『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-65
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あらすじと作者コメント
登場人物の相関図とキャラクター解説
機会費用とサンクコスト効果①
「ここにいる皆さんはこれまで高い養成講座の費用と長時間かけて学んできた。さらにその後、こちらの勉強会へ参加し、貴重なご自身の時間を使って学習に励んでいるわけです。しかも、非常に安価な参加費だけで他の勉強会では聞けない試験官ならでは情報も提供している。そのうえ、成果を出せない受験生には別の勉強会を紹介し、アフターフォローの体制も確立されている」
雄弁に語っている代表の話を聞いてワカバは自分が最初に参加した勉強会で言われたことを思い出していた。
(ああ、今思えばあの通い放題とかいうサブスクプランもそのひとつだったのか。それをアフターフォローって言われてもなー)
「だから受験生の皆さん、ここに定期的に通っているわけです。もちろん私は他の勉強会や別の講師に乗り換えることを禁止しているわけでもありませんよ。皆さんの自由意志を奪うような真似は一切していない。キャリコン風にいうなら、受験生の自己決定権を尊重しているのです」
ひとり語りで悦に浸っている代表をみて、ワカバは思わずこう言ってしまった。
「あれっ、定期的に通っているってことは、なかなか合格できないってこと?」
あまりにも確信をついたワカバの言葉に代表は驚き、苛立ちをぶつけた。
「もう、あなた達は一体何者なのですか。定期的にというのは、そういうことではありませんよ!キャリコンを目指しているのに空気も読めていない。そんなことだから、あなたこそ合格できていないのではありませんか!」
「あっ、そうでしたか。すみません。勘違いしました」
代表に詰められ、平謝りするワカバを見て、イチジョウが会場の受験生に質問をした。
「いいか、この中で今回が初受験だというものがいたら、手を上げて欲しいのだが」
イチジョウの問いかけに会場の受験生は皆うつむいてしまい、誰も手を上げようとはしなかった。
「だろうな。皆さん失礼な質問をして申し訳なかった」
「おっさん、なんでそんな質問したのさ」
「いや、受付の時に参加者リストみて、チェックしていたろ。その時に『受験回数』って項目があったんだが、『1』という受験生が一人もいなかったのが、気になっていたんだ。」
「さっすが、おっさん、細かいねー。よく見てたよ、そんなところまで」
「ほとんどの受験生が受験回数『3』以上になっていた。つまりさっき親方が言った『なかなか合格できない』というのは、おそらく正しいのだろうな」
「また、誹謗中傷ですか、それとも言いがかりですか。それは、たまたまでしょう。今回の参加者の中に初受験の受験生がいなかった、それだけです」
代表が取り繕うように説明すると、今度はサオトメが語り始めた。
「確かに代表のおっしゃる通り、今日はたまたま初受験の方がいないだけで、いつもは少なからずいらっしゃる。ただ、合格が難しいというのはあながち間違いではない」
「サオトメくん!自分が何を言っているのか分かっているのですか!あなたもこの勉強会を愚弄するつもりなら、本当にここから出ていってもらいますよ!」
「いえ、代表そんなつもりは・・・私はただ、正直に現状を伝えたかっただけで・・・」
代表の標的がサオトメに変わったのを見兼ねて、イチジョウが語りだす。
次回の更新は2023/4/24予定です(明日は今週のまとめ版を公開します)。
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