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サッカールーツを辿る旅のススメ【長野編】

人気(ひとけ)のない薄暗い駅のロータリーで一人、途方にくれていた。3年前の5月夜7時、わたしは長野県の平田駅にいた。土地勘は皆無

サッカールーツを辿る旅はここから始まった。きっかけはFacebookで知り合った大学サッカー部員の話からだった。高校時代、松本山雅ユースだった彼にはよく通っていた食堂があった。定食の写真はボリューム満点で野菜たっぷり栄養バランスもとれていてすごく美味しそうだった

詳しくは書けないが彼は事情があってユースを途中で離脱し、長野から故郷へ帰ることになった。プロを目指していた中、途中でユースを辞めなければならなった当時の心境を思うと居たたまれなくなる。当時、心のよりどころだった食堂の店主夫妻には地元に帰ってからも毎年手紙を書いているという

彼が敬愛する松田直樹の所属チーム松本山雅、アルプスの山々を身近に感じるスタジアムにひときわ大きな緑のフラッグたちが舞う。アルウィン(スタジアム)のサポーターが大好きだという彼の話を聞いているうちに長野を旅してみたくなった

彼にそう告げると、大学サッカー部の試合前の集合写真の画像を託された「この写真を丸山夫妻に見せて、僕が元気でいることを伝えてほしいです」昔から観光名所より地元の人が慣れ親しんでいる、日常が感じられる場所にわくわくする。そして細かな計画は立てない。目的はたった2つ

1.丸山食堂へ行き、彼が元気にサッカーを続けていることを店主に伝える2.アルウィンでサッカー観戦

スケジュールを詰めすぎて消化できなかった時、焦りと悔しさしかないので旅の目的はなるべくシンプルに。ゆっくり立ち止まり、寄り道する時間を大事にしている。宿泊先だけは事前に予約してあとは行き当たりばったりの旅

案の定、冒頭の不測の事態が起きた。丸山食堂に向かうべくバスに乗るはずだった。しかし夜7時前にすでに駅前発のバスがなかった。バスロータリーに貼ってあったタクシー会社に電話。「え?今その駅に回せるタクシーないわ~○○タクシー(他社)の連絡先教えるからそこに聞いてみて」あらら、、、夜7時過ぎに駅で取り残されるなんて想定外。3年前、長野でUberという選択肢はもちろんまだない。今はどうなんだろう、ぜひあってほしい(笑)

紹介されたタクシー会社から奇跡的に車の手配ができた。運転手さんに頼んで松本山雅のグッズが買えそうなお店に寄ってから丸山食堂に到着。(帰りも丸山食堂まで迎えに来てください、そこはしっかり頼んでおいた)

『丸山食堂』松本山雅サポーター、長野のサッカー関係者には有名なお店。気さくな奥さんと厨房で忙しそうに調理するご主人、昔ながらの定食屋さんの佇まい。その日は阪南大学出身のサッカー選手と偶然相席になった

約束を果たすため彼から託された写真を奥さんに見せると、目を細めて「ごめんね、目が悪くてその画面(スマホ)じゃ小さくて見えないわ。でも元気そうでよかった」定食を食べながら彼の高校時代の話、地元に帰る前にお母さんと食べに来ていたこと。彼はいい時も辛い時もここでボリューム満点の食事とご夫妻やお客さんたちに励まされ支えられていた。そう思うととても温かい気持ちになった

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お盆に載りきらずサービスの一品がはみ出している(笑)

(2つ目の目的、スタジアムのお話は観戦をテーマに書く時のためにとっておくのでここでは省略)

旅を終えて彼にメッセージを送ると、現像した写真を後日ご夫妻に送ったそうだ。その後の彼は元から膝に大きな怪我を抱えながら大学4年間部活を続け、卒業後は地方リーグ、JFLでプレーしたのち今年サッカー選手を引退。新たな人生をスタートさせている

サッカーが好きだからこそつながった人との不思議な縁。そのルーツを辿る旅は、サッカーだけに夢中で取り組んだ彼の歩みが確かに刻まれていた。そして支えてきた周りの人々の温かさを直に感じることができた

これを機に年に一度は必ず旅をすることにしている。もちろんサッカーつながりの縁(ゆかり)の場所へふらっと出かけていく

ジャーナリスト池上彰さんはFOOT×BRAINの中でサッカーは「世界の言葉」と言った。国や言語を越えたグローバルな存在であるという意味。そしてもうひとつ、サッカーが自分の知らなかった世界を開く存在である。この旅を通じてそんな風に感じることができた

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Sawako Akahoshi
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