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(更新版)『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-82
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好かれる男
「しかしおっさんさー、あれだけしぶってたのによく紹介してくれる気になったね」
「まあ、今も迷っているけどな」
「えー、いさぎ悪い!ここまで来てそれはないでしょ」
「まあ、それだけ嫌だってことだ」
「そんなに嫌なの。おっさんがそこまで嫌がる相手って一体、どんな人なのよ。すげー気になるわ」
「だから養成講習に通ってた時の同期だと言ったろうが」
「ほお、養成講習ねー。ん?確かさー、ヨッチャンのお母さんも同期って言ってなかったっけ」
「!!!・・・ん?何で親方が知ってるんだ・・・ああ、そうか、ギャラリーにいる時、ヨツモトさんから聞いたのか」
「まあ、いいじゃない。どこで聞いたって。えっ、それより、今日会う人って、ヨッチャンのお母さんなの?!」
「そうかもしれん。いや、そうじゃないかもしれん」
「何それ、歯切れ悪っ!いつもの誰彼かまわず傷つけるおっさんみたいにバサーっといっちゃってくださいよ」
「何だそのJ-POPの歌詞みたいなフレーズは。まあ、プライベートな話だからな。気になるなら本人に直接確認しろよ」
「何それ、訳わかんない。まあ、いいや、挨拶ついでに聞いてみようかなー」
神社までの道すがら散歩中のゴールデン(レトリバー)が近づいてきて、イチジョウにすり寄っているが、イチジョウは全く気にせず話し続ける。
「おい、親方、他人プライバシーに干渉するんじゃない。おはようございます。お名前は?しーちゃんって言うんですか。かわいいなあ。なでても大丈夫ですか」
飼い主にしっかり許可を取り、イチジョウはしゃがむと慣れた手付きでゴールデンをわしゃわしゃすると、また話し始めた。
「ヨツモトさんから全然聞いてなかったのか、二人の関係性について。前に仲良くなった的なこと言ってなかったか。はい、どうも。またねー」
ゴールデンは物足りなさそうに駆け寄ろうとしたが、軽く会釈をしてその場を立ち去った。
「おっさんって、動物好きなの?何か意外。ちょっと驚いちゃった」
「ん、いや別に好きって訳じゃないけどな。昔から子供と動物だけは何故か寄ってくるんだよ」
「へー、意外中の意外。でもそれっておっさんの勘違いなんじゃないの。よくいるじゃん。『動物に好かれるんですよ私』って自己評価あげようとしてアピールしてくる人。おっさんもそのタイプなんじゃない」
「なんだその悪意に満ちた例えは。俺は別にそんなこと気にもしていないし、逆に予定通り進まないことが多いから、迷惑してるくらいだ」
「へー、本当かな。まだ疑わしい」
「人を疑うのはいいけどよ、さっき親方なでようとしてさけられてたろ」
「・・・いいじゃん別に。私は昔からおいかけても逃げられちゃうタイプだからさー。さっきもなでようとしたら、軽く吠えられちゃったしね。はい、私正直者!」
「まあ、動物も人を見るんだろ(笑)。よく見てるよな、ははは。はい、どうも、おはようございます」
ワカバの疑いをよそに神社の入り口に着くまでの間わずか5分たらずの距離で動物:3なで、子供:高い高い2回という奇跡的なポテンシャルを見せたイチジョウであった。
次回の更新は2023/5/18予定です。
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