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抱かずにはいられない他者への期待

期待をして 傷ついて
無くなるもんと分かってるならさ
最初からいらない

スターダム/Mrs. GREEN APPLE

あれだけ言ったのにバカね
期待をしたら惨めなだけと
あれだけ言ったのにまたね
皮肉にもただ君に恋をする

ア・プリオリ/Mrs. GREEN APPLE

今まで自惚れて信じて来たものが崩れ去るほど、儚いものはない。その信念が間違ってると気づいた瞬間に、安定していた気持ちが揺らぎ、心が地に落ちていってしまう。大切にしている期間が長く、その想いが強いほど崩れ去ったときの衝撃も大きくなる。だから人は天動説を反対したり、激しい宗教戦争を起こしたりするのだろう。自分が今まで信じてきたものを信じ続けるために。

特に他者に対する期待や信念は、いとも簡単に崩れ去る。だが人はそういったものを持たずにはいられないらしい。

  • 「私の先輩は困ったときに何でも助けてくれる」

  • 「私の彼女は私の心の傷を癒してくれる」

  • 「私の夫は困ったときにとても頼りになる」

こういった期待は、人生でものすごく頼りになるものであるが、崩れたときの代償は大きい。期待した態度を取らなかったときや期待した態度が見られなかったときに、人間関係は綻びを見せていくのである。

「いつも優しく相談に乗ってくれたのになんで今日は乗ってくれないの?」
「だって仕事で私も疲れてるからしょうがないじゃん」
「でもいつも通り乗ってくれればラクになるから、相談に乗ってよ」
「今日はちょっとしんどいから、、、」

こんな感じのコミュニケーションが続けば、今まで築いていた関係性が破綻してしまう。だから他者に期待しすぎるのは、人間関係が崩れやすくなる要因となり、あまり良くないと言われるのだろう。期待のしすぎは、相手からすると「支配されてる」や「都合良く使われている」といった印象も抱いてしまう。

じゃあ期待しなければいいと安易に結論できるかもしれないが、なかなかそうもいかない。期待のない人間関係はとても虚しい。人に期待するからこそ、私たちは未来を信じることができて、人を頼りにすることができるのである。

「私が責任取るからあなたの好きな通り自由にやっていいよ!」
「いつでも相談に乗るから、何でも言って!」

このような言葉たちは私たちを安心させてくれると同時に、その言葉をかけてくれた人に期待をさせてくれる。「失敗許してくれる」、「相談に乗ってくれる」この言葉を信じることができれば、頼りにできる人が増えて、自分が独りではない安心感を得られる。

この「独りではない」という安心感は、自分が成し得たいことをなそうとするときに、大きな原動力となる。きっと自分が困ったときに相手が助けてくれると信じ、何かを達成したときには相手が喜んでくれると信じられるからだ。だからこそ「他人に期待しすぎない」といった教訓を鵜呑みにするのは、良くない気がするのだ。

期待しすぎないために?

ただ期待が度を越して、それが支配になってしまうのは絶対に良くない。自分と関わってくれる人が喜んでもらうことを考えると、お互いにとって損である。

期待する人の分散

だからまず期待する人を多く持ち、分散させるのが大切だと思う。例えば相談役として、独りに過度な期待を寄せると、その人自身も疲れてしまうし、自分もその人に期待しすぎてしまう。独りだけに寄せる期待は脆く、崩れやすいので、相談役を増やすのが得策になるのだろう。また人間関係ではあえて距離を取るのも大事であり、分散できていれば、スムーズに距離を取るべき人に距離を置ける。冷淡な言い方をすると、コミュニケーションを取らないでいられる。だから頼れる人を分散させておくのは、その人達との距離感を適切に保つために大事なのだろう。

些細なコミュニケーション

また些細なコミュニケーションもないがしろにしてはいけない。これをおざなりにすると、信頼関係はいとも簡単に壊れやすくなってしまう。またコミュニケーションを取らないと、自分の考える他者像と本当の他者像がどんどん乖離してしまう。そうすると相手に独りよがりの期待を抱くことになっる。

「いつでも相談に乗ってくれる」と自分独りで考えても、定期的にコミュニケーションを取らないと、人は冷めやすくなる。それを防ぐには、日常的にコミュニケーションを取らないといけないのだ。そしてそのコミュニケーションの中で、相手を尊重していることを示し、相手の抱く感情に寄り添うのが、信頼関係を紡いでいくために大切なことだろう。

関係性から得られる失望と喜び

言うのは簡単であるが、行うのは技術が必要であり、とても難しい。おそらくこれから何回も期待をしすぎて、人間関係に失望していくのだろう。その怖さに怯えて、誰ともかかわらずに独りで生きていくのもいいかもしれないが、その虚しさにも耐えられない。人間関係から得られる喜びは、計り知れないほどの大きさがあるからだ。だったら人と関わり、人間関係が綻んでいく中で得たものを、大切にしていきたい。そしてその中で得た喜びを命の限り享受したい。

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