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[5分連載小説]CARD MASTER-天才ハッカーは真実の愛を語る-

あらすじ

公正取引委員会の、17歳の、少女、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、マレは、審議院より、3ヶ月間の、休暇を、与えられる。
マレは、故郷、港町、フォンスに戻り、相棒の猫、オーケアヌスと共に、以前、経営していたバー、ポルトゥスを、再開業し、老夫婦や、教授など、街の人々の悩みを、解決していく。
バーに、未成年の、少年が、訪れるが...

カバー写真

郊外スブルビウムの、病院

CARD MASTER-天才ハッカーは真実の愛を語る-

公正取引委員会の、17歳の、少女、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、マレは、審議員より、与えられた、3ヶ月間の、休暇を、昔、自身が経営していた、バーに、戻り、過ごしていた。
マレの、バーに、少年が来店する。
「この、バーは、ソフトドリンクでも、大丈夫でしょうか?未だ、未成年、なんです。」
マレは、優しく、返答する。
「大丈夫ですよ。お幾つですか?」
「17歳です。悩み事を、解決してくれると聞いて、このバーに、来ました。」
「あら、奇遇ですね。私も、17歳ですよ。悩み事とは、何ですか?」
少年は、返す。
「彼女に、服をプレゼントしようと思うんですけど、諸事情で、連れ出せないんです。彼女の代わりに、服を、試着してくれませんか?同年代の、女性の方に、来てもらう事で、彼女に、似合うか、確かめようと思って。僕は、余り勉強は、好きでは、無いんです。どうしても、本当に大切な事は、教科書には、書いてない気がして。授業よりも、彼女と過ごす、放課後の、時間が、楽しいんです。」
マレの、相棒の、AI内蔵スマートスピーカーで、喋る猫、オーケアヌスが話に、入る。
「素敵な、お願いじゃないか。マレ、行ってあげなよ。」
「勿論、良いですよ」と、マレは、了承する。人助けは、大切な事だ。それに、このバーの、先代の、マスターも、お客の悩みを、何時も、解決してあげていたらしい。このバー、ポルトゥスの、伝統なのだ。

翌日、3D shop®︎スリーディーショップの、3Dで再現された、快適なショッピングVR空間を、移動しながら、買い物が、出来るサービスで、待ち合わせをした。
VR空間を、2人で、歩きながら、少年が、話し出す。
「大人たちは、若い時は学びなさいと言うけれど、学びは、学校以外にも、沢山ある気がして。書を捨てよ、街に出ようが、僕の学びなんです。人生で、最も楽しい時間が、高校時代だと、聞きました。僕は、今、確かに、青春を生きて居ます。」
ブランド品が並ぶ、バーチャルショップで、高校生が、マレに話しかける。
「彼女の代わりに、洋服を、試着して貰えませんか?」
マレは、色々な洋服を、試着する。ふと、自分が学生だったらと、思いを馳せる。マレも、まだ、17歳なのだ。外資大手ラグジュアリー企業、luxuryラグジュアリー社の、お店から、次のお店に行こうとした所で、バーチャルショップの照明が、落ちた。
「何が、起きたの!?」
「何も、見えない。マレさん、何処ですか?」
サイバー攻撃の様だった。
「オーケアヌス。状況を、教えて。」
オーケアヌスが、答える。
「マレのいるバーチャルショップ一帯に、ゼロデイ攻撃がされている。お店のセキュリティが、落ちた。」

マレが、オーケアヌスに、問い掛ける。
「発信源は、何処?」
「妨害が、とても強い。交信を、継続出来ない。」
オーケアヌスとの通信が、切れた。
「どうやら、僕たち、閉じ込められてしまった様ですね。」
「完全に、ハッキングされている。ログアウト出来ないわ。」
「復旧を、待ちましょう。」
暗闇の中、少年は、話す。
「マレさんは、ブランド品が、気に入りましたか?」
「どれも、素敵なものよ。ただ、少し高いわ。」
「ブランド品を作るのに、途上国の子供が不当労働させられて、革製品で、動物も、乱獲されている。」
「何が、言いたいの?」

「これらのブランド品は、この世界の、不条理、そのものです。」
照明が、復旧した。しかしデジタル製品digital bag®︎デジタルバッグや、digital cloth®︎デジタルクローズが、全て、なくなっていた。
オーケアヌスから、通信が入る。
「マレ、発信源は、すぐ近くにいる。そいつだ。」
「貴方が、ハッカーだったのね。」
「僕は、正そうとしただけです。この世界の、不条理を。この世界は、歪んでいる。悲しみに、暮れる人が、いる中で、人々は、何とも思わず、知らぬ顔で、自分の、喜びのために、生きている。間違っているのは、この世界の方だ。」
「犯罪よ。」
「VR空間では、製品は、ただのデータです。人々は、アバターに、着せ替えるだけ。現実世界では、衣食住や、健康にすら、困っている人がいる。おかしいと、思いませんか?」
「理由は、問わないわ。通報する。」
少年は、即答する。
情報犯罪対策課警察デジタルポリスが来る前に、僕は、消えますよ。」
再び、オーケアヌスから、マレの元に、通信が入る。

「マレ、ハッキングは終わってない!!その店舗を起点に、luxuryラグジュアリー社の、他店舗の、同一ブランドの、digital bag®︎デジタルバッグや、digital cloth®︎デジタルクローズの、デジタル資産が、消失、している。凄い、速さだ。」
初めて、ハッカーと、対面する、マレ。弱冠、17歳の、ハッカーに、驚きを隠せない。特筆すべきは、その処理能力の高さだ。VR空間で、マレと、ショッピングをしながら、その片手間で、ハッキングを、行って居たのだ。マレの驚きは、直ぐに、怒りと、軽蔑に、変わった。何故、その能力を、社会の為に、生かそうとしないのか。自らの、矮小な、欲望の為に、使うのか。事態が、未だ、理解しきれない中、マレは、ハッカーを、見つめて居た。マレが、少年に、問いただす。
「私と、話している間に、ハッキングを続けていたのね。」
「僕は、時間が、欲しかっただけです。だから、貴方と、問答していたのです。欲しいものは、手に入りました。さようなら。」
少年は、VR空間から、ログアウトした。
マレは、自宅から、バーポルトゥスに戻る。オーケアヌスに、話しかける。
「彼は、何者!?」
「恐らく、凄腕のハッカーだろう。素性を、調べよう。」
マレとオーケアヌスは、少年ハッカーの、素性の、調査を始めた。Twitterに似た、ニュース投稿アプリour media®︎アワーメディアで、少年天才ハッカーを知っている人はいないかと、大衆に、問いかけた。すると、天才高校生ハッカーの、噂を、聞いたことがあると、返信して来た人が、いた。
マレは、思う。高校生...?彼と、同年代だわ。
他の人が、ハッカーコミュニティ『アンノウン』の存在を、教えてくれた。ソル最大の、ハッカーコミュニティらしく、ハッカーについて知りたいなら、其処で探すと良いと、投稿に、書いてあった。
マレは、ハッカーコミュニティ『アンノウン』に、偽名と、偽の設定で、潜入した。ある女性アバターの、アイコンを付けた、40代の、主婦を、名乗る人物が、向こうから、接触して来た。

「初めまして。私は、暇を持て余した、女神、デア。君は、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、マレ・インスラ・ウェルテックスさん、でしょう?私たちの情報網を、侮らない方が良い。なにせ、ハッキングが、趣味だから。」
マレは、返信する。
「天才高校生、について、知っているのですか?」
「ギャンブルでは、貴方に、分がある。ハッキングでは、私たちに、利がある。間を取って、テーブルゲームの、リバーシで、私に、勝ったら、彼の事を、教えてあげても、良いわよ。」
マレは、暇を持て余した、女神を、自称する、ハンドルネーム、デアと、リバーシで、対決する。
リバーシのルールは、次の通りだ。
黒と白、2種類の石がある。まずは8×8マスの盤面の中央の4マスに、黒、白2つずつの石を、置く。
ここから先手のプレイヤーが黒石を、後手のプレイヤーが白石を、一つずつ交互に置き、挟んだ石をひっくり返すことで、自分の色を増やしていく。
これを盤面が埋まるまで繰り返し、最終的に、数が多かった色のプレイヤーが勝利となる。
マレは、決断する。攻める。先に、4隅を取る。
先手必勝。電光石火で、マレは、先に勝負に出た。デアも、当然4隅を狙ってくる。マレは、目先の盤上よりも、隅に、石を置く事に、意識を集中した。中盤までは、中央を制したデアがリードして居た。だが、後半になって、4隅の内3つを制したマレに、分が回ってきた。
最終盤、マレは、外側から一気にひっくり返した。ゲーム終了。デアの黒石は、30個、マレの白石34個が、僅かに、上回った。
マレの、勝ち。

デアが、少し沈黙し、やがて、「約束だものね」と返信し、口を開く。
「彼の名前は、分からない。でも、フォンス郊外の、高校に通う、高校2年生。噂では、メディキーナという、特定先端技術疾患の、彼女が、いるらしいわ。」
特定先端技術疾患とは、0.1-100nmナノメートルの極小機械、ナノマシンの、注射が、稀に引き起こす、免疫疾患や、各種病状を、統合した病気の、総称だ。
マレは、デアに、礼を言い、港町フォンスの、病院データベースに、カジノ・賭博分野審議官カードマスター権限で、アクセスし、メディキーナ、という名前で、検索を、かけた。彼女は、フォンス郊外、スブルビウムの、病院に、いる事が、分かった。
翌日、メディキーナが、病院の、端っこで、猫に、餌をあげている。マレと、オーケアヌスが、メディキーナに、近づき、マレが、声をかける。
「猫が、好きなのね。メディキーナさん。私は、カジノ・賭博分野審議官カードマスターマレ・インスラ・ウェルテックス。私の、相棒も、猫なの。」
メディキーナが、振り返り、声を出す。
「こんにちは。猫好き同士、猫友達ね、マレさん。」
「本題を、聞くわ。貴方の、彼氏さんは誰?」
メディキーナは、少し恥ずかしそうにし、囁く。
「チェスで、私に、勝ったら、教えてあげる。私の病室で、チェスをしましょう。長く、入院しているとね、退屈なの。私の、思い出づくりの、相手になって。」
マレは「良いでしょう」と答え、オーケアヌスと、共に、病院に入り、メディキーナの、病室に行く。

メディキーナが、病室の、ベットに座り、サイドチェアに、チェスを並べ、話し出す。
「私は、1年間も、長期入院しているの。病気は、免疫系の、特定先端技術疾患。医師と、家族が、会話しているのを、聞いてしまったの。私の、残された、時間は、長くないって。唯一の希望は、臓器移植手術を、受ける事だけど、家には、お金がなくて、手術費用、約600万円を、払えないの。私に残されたのは、思い出を、作る事。今日出会った、貴方と。そして、私の大好きな、彼と。」
マレは、メディキーナと、チェスで、対決する。
チェスのルールは、次の通りだ。
8行、8列の四角いボードで、プレイする。
64のマス目は、白黒の格子模様に配置されており、それぞれ白マス、黒マスと呼ばれる。
それぞれのプレイヤーは、16個の持ち駒で、ゲームを開始し、持ち駒は、キングが1個、クイーンが1個、ルークが2個、ビショップが2個、ナイトが2個、ポーンが8個からなる。
白のプレイヤーは、白の駒を動かし、黒のプレイヤーは、黒の駒を動かす。そして、白が常に最初に駒を動かす。プレイヤーは、1度に1つの駒を、交互に動かす。
駒は、空いているマス、または、敵の駒のいるマスへ、駒をキャプチャして移動させる。
マレは、決断する。守る。耐えるわ。
メディキーナが、猛攻する。先ずポーン勢が、来る。マレは、迎撃する。
メディキーナが、揶揄う様に、微笑む。

「防戦一方?」
マレは、気にしない。
メディキーナが、ルーク、ビショップ、ナイトを動かす。混戦に、なる。
マレは、最後まで、守りに徹した。その為、敵陣に、駒は無かった。
メディキーナが、気付いた時、マレのクイーンは、キングの、斜め前に、付いて居た。マレが、告げる。
「クイーンで、チェックメイト。」
マレの、勝ち。
メディキーナが、感嘆する。結果より、ゲームを楽しんだ、過程が、大切なのだと、言いたげだった。
「まさか、クイーンで、攻めてくるなんて。驚いた。こんな手は、初めて見た。」
マレが、安堵して、問いかける。
「チェックメイトね。貴方のキング、彼は、誰?」
メディキーナは、照れながら、返答する。

「彼の、名前は、ウィンクルム。高校の、同級生。彼とは、1年生の時、同じクラスで、知り合ったの。まだ、元気だった私は、彼と、色々なところにデートしたの。カラオケ。ダーツ。ビリヤード。映画。動物園。遊園地...本当に、楽しかった。」
少年、高校生ハッカーの名前が、分かった。ウィンクルムだ。帰路、マレに、審議院から、ウィンクルムと、luxuryラグジュアリー社の面談が、2日後に、予定されていることが、通知された。面談内容は、メディキーナの手術代金、600万円と引き換えに、luxuryラグジュアリー社の、奪った、digital bag®︎デジタルバッグdigital cloth®︎デジタルクローズ製品を、全て、返却する、というものだった。
翌日、メディキーナは、外出と、外泊を、許可されていた。ウィンクルムが、迎えに来る。2人は、フォンス郊外の、ボーリング場で、遊ぶ。痩せ細った、メディキーナは、ボーリング玉を、のろのろとしか、投げられない。ウィンクルムが、メディキーナの、手を取り、一緒に投げる。
ストライク。ウィンクルムが、メディキーナを、励ます。
「人生で、初の、君との、ストライクだ。2人なら、乗り越えられる。」
2人は都心中央部、経済都市、ペクニーアエ・コンメリクムの、量子通信タワー、quantum tower®︎クォンタムタワー展望台に、行く。メディキーナが、語り出す。
「この街を見て。こんなに多くの人がいるのに、私たちは、私たちだけ。きっと、出会った確率って、奇跡だと思う。私が、この病気なのも、奇跡的な確率だと、思う。どうして、私は、病気に、なってしまったんだろう?何で、私なの。神様は、試練を、与えるって、言うけど、乗り越えられない、試練は、与えないでしょう?酷い。」
ウィンクルムが、「大丈夫だよ」と呟き、メディキーナを抱きしめる。
メディキーナ宅にて、2人は夕食を取る。メディキーナが「今日は、両親が、外泊だから、泊まっても大丈夫だよ」と言う。ウィンクルムは、頷く。
深夜、2人は、メディキーナの、ベットに、横になる。ウィンクルムが、メディキーナを、抱きしめる。メディキーナが、「来て」と言う。ウィンクルムは、メディキーナの、ブラジャーの、フロントファスナーを、降ろし、小さく膨らんだ、乳房に、キスし、胸を、ソフトタッチする。病気で、痩せた体は、助骨が、浮き出ていた。ウィンクルムが、心を、痛める。ウィンクルムが、メディキーナの恥部に、指を入れた。メディキーナの、恥部から、出血、する。2人とも、初めてだった。ウィンクルムが、驚き、問い掛ける。
「ごめん。痛くない?」
「大丈夫だよ」とメディキーナが答え、2人は、重なり合う。ウィンクルムは、自分は、この瞬間の為に、生まれて来たのだと、思った。メディキーナは、声を出し、ウィンクルムの、腕を掴み、ウィンクルムを、精一杯、受け止めた。メディキーナは、最高の思い出が、出来たと、感じて、彼女の眼からは、一筋の涙が、流れていた。月明かりが照らす、暗闇の中、2人は、求め合って、愛を、感じ合って、1つになっていた。

翌朝、2人は、カフェに行った。其処で、メディキーナは、嘔吐してしまった。意識が、混濁している。ウィンクルムが、救急車を呼び、郊外、スブルビウムの緊急救命科に、向かう。
完全に、意識を失った、メディキーナは、ICU集中治療室に、送られた。
ICU集中治療室にて、ウィンクルムは、1人、藁にもすがる思いで、神に、祈っていた。其処に、マレが、オーケアヌスと、来訪する。マレと、ウィンクルムが、対面し、マレが、告げる。
「貴方は、彼女さんを助けようとした。でも、こんな方法では、助からないわ。貴方は、彼氏として、真実を知る権利が、ある。このままだと、彼女は、もう、長くはない。」
「嘘だ!!」と叫ぶと、ウィンクルムは、泣き叫びながら、逃走した。
夕方、ウィンクルムと、luxuryラグジュアリー社の、VR空間での、面談が、始まった。泣き腫らした顔で、ウィンクルムは、出席していた。
病院の、控え室で、メディキーナの状態を、見守るマレに、メディキーナの、母親が、動揺した面持ちで、向かって来て、声をかける。
「マレさん、娘が──」
メディキーナが、意識を、回復した。マレは、横たわるメディキーナに、頼み事を、する。
「貴方の、彼氏さん、ウィンクルムが、貴方の為に、違法なハッキングをした。彼を、思い留ませる為に、貴方の力が、必要なの。」
ウィンクルムと、luxuryラグジュアリー社の、VR空間面談に、マレと、メディキーナが、現れる。ウィンクルムが驚く。
「メディキーナ、何故、君が此処に?」

メディキーナは、か細い声で、必死に、言葉を、紡ぐ。
「もう良いの。ウィンクルム。私は、私の人生を、受け入れる。生まれて来て、貴方に会えて、本当に、嬉しかった。色々な場所に、行ったね。遊園地。映画。カラオケ。ビリヤード。動物園。ダーツ。そして、ボーリング...本当に、幸せだった。前を、向いて、ウィンクルム。叶うなら、私の事を、忘れないで欲しい。一杯、2人だけの場所に、行った事。沢山、思い出を、作った事。そして、愛し合った事...貴方には、私の、1番、大切なものを、あげたの。全部、忘れないで。思い出して。思い出の中に、私も、居るから。其処に、私も、生きているから。有難う。さようなら。ウィンクルム。またね。」
メディキーナが、VR空間から、退室する。
「待ってくれ、メディキーナ。ゔぁああー!!」
ウィンクルムは、泣き崩れ、泣き叫ぶ。
luxuryラグジュアリー社の担当者も、悲しすぎる結末に、言葉を、無くしていた。とても、彼の罪を、責める心境では、無くなっていた。マレが、沈黙の後、静かに、口を開く。
「ウィンクルム、このまま、貴方を、情報犯罪対策課警察デジタルポリスに、引き渡すことも、出来る。でも、1つ、提案が、あるの。」
ウィンクルムは、涙で、ぐちゃぐちゃの顔で、答える。
「どんな話も、聞きたくない。」
マレが、返す。
「いいえ。聞きなさい。本事案で、公正取引委員会は、貴方のハッキングの、天才的な才能を、高く評価した。私たちの元で、働きなさい。メディキーナの、手術費用、600万円も、年間給与400万円の、1.5年分、先払いで、支払うわ。」
「僕を、スカウトしようと、しているんですか?」と、ウィンクルムが、泣きじゃくるのを辞め、問いかける。涙で頬を濡らしながら、ウィンクルムは、「どうか、お願いします。」と、返答する。

翌日、メディキーナが、ウィンクルムの、給料前払いの、代金で、緊急手術をする。メディキーナの、手術が、終了する。外科医が、手術室より、出て来る。ウィンクルムが、医者に、問う。
「彼女は、助かったんですか?彼女は、無事ですか?」
医者が、返事をする。
「ベストは、尽くしました。後は、メディキーナさんの、体力次第です。」
ICU集中治療室の、ベットにて、ウィンクルムが、メディキーナに寄り添う。メディキーナが、目を覚ます。
奇跡が──起ころうと、していた。
「目が覚めたかい?君は、臓器移植の、手術をしたんだ。」
メディキーナが、涙を拭い、ウィンクルムの、瞳を見つめ、答える。
「そうなんだ。でも、私の、臓器移植の裏で、誰かが、亡くなっていると、思うと、素直に、喜べないね。複雑な、気持ち、だよ。ウィンクルム、私ね、夢が出来たの。いつか、貴方と、結婚して、貴方の、子供を、産む。それが、私の、夢。だから、生きたい。生きて、貴方と、幸せになりたい。」
ウィンクルムの目から、ポロポロ、ポロポロと、涙が、流れる。目の前に、愛している人が、いる。その人は、自分を、愛している。そして、生きている。涙が、止まらない。
ウィンクルムは、溢れ出る涙を、手で、拭い、メディキーナに、震える声で、答える。
「うん。きっと、叶うよ。」

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