保有資格のCPE(継続専門教育)
本日は、継続専門教育(CPE)についての話題です。
継続専門教育(CPE または CPD)は、資格取得後も専門知識などを継続的に習得し、スキルアップを図るための教育制度です。
私は日本の公認会計士、税理士、米国公認会計士(USCPA)などの資格を有していますが、これらの資格に関する継続専門教育(CPE)についてご紹介したいと思います。
USCPAのCPE(Continuous Professional Education)制度
USCPAのCPE制度の起源については(少し調べてはみたものの)正確には分からなかったのですが、1970年代の後半から1980年代にかけて原形が出来上がったのではないかと推測されます。
なので、日本の公認会計士や税理士のCPE制度は、USCPAのCPE制度を参考に導入されています。
私のように日本に住んでいるUSCPAの場合、CPEの取得方法としてはAICPAやNASBAの指定するCPE プロバイダーなどのコースを受講することになると思います。
私がライセンス登録をしている州では、ライセンス更新のためには3年毎に120単位のCPEが義務化(1年間の最低履修単位は20単位)されています。
上記の単位には、3年に1回取得が必要な州の倫理(Ethics)の単位(4単位)が含まれています。つまり、合計120単位以上取得しても、州のEthicsの単位を履修していないと義務違反となってしまいます。
なお、「3年間で120単位、1年間で最低20単位」というのは、日本の公認会計士のCPE(現在はCPDとなっています。)と同じです。
また、USCPAのCPEの報告期間(事業年度)は暦年(1月~12月)となっていますので、今月末までに最低20単位以上を履修する必要があります。
私の場合、毎年時間のある夏頃には概ね単位を取り終えてしまいます。今年は既に60単位近くの単位を取得したので履修義務を達成しています。
公認会計士のCPD(Continuing Professional Development)
(日本)の公認会計士や税理士には、最近まで制度としてのCPEはありませんでした。少なくとも、私が公認会計士や税理士に登録した頃(20世紀)にはCPEはなかったのです。
もちろん、公認会計士や税理士の場合、(特に首都圏付近では)集合研修の機会は以前から数多くあり、多くの会員が参加していました。しかし、「その道のプロなのだから、(研修義務など課さなくても)自分で日々研鑽を積めばよい」という考え方が根強かったように思います。
一方、公認会計士の人数が急増したことや、業務内容が複雑化していく中で、公認会計士の仕事も多様化していきました。そうなると、「公認会計士としての質」を一定程度担保するための「制度」が必要となります。
そこで、(米国公認会計士のCPE制度を参考に)公認会計士協会の自主規制として2002年から会員(公認会計士)にCPEが義務化され、2004年4月から法定義務化されました。ということで、今年度でCPE(現在はCPDとなっています。)の法定義務化から丸20年を迎えたことになります。
公認会計士のCPE制度は当初、「年間40単位の履修」という単年度要件のみの義務化でしたが、現在は「直近3事業年度で合計120単位以上」のCPE単位を履修すること(1年間の最低履修単位は20単位)が義務付けられています。また、必須研修単位も細かく規定されており、職業倫理は最低2単位、税務は最低2単位、法定監査業務に従事する会員は、「監査の品質及び不正リスク対応」6単位(但し、不正事例の研修が2単位以上)の単位取得が毎年義務づけられています。
CPEの単位の取得方法には、公認会計士協会が主催する集合研修会やE-learning、自己学習(仕事に関連した本を読んだ時間の半分の時間が単位として認められる)、著書の執筆、 研修会での講師、公認会計士協会の委員会活動(但し上限あり)などがありますが、私自身の中でウェイトが圧倒的に高いのがE-learningです。
特に、コロナ禍(集合研修がほとんど開催されなかった時期)においても、E-learningを利用して必要単位数を満たすことが可能でした。公認会計士協会のE-learning(現在は年会費に含まれているので無料)を利用しているのは、Big4などの大手Firmに勤務していない会員が中心で、大手Firm勤務者の場合は、Firm独自の研修でCPDの単位を満たすことができます。
公認会計士のCPDの事業年度は毎年4月から翌年3月までですが、時間のある時に余裕を持って単位取得しているので、今年度も研修義務達成済です。
なお、公認会計士のCPD義務未達成のペナルティはかなり重く、最悪のケースでは登録抹消になります。
税理士会のCPE(継続研修)
税理士会では、2015年の税理士会の会則変更により、研修が義務化されました。税理士会のCPEは、USCPAや日本の公認会計士のCPEを参考にして導入したと考えられます。
ちなみに、「公認会計士協会」や「税理士会」は強制加入団体です。これらの会に加入しないと、公認会計士や税理士という名称を名乗ることができず、また、それぞれの独占業務(会計監査、税務代理・税務相談等)を行うことができません。
税理士会の事業年度は毎年4月から翌年3月までで、1年間に36単位の研修義務が課せられています。また、日本税理士連合会(日税連)、税理士会(私の場合は東京税理士会)、税理士会傘下の所属支部で行われる研修は基本的に無料です。
税理士会の研修はもともと集合研修(会場研修)が前提だったので、CPEが義務化されても、会員の研修義務達成率はかなり低いものでした。
ところが、新型コロナにより会場研修が激減した時期にマルチメディア研修(E-learning)が加速しました。令和6年時点ではマルチメディア研修がかなり充実し、会員の研修義務達成率もかなり上がってきているようです。
ちなみに、税理士会のCPE(年間36単位)義務未達成に関しては、現状では(公認会計士のような)罰則がないので、努力義務に近いものになっています(令和6年12月現在)。
ただし、日本税理士連合会の税理士検索で氏名検索すると、税理士の事務所所在地や直近年度の研修義務(未)達成状況などが(誰でも)検索できますので、研修義務を達成していないと、あまり見栄えが良くないと思います。また、将来的には税理士法に研修義務が盛り込まれる可能性は十分あると思われます。
税理士会の研修単位も時間のある時に取得していますので、今年度も既に義務達成済です。
CPEに係る研修単位の互換性
USCPA、日本の公認会計士、税理士などの複数資格を保有していると、それぞれのCPE(研修義務)を満たさなければならないのですが、これらの資格間では一定の単位互換が認められています。
最初に、公認会計士と税理士の研修単位の互換です。
公認会計士 → 税理士の単位互換(公認会計士協会で取得した単位が税理士会の単位として認められるか)です。
これについては、税理士会が認める税務に関連する集合研修の単位のうち最大18単位までは、税理士会の単位として認められます。
つまり、(税理士会の研修義務である)36単位中18単位までは公認会計士協会の(集合)研修の単位で代用できることになります。
注意すべきは、公認会計士協会のE-learningで税務に相当する研修を受講しても、税理士会の単位として認められないということです。
一方、税理士 → 公認会計士の単位互換(税理士会で取得した単位が公認会計士協会の単位として認められるか)です。これについては、集合研修とマルチメディア研修で違いがあります。
集合研修の場合、(研修日時や研修テーマなどを簡単なフォームに記入する必要がありますが)2単位の研修であれば2単位の研修として認められます。
税理士会の研修は「税務」がテーマなので、(公認会計士協会の)研修テーマとしては問題なく認められます。
一方、税理士会のマルチメディア研修の場合、公認会計士協会では「自己学習」扱いとなり、さらに研修単位も半分(例えば、2単位 → 1単位)とされます。加えて、研修内容(感想文)を履修した研修毎に書かなければならないといった手間もかかります。
最後に、USCPA → 公認会計士の単位互換ですが、基本的に税理士会のマルチメディア研修の扱いと同じになると思われます。つまり、研修単位が半分になり、かつ、研修毎に(英語ではなく日本で)感想文を書くという手間が必要になります。
単位互換はあるものの
上記のとおり、3つの資格の研修単位の間には一定の互換性はあるものの、互換手続きがかなり面倒です。
なので、私の場合はそれぞれの資格単独で研修単位を満たすこととし、単位互換の手続きは採用していません。
比較的時間のある時や休みの日などに単位取得をすればそれほど負担や手間はありませんし、日々の仕事に関連する内容や興味のある研修を選べば自己研鑽が図れます。
本日は私が保有する資格のCPE(継続的専門研修)に関する話題でした。