『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-60
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やりがいの搾取(2)負の連鎖④
「我々の伝統ある勉強会を負の連鎖だという極めて無礼な発言、理由によってはここを無事に出られませんよ」
「ああ、そうかよ。今の発言だけでも十分にヤバいが、その前においお前、いつからこの勉強会にいるんだ」
怒りの塊のような代表をスルーして、スネオに問いかけた。
「はあ、何でお前にそんなことを答えねえといけねえんだよ」
「いいから答えろ」
「うるせえなあ、受験生の時からだよ」
「やはりそうか。そして今は資格保持者側で参加しているんだな」
「そうだよ、それがどうした」
「ここにいる多くの資格保持者が同じような感じだろ」
「だったら何だよ」
「じゃあ、質問しよう。いつまでここにいるんだ?」
「はあ、いつまでだと・・・そんなもんお前に答える必要があるのか」
「答えるつもりがない、というよりは答えられないんだろ」
「なんだって!こいつ調子に乗りやがって」
「図星か。そうだろうな、それが負の連鎖だからだよ」
「なに!言ってることが分からねえ」
「じゃあ、今度は受験生のみんなに聞いてみようか。もし今後、試験に合格したら資格保持者として参加するよう強制されてるんじゃないのか」
イチジョウがそう言うと受験生がみな下を向いてしまった。
「ええ!そんなこと強制されてるの!それじゃあ、いつまでたってもこの勉強会から抜け出せないじゃん」
ワカバがまた無邪気に声に出してしまった。
「そうなんだ。この勉強会に限らず、ほとんどの勉強会で同じようなことが起こっているはずだ」
「それってもしかして、受験生時代にボランティアでお世話になったから、今度は奉仕する側に回れってこと?」
「まあ、そういうことになるな。しかも、フィードバックする側になったら受験生時代に受けていた「あの」やり方しか認められないだろう」
「それって体育会系の部活に入って、先輩に受けていたシゴキを後輩に強いる構図と一緒じゃん」
「それを伝統という名目で当たり前のように繰り返される。それが現状だ。違うか代表!」
「・・・ここまで来たら言いがかり以外の何物でもないですね。ここにいる皆さんは全員、自らを高めるために参加しているのですよ。何も強制などしていない。皆さん自発的に来ているのです。それを何も知らない部外者が何をいっているのやら。全く呆れて何も言えませんよ」
「自己研鑽ってやつか。主催者側がこんな考えだから、キャリコンがいつまっで立っても食えない資格なんて言われるわけだ」
「なんですって」
怒っている代表を尻目にイチジョウはスネオにまた問いかけた。
「おい、お前フィードバックに対する報酬はもらっているのか?」
「はあ、今の代表の話を聞いてなかったのかよ!ここにいる資格保持者は全員、自らボランティアで参加しているんだ。当然、報酬なんてもらうわけがねえ」
「そうか、そうだよな、キャリコンではそれが当たり前の世界なんだよな・・・」
イチジョウが手を震わせて、怒りをためているのをワカバは見過ごさなかった。
「おっさん、また何かとんでもないこと言いそうだな、これは(ワクワク)」
次回の更新は2023/4/13予定です