合はその会社の特定分野の専門性で社外でも勝負できる人材になれるからだ。新卒で入った会社が小さいから有名大企業に転職できないなんてことはなく、大企業が求めるスキルと経験を保有していれば転職はできる。

経営コンサルを筆頭にコンサルティングファームに就職するのも基本的にはこの戦略と同等である。どのプロジェクトにアサインされるかは運になるが経営コンサルティングを学べるということは就職した時点で確約されるからだ。

それでは希望する仕事の会社が職種別採用もしていない(または全て落ちてしまった)、更に希望する職種で支援会社が存在しない場合は配属を運に任せるしかないのだろうか?そんなことはない。

このケースでも100%配属を確約することはできないが希望部署に配属される方法はいくつか存在している。まず大事なのは入社先の新卒配属の仕組みを理解することだ。例えばトヨタの2019年の採用実績は1,165名もいるので普通にこれだけの人数を採用して一人一人の適正をきめ細やかにチェックして配属を決めるなんてことは不可能である。

そのため多くの大企業では出身学部を参考に採用をした後に研修で適性を見極めて配属をすることになる。あなたの希望は一応はヒアリングされるかも知れないが大企業の人事で個別の事情や熱意、能力をきめ細かく見てもらえるなんて期待してはいけない。

あなたが希望の配属先に優先的に選んでもらうには十把一絡げ状態から抜け出す必要がある。会社で配属の意思決定を行う人があなたのことを認識してくれている状態にし、あなたがどのような人材で、あなたが希望する部署で働くことが会社にとって最も良い判断だと思ってもらえる状態を作ればよい。

その実現法としておすすめしたいのは相対エリートとして入社することだ。あなたが自動車メーカでの調達部門を希望していたとしてトヨタ自動車とスズキ自動車の両方に内定したとしよう。

好みもあるだろうが一般的に考えてトヨタ自動車のほうが会社規模も給料も高いのでトヨタ自動車に入社する人が殆どだろう。これは内定者の平均レベルはトヨタ自動車のほうが高くなることを意味している。そしてここで重要なのは、あなたがトヨタ内定者の中でどのような立ち位置にいるかだ。

あなたが内定者の中でもトップクラスの評価を受けているかどうか?これが大事だ。トップクラスとはここでは上位1割を指す。この上位1割で内定してるようであればあなたは会社と交渉できる可能性は高い。

大学入試では首席合格でもビリの合格でも入ってしまえば同じ学生なので入試のときの点数で学生生活で大学からの扱いに差がつくことはない。残念ながら会社においては内定時点の評価によって配属される部署やその後のキャリアに大きな違いが出る。入社時点で会社から注目を浴びている学生は配属でも優遇され良い部署・良い上司がいる部署に配属されることが多く(これはイコール希望部署に入れるという意味ではない)、それ以外の学生は会社の人員割り振りの都合の影響を大きく受けて新卒ガチャになりやすくなる。

だからあなたがもしトヨタとスズキに内定してトヨタではその他大勢の内定者の一人だがスズキでは上位1割に入れるならスズキに内定したほうがよいキャリアを歩める可能性は高い。

では上位1割の内定者に入ってるどうやって知るのだろうか?と思った方も多いと思う。それは内定後に人事部に交渉を依頼すればいい。そもそも交渉に応じてもらえない場合は残念ながらあなたが中から下位で評価でその他大勢の一人としての内定者扱いになっていると思ったほうがいい(またはそのような交渉や融通がきかない会社だ)。

この場合は配属ガチャを覚悟して入社したほうがいい。さて交渉のテーブルにつけたとしよう。交渉は選択肢の多いほうが有利なゲームである。あなたがどうしても会社に入りたく、企業側が辞退されても仕方ないと考えているのであればあなたにとって不利な状況だ。

逆にあなたは希望が通らないなら辞退してもよいと思っており、企業側が辞退されたら困ると思っているのであれば有利なのはあなたのほうだ。だから「自分は◯◯部門で働きたい。他社は◯◯部門で配属してくれると言ってくれている」と伝えればよい。

ここで内定を辞退するなど相手の答え次第でこちらがどのような行動を取るかについてはいっさい伝える必要はなく、自分の希望と状況を伝えるだけで十分である。辞退するなど伝えしますとあなたの評価がそこまで高くない場合「では辞退してください」と逆に返されてしまうリスクが高い。そして回答次第であなたがどれくらい可能性があるかが大体わかる。

また明確な約束をされない場合でも人事に本人が強く規模する部門がどこかを印象を残すことができる。またもう少し小さい会社、数百人規模の会社であれば人事ではなく社長と直接話す機会もつくることもできるだろう。

次にあなたがやるべきことはあなたがその部署に相応しいことを配属前に示すことだ。あなたがその部署に入るべき理由をつくるのである。通常会社はできればあなたの希望を通したいと思っている。

ただしそれはあなたのキャリアを思ってではなく、モチベーションが高く仕事をしてもらったほうが生産性が高く成果がでやすいからだ。つまり配属する側からすればここに配属したら活躍できるという確証があれば優先的に配属しない理由はない。あなたが何がしたいかではなくあなたがそこに配属されることが会社にとってどのようなメリットがあるかが大切なのである。

長期インターンはあなたがその仕事をするべき理由を会社に伝える良い方法の1つだ。特に会社が数百名程度までであれば長期インターンであなたが希望部署で活躍して適性があることを示すことでその部署に配属される可能性は非常に高くなる。

新卒一括採用を行っているような旧来の会社では長期インターンを受け入れていない会社も多い。この場合に重要になるのはわかりやすい社外での実績を見せることである。これは理系の場合にとくにやりやすく、例えばAI部門にいきたいならAIの研究室出身で論文を発表しているなど、あなたがその分野で活躍できる証拠を見せる。

同時に証拠を作るだけでは駄目で必ずそれが会社に伝わっている状態にしなくてはいけない。そこで先程の交渉と組み合わせる。あなたの実績を交渉の場でアピールすることで会社側に納得感をもたせることができる。

大企業の人事がうちには◯◯の専門家がいなく困ってると言ったらその◯◯の最先端を大学院で学んでいた学生が新卒で今年入社していて全く関係ない部署に配属されいたなんて笑い話があるが、採用人数が多い場合人事が学生ひとりひとりの専門分野や能力を覚えてるとは期待しないほうがいい。だからこそアピールして伝えることであなたは頭一つ抜けることができる。

配属の意思決定がどのように決まるかについてはおおよそ適性と人員の状況を見て決めるというのが一般的であるが会社ごとに温度感はかなり違う。比較的希望が通りやすい会社もあれば全く通らない会社もある。

これらの情報は内部の従業員に聞くのが一番早い。OB訪問や就活会議などの情報から実際の意思決定プロセスについてリサーチしてほしい。社員本人や本人の同期の配属がどのように決まっていったかを聞けば大体わかる。

配属ガチャをガチャにしない

最後に希望する職種に配属されることが必ずしも良いことだとは限らないという話をしたいと思う。それは[あなたがやりたいことが、あなたに向いているかどうかをあなた自身がわかっていない][あなたにもっと向いている仕事があるかも知れない]の2点に集約される。

あなたが理系大学院生で研究が性に合っていると実感しており、就職後もR&Dを希望するようなケースでは希望職種を絞るのはとても良いことだ。実際に経験した上で自分に合っていると感じているからだ。

理系で自分の専攻と就職が直接的に結びつく仕事をしたい人には大学院進学を強く勧めたい。就職が学部卒よりも有利になるという点もあるがそれ以上に研究を通して自分が進もうとしている道に適性があるかを働く前にある程度予想することができるからだ。

就職先は所属する学部学科に影響を受けやすいが文系でSEやエンジニアとして活躍している人、反対に理系大学院卒でマーケティングや経営コンサルティングの世界で活躍する人も沢山いる。

18歳時点で決めた学部の延長線上に自分の適職がある可能性は決して高いとは言えない。だからあなたが今やりたいと思ってることが向いてることなのか、ま生涯やりたいことなんて現時点ではわからないというスタンスに立ってファーストキャリアを選んだほうがよい。

自分のやりたいことを選んだ結果、才能を発揮できない仕事を選んでしまって苦しむ学生は多い。あまりに向いてない場合はそもそも採用されないことが多く、仮に入社してもすぐに失敗したと気づけるが中途半端に適性がある場合そこそこ仕事ができる普通の人に落ち着くケースが多い。

またここからがポイントだが、あなたが何のしごとに向いているかは実は会社の方が分かっていることが多い。毎年新卒の学生を様々な部署に配属させて数年後のどうなったかを大量に見ているからだ。だからもしあなたが就きたい職種について特別強い気持ちや理由が無い場合は会社に配属を任せたほうが上手くいくケースが実際は多い

就活ではじめて色々な職種を知ってなんとなくこの職種がいいかなと決めたケースなどが典型だ。注意点としては人事があなたの適性を配慮して配属を決めてくれるかはわからないことである。

大量採用の場合は適性よりも会社の事情を優先されて人の足りないところに配属されることも多い。そのため会社の知見に任せて配属先を決める場合は先程解説した相対エリートとして入社することが必須になる。配属ガチャは一見ネガティブにみえるが会社があなたの適性や将来を考えて配属してくれた場合に限り、それは仕事経験のないあなたが決めるよりも良い結果になることが多いのである。

だから自分で配属を決められない=NGと考えるのではなく、会社に自分の適性を見極めてもらって適性のある場所でファーストキャリアを走らせてもらうという選択肢もあることを知っておいて貰えたらいいと思う。身も蓋もない話だがキャリアの8割は運である。多くの成功者にヒアリングしても殆どの人は就活の頃に描いていたキャリアと全く違うキャリアで成功していることが多い。


会社ガチャがあることも忘れない

今回は新卒ガチャのうち配属ガチャを回避する方法について解説した。今回書かなかった会社ガチャも配属と同じくらい重要度は高い。これからの時代は間違いなくキャリアアップのための転職が当たり前になってくる。

そうなると最初の会社でどれだけ良質な経験が積めるかどうかがキャリア上これまで以上に大切になる。この会社ガチャ問題についても需要があればいずれまた別の記事で解説したいと思う。


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