【私見】USCPA 出願州の決定
前回までのポイントは、
❶ 州によって受験要件やLicense取得要件が異なる。
❷ (日本人受験生は)まずは受験要件を満たすことだけを考える。
というものでした。
USCPA試験は全米統一試験ですが、(受験要件が州ごとに異なるため)出願は州に対して行います。
そこで今回は、「具体的にどの州を選べばよいのか?」について、私自身の見解をお話しします。
出願州の決定
日本のUSCPA予備校の案内を見てみると、概ね以下の5州(准州含む)が出願候補として挙げられているようです。
・アラスカ州
・モンタナ州
・ニューヨーク州
・ワシントン州
・グアム(准州)
以下、各州の学歴要件を順に見ていきますが、結論として、アラスカ州 または ニューヨーク州がお勧めと思います。
アラスカ州(お勧め度№1)
4年制大学の卒業が条件となります(但し、大学4年生であれば受験できるケースはあります)が、総単位数の下限がなく、また、必要な会計単位が15単位と要件が緩やかです。
会計単位(15単位)は科目名称を問わないので、大学1・2年生で履修するLower‐Divisionの科目も認められると考えられます。したがって、経営系・商学系出身の方や、(会計単位を比較的多く履修している)経済系の学部出身者であれば、追加単位不要でUSCPA試験を受験できる可能性があります。
また、(経営系・商学系の学部以外の方で)不足単位が生じる場合、追加で単位を取得する必要がありますが(後述)、その場合にも(金銭的)負担が最も少ないと考えられます。
ニューヨーク州(お勧め度№2)
4年制大学における取得単位が120単位以上、かつ、会計単位が12単位以上必要です。
会計単位は一見すると(アラスカ州より)少ないのですが、❶Financial Accounting(財務会計), ❷Auditing(監査論), ❸Managerial Accounting(管理会計), ➍Taxation(租税法)が具体的に指定されています。
❶と❷の科目については、Upper-Divison(学部3・4年生で履修)が必要で、また、❷と➍については、そもそも経営学部や商学部出身者でも履修していない方も多いと思われるので、(少ないながらも)追加単位を取得する必要性が生じると考えられます。
逆に言えば、大学(学部)時代に上記の科目(単位)を履修済で不足単位がない方であれば、ニューヨーク州はお勧めです。
なお、経営系・商学系学部出身以外の方は、不足単位が(必然的に)12単位以上発生すると考えられますが、他の州に比べると追加で取得する必要がある単位数は少な目であり、負担は小さいと考えられます。
なお、本筋からは離れますが、「アラスカよりもニューヨークの方が見栄えが良いかな」という理由で選ぶのもアリかもしれません。結局のところ、日本人にとってUSCPAの価値のかなりの部分がブランド価値なので…。
モンタナ州(敢えて選択する理由なし)
取り上げた州の中では唯一学位を前提としないという特徴がありますが(高卒でも可能)、Upper Division(学部3年生・4年生レベル)の会計単位が24単位必要(ニューヨーク州が指定する❶~➍の会計単位を含む)なので、実際のハードルは結構高目です。
つまり、経営学部や商学部出身の方でも追加取得単位がやや多くなるように考えられます。
したがって、「アラスカ州」、「ニューヨーク州」の代わりに敢えて選択する必然性は薄いように思います。
ワシントン州(ライセンス取得の際に検討すれば十分)
総単位数が120単位、会計単位:24単位、ビジネス単位:24単位が必要です。
ビジネス単位(24単位)の要件は比較的緩やかなものの、会計単位は15単位がUpper Division(学部3・4年生で履修する科目)なので、経営系・商学系の出身者でも比較的多目の不足単位が生じる可能性はあります。
さらに、人文系や理系学部出身者の場合、会計単位に加えてビジネス単位の不足単位も発生する可能性が高く、追加単位取得のための費用が相当嵩む可能性もあります。
このように、受験に際して不足単位が多く発生する可能性のある州は、あまりお勧めできません。
なお、License取得要件が最も緩やかなのはワシントン州なので、ワシントン州のLicense取得を考慮してワシントン州を受験州として選ぶ受験者もおられるようですが、個人的にはあまりお勧めしません。
理由は(前回述べたとおり)Licenseが必要となった段階でTransferを考えれば良いためです。
グアム(准州)→ 現状、選ぶ理由なし
総単位数が120単位、会計単位:24単位、ビジネス単位:24単位が必要です(ワシントン州と同様)。
ビジネス単位(24単位)には、Business Law(会社法)、Finance(財務)等が指定され、会計単位はモンタナ州と同様の科目が指定され、Upper Division(学部3・4年生の履修科目)で24単位以上揃える必要があります。
したがって、経営系・商学系の出身者でも(アラスカ州やニューヨーク州などと比較して)不足単位が多目に生じる可能性があります(人文系や理系出身者の場合、不足単位がさらに多く発生すると思います。)
なお、グアムの場合、かつてのCertificate(証明書)の名残で、実務経験がなくても名刺などに”CPA Inactive”と表記できます(Inactive Lisenceのコストが別途$75 / 年かかります)。
これを理由にグアムを選ぶ方もおられるようですが、誤解を恐れず率直に申し上げると、このような名刺表記にはメリットはない(むしろデメリットの方が大きいかも?)と思います。
次回は、受験要件の確認と不足する単位の補い方です。