研究者×事業家という新たなキャリアが生み出す、「世界基準」の新サービスとは
カーブジェン株式会社で採用広報を担当しております、早坂文花です。
当社は世界的な課題「薬剤耐性問題」の解決に向けて創業し、臨床現場での細菌感染症診断を支援するためのソフトウェアやハードウェアを開発しています。
2023年6月には海外の学会や展示会にも出展し、その新規性や医療貢献に対して、大きなご期待の声をいただきました。
【出展レポート】
・ASM Microbe 2023(米国・ヒューストン)https://note.com/carbgem_hr/n/nad942481a6a7
・BIO International Convention 2023(米国・ボストン)
https://note.com/carbgem_hr/n/n0cb1d0e23c93
今回のインタビューでは、当社の新規事業開発を牽引する取締役・竹谷誠にこれまでのキャリアとともに、世界に目を向けた当社のプロダクト開発についてご紹介します。
まずは竹谷さんのこれまでの経歴について教えてください。
大阪大学理学部で化学を学びました。高分子化学という分野で、タンパク質の三次元立体構造をX線で解析する研究を行っており、修士課程卒業後はパナソニックの中央研究所に勤務しました。
「生物分野の研究を行ってきた研究者の入所は初めて」ということで、有機素材の分析などを行っていましたが、そのうちに友人とともに「モノクローナル抗体を使用した癌センサーを作る」プロジェクトに着手し、これ自体は事業化には至らなかったものの、話を聞きつけた大蔵省(現:財務省)関税局から、「同じ原理で麻薬取締用のセンサーを作れないか」と声がかかりました。
当時の私はまだ30手前くらい。科学技術振興調整費が予算としてつき、国会議事堂を見下ろせるような場所で打ち合わせをするのがとても楽しかったと記憶しています。
これが今後のキャリアに続く「バイオロジー×機器開発」の端緒となりました。
このセンサーの試作機が出来上がり、100名くらいの関係者の前でお披露目する機会がありましたが、前日のリハーサルまではうまく作動していたのに当日はまったく成果が出ない。焦りました(笑)
あとでわかったことですが、このセンサーはモノクローナル抗体で検体から発される「蛍光強度」を測定していたのですが、蛍光強度は外気温に反比例する性質があり、100名以上が集まって室温が上がった当日にはうまく作動しなかったということでした。この不具合を修正した後にもしばらくは研究に従事していましたが、その後会社から派遣される形で海外留学と研究開発の機会を得ました。
またこの機器開発の間に、抗体遺伝子の突然変異についての実験も並行して行い、医学博士号を得ることもできました。非常に濃密で多忙な数年間でした。
社内ベンチャーで研究開発成果を商品化、脳のモデリングに挑む
海外留学先では脳神経科学分野の権威、カリフォルニア大学のゲイリー・リンチ先生と出会い、脳をコンピューターでモデル化し、記憶のメカニズムについて研究する機会を得ました。
帰国後、従来は膨大な脳細胞の1点ずつしか観測出来なかったのに対し、64箇所から同時に電気信号を受け取り、脳ネットワークの挙動を観測できる機器を初めて開発しました。
この機器を使用することで、今まで知りえなかった脳の動きがわかるようになったことから、パナソニックの研究所にいながらにして商品化部署を創設してもらい、私自身はその機器の海外展開の為に再びカリフォルニアへ渡りました。
脳の挙動は現在においても不解明な部分が多く、例えばうつ病などであっても「この薬をまず使用して、効かなかったら次にこれ」という経験的医療に頼る部分も大きかったのですが、この機器を使用することで、新たな中枢神経薬や抗うつ剤などの開発において、「脳の挙動を確認しながら創薬する」兆しが見えてきたので、リンチ先生と一緒に創薬ベンチャーを創業しました。これが2000年前後の話です。
その後はパナソニックに勤務する傍ら、この創薬ベンチャーの経営で飛び回っていました。
しかし2007年頃には本社より「さすがにそろそろ国内に戻るように」という指示が出ましてね。同時にパナソニックのヘルスケア分野からの撤退も決まっていた中で、今後の進退について悩んでいたところ、メディカルデバイスを開発する日本光電工業の米国現地の研究開発責任者としてお声をかけていただきました。
日本光電は当時の米国の住まいからも近く、現地で面接を受け、その後トントン拍子で採用となり、転職することになりました。
その後、アカデミアや医療機関とのコネクションを強めたいという会社の意向もあり、ボストンに研究拠点を開設するため、西海岸から東海岸に移動しました。結果的にアメリカでの生活は2016年まで続くこととなりました。
帰国後神戸の医療産業都市に関わる中で、代表・中島との出会う
こうして20年近く米国にいましたが、いつかは日本に帰ろうと考えていたところで、理化学研究所の友人から神戸の医療産業都市に関する構想を聞きました。神戸は私にとっても親しみのある街で、その過程で代表の中島と出会っています。2016年頃のことでした。
阪大や理研など国内でいくつかのプロジェクトに加わった後、2018年にカーブジェンの親会社・ネクスジェンに参画し、その1年後にカーブジェンの創業に立ち会いました。この7月からは、新規事業本部長としてプロダクト開発はもちろん、売上にも責任を持つ立場となりました。
当社の細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェア「BiTTE ®(ビッテ)」はデジタルソリューション部が開発を行っていますので、私が主に管掌するのは自動グラム染色機 「PoCGS ®(ポッグス)」の開発とマーケティング・営業企画、そして「BiTTE ®」の開発以降のマーケティング・営業企画となります。
事業開発本部は新メンバー多数、「世界標準」で商品開発を加速していくために必要なこととは
この6月に新たに、東京ラボに医薬分野のマーケッターと医療機器開発のスペシャリスト、神戸ラボでは微生物研究者に入社いただき、「BiTTE ®」「PoCGS ®」ともに一気に研究開発や各種テストなど製品化に向けた取り組みが進んでいます。
現状世界に目を向けてみると「日本初の世界的な医療機器」はまだほぼないといっても過言ではないと思っています。この分野の有名機器のメーカーはほぼ欧米の企業です。当社は新メンバーとともに、「日本初の世界的な医療機器」を作りたいと考えています。これからがチームとして一番おもしろいタイミングだと個人的には感じています。
ちなみに「世界で活躍する機器が少ない」ことの理由は案外明白で「見たことがない」「知らない」ものは使いにくいという心理的抵抗感が一因だと思います。
そのため、当社はBIO International ConventionやASM Microbeなど海外で認知度の高い展示会や学会に参加し、実際にモノを展示して現地の方と会話することに注力しており、実際に非常に有意義だと考えます。
自分たちは気づかない良い部分や改善点などの指摘を受けたり、称賛していただくことで自信にもつながり「世界のレベル」でモノを考えられるようになります。
実際に2023年6月の連続登壇を経て、メンバー全員がレベルアップしていると感じます。
また、医療機器を扱う以上、論文執筆と発表は必須です。当社では私も自分で執筆しますし、メンバーも取り組んでいます。
国内の皆さんのお声で多いのが、海外に出展や論文執筆するとなると「もう少しこのデータが出てから」「この内容が揃ってから」などと踏みとどまってしまう方も多く見受けられます。そのような中で、私たちのようなベンチャーだからこそ、果敢に経験を積み、衆目にさらされることで得られるものは多いと思います。
常に「グローバル」を念頭に新ビジネスに挑戦し、「日本発の世界レベル」を創り出したい方には、ぜひ当社に加わっていただきたいと思います。
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