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一部修正『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-83

読了目安:約6分(全文2,306文字)※400文字/分で換算

*キャリコン・技能士の学科・論述・面接試験対策を希望される方は

強運の神社

二人は神社の鳥居の前で軽くお辞儀をし、参道を歩いていた。

「へー、おっさん意外とこういうのしっかりやるタイプなんだ」

「親方こそ、むしろ絶対やらない主義だと思っていたから、驚いたわ」

いつも通り、軽くお互いをディスりながらも意外と気の合う二人。

「へー、この辺にこんな広い境内があるの意外ー」

「そうだろう。意外と穴場なんだよ。俺も最初はびっくりしたからな」

「あまりこの辺、来ないからなー。来たとしてもあの有名な商店街ぐらいだし、ここまで足を運んだことはなかったなー」

「地元の人達はもちろん知っているけど、都内に住んでいる人でもそうそう知らないだろう。毎年4月にはつつじの花が咲き誇って、お祭りもあるんだ」

「へー、なんかそう言われたら咲き誇りそうな気がするね」

「根拠は」

「・・・勘」

「・・・はいはい、勘ね。それより親方この神社が強運のスポットだってのは知っているか」

(勘のくだり流しやがったな)「強運?えー、何それ。先に言ってよ。なんで教えてくれなかったの」

「・・・聞いてたら何か変わるのか」

「そりゃそうでしょー。入る前からもっと気合い入れたり、参道歩きながら気合い入れたり、もちろんお参りする時も気合い入れるけどね」

「気合い、気合いうるさいな。そうか、結局、何も変わらないってことね」

「はあ、聞いてましたかー。全てにおいて気合い入れるって言ってるんですけどー」

(はあ。もうこいつと話してもラチがあかない)「そうですねー。気合いって大事ですもんねー」

「分かってくれればいいんだよ、おっさん」

(まあ、何ひとつ分からなかったけどな。ただ、親方の「気合い」の使い方がおかしいってのだけは分かったよ)

「ん、今なにか、言いましたかー」

「いや、何でもない」

「そんなことより、なんで強運スポットなの」

「この神社は戦災や震災など幾多の災難を免れたが、現存しているんだ。東京空襲の時もこの辺一体が焼け野原になってしまったが、この神社だけは残っていたらしい」

「へー、それで強運なのか。これは気合い入りまくりだね」

「そうだろう。気合いも入りまくるだろう。それに東京十社にも選ばれた由緒正しい神社なんだ」

「へー、あの」

「あの、とは」

「いやー、まさか東京・・・にも選ばれるとはね」

「え、なんだって。東京・・・」

「・・・東京・・・ね」

「いや、肝心なところが聞こえないんだけど」

「あー、お社見えたね。行こう行こう!」

「で、東京・・・何だって」

「しつこい!こっちは気合い入れまくってるんだから、ちょっと黙ってて!」

(気合いとは関係ないだろうに。誤魔化したな)

二人はお社の前で並び、それぞれお賽銭を入れて、柏手を打ち、願いを呟いた。

「・・・今度の試験で合格できますように」ワカバが必死になって何度も祈っている横でイチジョウも手を合わせて祈っている。

「・・・よくなりますように・・・」イチジョウの祈りが少しだけ聞こえてきて、ワカバはこう思った。

「ははーん、おっさん、いつも私のことディスってるくせに、ちゃんと私のために祈ってくれてんじゃん。『私のロープレがよくなりますように』って」

「じゃあ、親方行こうか」

「おっさんもいいとこあるじゃん」とイチジョウを小突いたが、イチジョウは「ん?」と何のことかさっぱり分からないという表情をしていたが、ワカバは気づくこともない。

「おっさん、会場ってここから近いの」

「まあ、5分ぐらいだろ。早歩きでな」

「競歩かよ。朝から競歩きっつー」

「いや、嘘だから。ゆっくり歩いてもそのぐらいだから」

「まあ、何でもいいや。気合いも入ったし、そろそろ行こうか」二人は境内を出るときにもペコリとおじぎをして、会場へ向かった。

「あれ、おっさん、スタート地点に戻ってない」

「そうだ。振り出しに戻るってやつだ。ここからすぐだ」

「よし!気合い入りまくってるから行くか」

「ちょっと待て待て。気合い入れすぎじゃねえか・・・いや、むしろ気合い入れといた方がいいな」

「ん?何それ」

「あとで分かる」

少し歩くと、目の前に急坂が現れた。

「おっさん・・・結構急じゃない」

「そうだ。かなり急だな」

「だよね。見間違えかと思ったぐらい急だね」

「ああ、これ見て急って言わないやつの気がしれないだろ」

「でもこれだけ急だと気合い入るわー」

(もう『急』って言いたいだけだろ)とにかく二人は気合いを入れて急坂を登りきった。

「いやあ、ホントこれほど急な坂は初めてかも。でもちょっと疲れちゃった」

「ああ、俺も毎回ここは疲れる。距離は短いのにとにかく急だからな。でも見ろよ。もう会場は目の前だ」

「えっ、ここ」ワカバは会場の建屋を見てこう思った。

(これは、自宅のような、変わった建物のような、見方によってはオシャレなような、うーん、ここって何?)

「とにかくまずは入ろう・・・えーと、ここだ、ここ」会場の扉の前に立つ二人。

「ここでいいのね。普通の自宅みたいだけど」

「それ絶対本人には言うなよ。よし!ここからは俺も気合い入れなきゃな・・・でもやっぱ嫌だわー。親方もう一回、神社でお参りしてくるか」

「えー、いやだよ。この坂もう一回登るのは。ただでさえ、気合いのメーターかなり減ったってのに」

「会場着く前に気合い減らしてるんじゃないよ。まあ、仕方ない。じゃあ、しょうがないから行くか。ほんとにしょうがないけどな。しょうがないけど、俺は行くぞ。しょうがない・・・」

そんなイチジョウを無視して、ワカバがインターホンを鳴らした。

次回の更新は2023/12/11予定です。→すみません。12/12更新予定に変更します。
→【お詫び】再度更新延長(更新日未定です)

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