『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-79
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今後のこと②
「ここの勉強会、最初はかなりヤバいところだと思ったけど、フタツギさんがサオトメさんを代表に指名したろ。サオトメさんも会った当初はちょっとヤバい人かもしれないなと思ったけど、俺の考えも理解してくれたし、元々そんなに悪い人じゃないのが分かった」
ワカバはうなずきながらも結局イチジョウが何を言いたいのか気になっていた。
「だから、親方、これからはこの勉強会でサオトメさんの世話になるといい」
(えー!なんでそうなる。よりによって二人とも同じ考えだったのかよー)
「親方も随分、成長して俺が教えることは何もない。だから、ちょうど武者修行も兼ねてこれから試験までは他の人を師事するのもいいだろう」
(いやいや、ちょっと待って!だってサオトメさんから断られたばっかりだよー。いや事情を話して無理矢理でもおっさんにお願いしよう)
何故か今回ばかりはワカバの心の声が全く聞こえていないイチジョウであった。
「それにこれから俺、フタツギさんと大きなプロジェクトを取り組むことになってさ。ずっとやりたいと思ってたことだから、嬉しくてよ。今日も何度かプロジェクトの関係者とも話していたところだったしな」
(そうかー、確かに今日おっさん、何度か電話で誰かと話してなー)
「あと、たまたまだけど、さっきフタツギさんが話を聞いていた受験生がいたろ」
「ああ、あのやりたいことが見つかって、資格取るの辞めるって言ってた人かー」
「彼女がやりたいって言ってたのが、なんと今後のプロジェクトに関連することなんだよ!すげえだろ、この偶然」
こんなに目を輝かせるイチジョウを初めてみたワカバは心なしか少しふてくされてしまう。
(ああ、スゴイ偶然ですねー。私には全く関係ないことでしょうが)
「だから俺も今まで以上に忙しくなっちまうから、これからはサオトメさんにサポートしてもらうといい。どうだ親方」
納得はいかないものの、これまでイチジョウにはなんだかんだいって世話になった。イチジョウの気持ちは理解できるものの、自分のことを考えると不安になってしまう。これからひとりでやっていけるのか・・・。そして、考えた末にイチジョウへサポートをお願いしようと思い、言葉を発した。
「おっさん、実はさ・・・・」
「何だ、親方」
しかし、ワカバはもう一度相手のことを考えてみた。嬉しそうにプロジェクトの話を語るイチジョウのこんなにもやる気に満ち溢れた表情をみたことがなかった。いつもなら自分の気持ちを優先して、何も考えずにお願いしていただろう。もしくは、自分の気持ちを押し殺し、本音を言い出すことも出来なかったことだろう。そんなワカバがイチジョウに初めて本音を語り始める。
次回の更新は2023/5/12予定です。
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