『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-76
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質問
「な、なんでしょうか、フタツギさん」
慌てるムグルマにフタツギがすかさず質問を投げかける。
「最近、勉強会の様子はどうかね」
「ど、どうかね、というのはどういうことでしょうか」
「失礼。ざっくりし過ぎたかな。以前のムグルマさんならすっと答えてくれていたはずだけど、何か変わったことでもあったのでしょうか」
「は、はい、そういうことなら、先ほどサオトメくんからもお伝えした通り、何もありません。大丈夫です」
「そうですか。なら良いのですが・・・」
「な、何かあったのですか」
「いや、最近ここの勉強会の良くない噂を耳にしたもんでね」
「よ、良くない噂と言いますと」
「何でも元試験委員の資格保持者が自分の立場を利用して、参加している受験生に無理やり受験させたり、勉強会から抜けたりしないように圧力をかけていると、ね」
「い、一体、誰がそんな根も葉もないことを・・・」
「そうなんだよ。この勉強会で元試験委員と言ったら、ムグルマさんしかいないからね。私もしばらくは無視していたんだけど」
「けど、どうしたんですか」
「いや、これもあくまでも噂だと思うんだけどね。実はヤシロさんの勉強会でも全く同じような話を聞いたものでね」
「は、はあ、ただの偶然でしょう。そもそもただの噂ですから、信ぴょう性もありませんよ」
「そうなんだよ。だって、ヤシロさんの勉強会でも元試験委員といったらムグルマさんしかいないからね。何かの間違えなんだろうと思っていましたよ」
「全く困ったものですね。どこにでも火のないところに煙を立てる輩もいますからね」
そういってムグルマはイチジョウを睨みつけた。
「それで今日イチジョウくんがここの勉強会に参加すると聞いたので、ついでその噂について、ムグルマさんに確認しようと思って来たわけです」
「そ、そうだったんですか。それはちょうど良かったです」
「『ちょうど』というのは」
「はい、最近ここの勉強会はサオトメくんにお願いしていて、私もあまり参加していなかったんです。もちろんフタツギ先生がいらっしゃると先に知っていれば、どのような予定があっても馳せ参じます」
「そうですか。それは良かった。たまたまムグルマさんがいらっしゃる時に私も来ることが出来て本当にラッキーでした。もし今日いらっしゃらなければ、貴重なお話を聞けませんでしたからね」
「貴重なお話?」
「はい、先ほどこのビルの1階のエントランスでたまたま参加していた受験生の方とお話しする機会がありましたね」
「!!??あ、ああ、そ、そうでしたか。それは良かったです。どのようなお話をされたんでしょうかね。でも確か彼女はそれほど参加されてませんから、勉強会のことをどこまでご存知かはわからないでしょうけどね」
「そうでしたか。それは良かったです」
「そうですね。良かったですよね」
「それほど参加されたわけでもないのに、随分落ち込まれていましたから」
「お、落ち込んでいた?!ま、まさか」
「『まさか』とは?ちなみに彼女には気持ちが落ち着くまでエントランスで少し休んでもらっています。ムグルマさん、一体彼女に何をしたんですか」
口調は優しいが徐々にムグルマを追い込んでいく力強さを感じる。そして、今更ながらワカバはこう思った。
(あ、代表ってムグルマっていうんだ。珍しい名字だなー)
まだまだ、フタツギからムグルマへの追求の手は終わらない。
次回の更新は2023/5/9予定です。
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