斉藤和義「ずっと好きだった」を考えた

 Youtubeで月ノ美兎さん達が4人でゲームしてる動画を流しながら寝転がってうっとりしていると、何かのCMで中断された。くそ。俺のスウィートタイムを邪魔しやがって。スキップだスキップ。

 「目に映るのは〜 たっしかな! ときめきで〜」

 は! 突然のメロディに胸を打たれる。良い曲じゃないか。あ、スキップを押しちまった! あれはなんの曲だったんだ?

 「目に映るのは確かなときめき 女教師 エロ画像」で検索をかける。ああ、だめだ。いつもの癖でエロ画像を検索しちまった。なんだよ「エロ画像」ってお前32歳にもなって。恥ずかしくないのか? ゔん!! 恥ずがじいっ!! うるせえ!

 Vaundyの曲らしい。「Tokimeki(ときめき)」っていう。良い曲だなあ。

 「これ良い曲だな」と思って調べたらVaundyの曲だったってことが最近多い。俺に刺さりまくってる。ひょっとして俺に向けて歌ってるのか? そうか、俺に向けて歌ってるんだ!

 「次の方どうぞ」
 「先生、Vaundyは俺に向けて歌ってるんですよ」
 「そうですか。今日はどうされたんですか?」
 「痛風の薬を貰いに」

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 「音楽は記憶のポストイット」とは伊集院光さんのラジオの替え歌コーナーの冒頭で、決まり文句で言う言葉だった。よく言ったものだと思う。懐かしい音楽を聴くと、聴いていたときに見ていた景色も同時に思い出す。

 浪人生の頃、代ゼミの売店に行くといつも「少女時代」と「KARA」がエンドレスで流れていた。韓流が流行っていたのもあるが、たぶん売店の店員さんの趣味だろう。いつかこの日々のことを思い出すとしたらBGMは少女時代になるなあ、と思っていたが、本当にまんまとその通りになっている。少女時代の「Gee」を聴くと浪人生の頃の思い出が溢れ出してくる。

 11月になると小田急線の踏切には冬の風が吹いた。ほぼ毎日、現実逃避のために新宿〜代々木の街をうろつき回っていたから、四季折々のあの辺の景色はマスターしている。そろそろサザンテラスはクリスマスに向けてイルミネーションが輝き出す頃。千駄ヶ谷のイチョウ並木も紅葉して、静かに冬を迎える準備だ。

 厚生年金会館前のブックオフで「京大M1物語」という漫画(1巻で終わった謎の漫画)を読んで志望校への思いをドキドキ高めていると、めちゃくちゃ可愛いスーツの女性が話しかけてきた。話しかけてくれてありがとう。さ、結婚しよう。という心の叫びを必死で抑えながら応対していると、英語力の話になった。

 聴くだけで英語力が上がる魔法みたいなCDがあるらしい。リスニング力だけじゃなくスピーキング力も上がるんだとか。なんなら寝ているときに流してるだけで英語力が爆発的に上昇するだのなんだの。
 そう。当時そんなのも流行ってたんだ。住所を書かされて、しばらくすると家にCDのセットが届く。30万円です。送ったんだから払え。みたいな。

 「ぼくセンター9割なんで大丈夫です」という学歴厨丸出しのクソみたいなアンサーで逃げようとしたんだが、「すご〜い」とかいって囃し立てながら喰らい付いてくる。素直に話を聞いて、実在しそうな架空の住所とニセの名前を書いてサヨナラした。
 帰り際、女性はまた別の人間に営業をかけていた。なんでブックオフでやってたんだろう。バグってそこにしかリスポン出来なくなったNPCなのか。

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 斉藤和義の「ずっと好きだった」という曲は、ラブソングとしては珍しく「特に何も起こらずに終わった2人」を描いた歌詞になっている。

 大抵ラブソングというと、散々よろしくやって別れた後か、今絶賛お楽しみ中です、の2パターンしかないが、その段階まで行ってない人間は共感できないんだよ! という問題があるのをご存知だろうか。

 そういう意味で言うと、「ずっと好きだった」はタイトルの時点で良さそうだ。次の段階に行ってなさそうじゃん。ちょうどこの曲を発見した浪人生の頃の俺は「俺にもわかる曲見つけた!」と思った。
 歌詞はこうやって始まる。

 この町を歩けば よみがえる16歳
 教科書の落書きは ギターの絵と君の顔

斉藤和義「ずっと好きだった」

 早速いいじゃん。共感できそうだぞ。大人になって久しぶりに故郷を歩いている俺が目に浮かぶ。

 「教科書の落書きは ギターの絵と君の顔」は、俺のメモリーには存在しない過去だが、最大限拡大解釈すると大体そんな青春だったような気がしないでもない。

 尾崎豊の「卒業」とか「15の夜」だって、そんな青春じゃなかったけど、まあ要するに! 大体は! ざっくり言えば! そんな「感じ」だった俺も! っていうことで多くの人の共感を集めているはずだ。そうじゃないと盗まれたバイクや割られた窓の数が明らかに合わなくなるだろう。

 俺たちのマドンナ イタズラで困らせた
 懐かしいその声 くすぐったい青い春

斉藤和義「ずっと好きだった」

 うん。そういうようなこともあったような気もする。いわゆる青春だよな。好きな子に意地悪しちゃう的なね。素直になれないわけだ。そしてサビに入る。

 ずっと好きだったんだぜ 相変わらず綺麗だな
 ホント好きだったんだぜ ついに言い出せなかったけど
 ずっと好きだったんだぜ キミは今も綺麗だ
 ホント好きだったんだぜ 気づいてたろうこの気持ち

斉藤和義「ずっと好きだった」

 久しぶりの再会に、あのとき言えなかった感情が爆発する。なるほど! 久しぶりに会ってもやっぱり綺麗なんだな。同窓会だろうか。

 初めてこの曲を聴いたのは19歳の頃だったが、30歳ぐらいになったらこういうことがあるんだろうか、と夢想した。ちなみに俺は現在32歳だが、同窓会には呼ばれていない。

 話し足りない気持ちは もう止められない
 今夜みんな帰ったらもう一杯どう? 二人だけで

斉藤和義「ずっと好きだった」

 「もう一杯どう?」。おお。なかなか積極外交だな。聖徳太子ばりの積極外交で来た。まあでも良い感じだっていうことだろう。

 いきなり話しかけて「みんな帰ったらもう一杯どう?」って言ってたら目も当てられないことになりそうだが、どうやらこれはそもそも良い感じで進んでいるということだろう。

 がんばれ和義!! 学生の頃には言えなかった気持ちがあるんだろ? 勇気出しちゃえよ和義!!

 この町を離れて しあわせは見つけたかい?

斉藤和義「ずっと好きだった」

 お互いに故郷を離れたんだろうな。どうだった? と優しく問いかける。それぞれが大人になって社会を生きてみた。痛みも悲しみもそれなりに、しかし幸せだって掴めたかもしれない。

 もうこれは2人だけで飲んでる場面だな。さぁ整ってるぞ。言っちゃえよ和義!!

 教えてよ やっぱいいや あの日の キスの意味

斉藤和義「ずっと好きだった」

 おいおいおい! キスしたのかよ! おい!!! キスしてたのかよ!!!
 じゃあ知らねえよ! 勝手にしやがれこの野郎!!
 しかもどうやらキス「されてる」じゃねえか! はい、わかりません。俺にはわかりません。終わり終わり〜! 解散! 解散で〜す!

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 「ずっと好きだった」は、ちょっと俺には意味わからないけど良い曲だからみんなも聴いてくれ。
 「歩いて帰ろう」とか「歌うたいのバラッド」も良いよ。

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 それにしても寒いな。先週、やたら暖かかった日に立川を走ってたら桜が一本咲いていた。春だと思って咲いてしまったみたいだ。この時期に一本だけ咲いてる桜ってなんか怖いのな。ホラー映画で使えそうな光景だった。

 秋は別れの季節でもないのにやたら寂しい気持ちになるから、一足飛びに冬になって逆に良かったかもしれない。もうあっという間に年の瀬だ。早いなあ。

 風邪ひかないように! あとあの桜が来年の春までギリもつように祈ろう!

 ウォールヴゥワ!(?) また会いましょう!

 今回はフランス語(??)でお別れです!

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