『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-73

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ロープレ30回の根拠③

 「念のため確認するが、あんたがこの勉強会の代表、つまり責任者ってことでいいんだよな」

 「今更なんですか。当然ですよ。責任者でもあり、管理監督者ですから、この勉強会に不要な人材は私の意思で排除することもできる。つまり今、皆さんの学習の妨げになっているあなたを追い出すことも可能だということですよ!」
 イチジョウと代表のやり取りに違和感を覚えるワカバ。

 (うーん、よく考えてみたら、ここまで何度も同じようなやり取り続いてるんだよなー。なんだろう、おっさんにしては珍しい。もっと血も涙もない合理主義者だと思ってたから、こんな繰り返しになるような無駄な応答するの何かおかしいなー)
 ワカバの心配というか、考察を横目に代表が周囲を見渡しながら、受験生に牽制する。

 「この勉強会に参加している常連の受験生の方には今更言うまでもありませんが、皆さんが継続して参加できるかどうかは、私の一存で決まっている。この中にまさか私に逆らおうなどという愚かな人間はいないと思いますが・・・、ん、でもそういえば、先ほど資格保持者の誹謗中傷に対して、手を上げた受験生が何人かいましたね。えーと、誰でしたっけ?」
 代表はその受験生を探し、キッと睨みつけるように目を合わせた。そうするとその受験生は驚き、口を塞ぎながら会場の扉を開け、逃げるように小走りで退出した。

 (ああ、さっき手を上げてくれた人だ。よほど居づらかったのかな。おっさんのことかばおうとしてくれたのに、何だか申し訳ない。かと言ってここで追いかけられるような雰囲気でもないし・・・困った)
 ワカバだけでなく、イチジョウやサオトメも退出した受験生を気にかけていたが、当事者でもある二人も会場を出ることはままならなかった。

 「そうやってこれまでも受験生を威圧してきたのか」
 イチジョウが代表を責め立てる。

 「威圧?もう先ほどから何度目ですか、このやり取り。もうあなたにお答えすることは何もありません。受験生の皆さんの迷惑です。おかえりなさい!」
 客観的にみれば代表の言う通り、今日初めて参加した勉強会で多くの受験生の時間を奪っているともいえるこの状況。いくら先に喧嘩をふっかけてきたのが、あちら側だとしてもイチジョウが不利な状況であることに変わりはない。そろそろ潮時ではないかと誰もが思っていたその頃、先ほど退出した受験生がエレベーターを降り、ビルの一階のエントランスで泣きながら、ひとり悲しそうにうつむいていた。

 すると自動ドアが空き、ビルに入ってきた白髪のご老人がその受験生を心配して声をかけてきた。

 「どうかされましたか?」

次回の更新は2023/5/4予定です。

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