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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-58

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やりがいの搾取(2)負の連鎖②


「おい、てめえは何を賭けてくれるんだよ」

「そうだなあ、じゃあ俺のイノ・・・」

「おっさん!」
ワカバが急いで止めに入った。

「バカじゃないの!もう一回いうよ。バカじゃないの!」

「は、何だよ、親方」

「あのさ、おっさん今「命かける」って言おうとしたでしょ」

「それがどうしたよ」

「あきれた・・・こんなことに命かけてどうすんのさ」

「俺は何事にも全力投球だ」

「バカじゃないの!もう一回いうよ。バカじゃないの!」

「何だよ、俺はお前のために・・・」

「だったら大丈夫。私にだって覚悟はあるよ」
イチジョウと話し終えたワカバはスネオにこう告げた。

「だったら、私が賭けます。どのみち、この人は私の保護者代わりで来ただけだし」

「はあっ、何だよ。冷めるなあ。もうどっちでもいいから、早く何を賭けるか言えよ」

「もしこの人が嘘をついてたなら、わたしこの試験を受けるの辞めます」

「ほぉ」

「親方、お前!いいのかよ、本気だったんじゃないのかよ」

「・・・本気だよ。だからこそ許せない。もし本当にコイ・・・この人が受験生をバカにしたような発言したなら、私だけじゃなくてここにいるみんなに対しても失礼だもの」

「親方・・・今、スネオのことコイツって言おうとしたろ」

「それは関係ないでしょ。でも最後は私が責任取るよ。考えてみたら私がおっさん誘ったんだしね」

「そうだな・・・確かに。じゃあ、あとは任せた」

「ん、ん、どうした。おい、おっさんどうした、急に。本当は何か証拠になるものあるんでしょ」

「・・・ない」

「えー、あれだけタンカきっといて、それはないでしょうよ。おっさんが命賭けるまで言ったんだから、こっちは確信めいたものあるって思うじゃんか。早くこの状況を打開するもの出しなさいよ」

「・・・ない」

「バカじゃないの!もう一回いうよ。バカじゃないの!」

「あのさ、今何待ち?」
二人のやり取りにしびれを切らしたスネオが問いかけた。

「ああ、すみません。もうちょっと待ってもらえますか。すぐ終わるんで」

「とにかく俺が言ったっていう証拠出してくれないとお前受験できなくなるぜ」

「分かってますよ。だってあんなにカッコよくタンカきったんだから、当然ありますよ~」

「だろうな。何でもいいから早く出せ、証拠を」
ワカバの慌てっぷりをみたスネオは平静を取り戻した。まだイチジョウとワカバは折り合えていない。その様子をみた代表が声をかけた。

「どうやら、彼が無礼な発言をしたというのは虚言だったってことで宜しいですね。それでは騒ぎを起こしたお二人には退場してもらって、続きを始めましょうか」

ワカバとイチジョウは顔を見合わせて、声を発しようとした瞬間、会場の隅から声が上がった。

「ちょっと待ってください!」

次回の更新は2023/4/11予定です

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