これからのpictSQUARE主催の「イベント拡大戦略」-けも好きの事例-
■ vs 「お金の壁」!!
前回の記事では「これから有料化するpictSQUARE」についての所感と、けも好きの有料化の方針についてまとめました。しかしながら、あの話を読んで、こう思った方もいるのではないでしょうか。
「これからイベント始めたいのに、ジャンルにピクスク知ってる人がいない中で有料化したら、サークル集まらないよ!!」
私はこう答えます。
「それな!!!!!1111」
けも好きのイベントが、いい具合に回るようになった一因には「ピクスクをβ初期の段階で見つけたため、無料で【おためし第0回】と【第1回】を実践できた」という要素が大きく関わっています。
まだ、pictSQUAREがけもフレジャンルでは知られていなかった頃、イベント参加できずにくすぶっていたサークル主の皆様に「無料だし試してみようかな?」と、ノーリスクでサークル参加を実践して貰える機会があったんですね。
そして、イベントに参加した方が「めっちゃ楽しかった!!」「本物の即売会っぽいね!!」「案外売れるじゃん!!」という成功体験を話すことで、ジャンル内で認知が進み、本番の第1回では、おためしの倍以上サークルからの申し込みを達成することが出来ました。ありがたい……。
ですが、現状のピクスクは少し状況が変わります。
正式なサービス開始で、サークル申し込みに手数料がかかるようになったことで、「第0回」から参加費が必要になるため、ピクスクの認知の進んでいないジャンルだと、最初の課金ハードルで「サークル参加者がピクスクの有用性を認識するまでたどり着けない」可能性があるんですね……。
ここに関しては、私も「手数料を有料化するにしても、お試し版ぐらいは認知用にサークルじゃなく主催負担で開催させてあげて!!10spを定員にすれば5,500円で払えない金額じゃないし!!」と、常々思っています。採算度外視で自分好みのイベントを企画したくなることもあるでしょうし、「選択肢」が欲しいのです。
私の考えとしては、先日の通り「イベント参加費はちゃんとお金を取ろう」なのですが、「無料開催自体が悪いこと」という主張ではなく、むしろ企画の初動、ジャンルに認知を広げるフェイズでは、ハードルは低いに越したことはないとも思っているのです。
……というか、まず私自身が、初期の「サークル参加無料イベント」を開催できる時期の恩恵にあずかって、けもフレジャンルにpictSQUAREを普及させられた当事者なので。初動が有料だったら、多分、けも好きは頓挫していたと思います……。
というわけで、自費負担などでの「サークル参加無料イベント開催機能」の必要性自体は、いつか実現できるようにピクスク運営には要望などで訴え行くつもりなのですが、今回は別のアプローチで話を進めたいと思います。
それは「ピクスクの定着していないジャンルに、どうやってピクスクを浸透させるか」について、けも好きのとった戦略を参考にお話しできればと思います。
■アバターを用意する
けも好きにおいて一番最初に手を付けたのがこれです(根っこの発想が絵描きですね)。
pictSQUAREの魅力とは何か。それは「現実の同人誌即売会をバーチャルな空間で楽しめる事」です。
しかし、それだけをプッシュすると、「リアル即売会の下位互換じゃ~ん」と、冷めた反応をされてしまう可能性があります。
……実際、リアルと比べてはやれることが減る一面は否定できないので、ここで言葉に詰まってしまうと、主催やりたいマンとしては歯ぎしり必至。
というわけで、「現実ではできないことをお手軽に楽しめる」ということを周知します。つまり「好きな二次元キャラになれる」という要素を、ジャンルに周知するのです。
そのために、けも好きではまず、認知度が最も高いであろう、アニメ1期の主要キャラクターのアバターから、制作に着手しました。
「サーバル」
「かばんちゃん」
「ラッキービースト」
「フェネック」
「アライさん」
このセレクションは、キャラの知名度によるところも大きいですが、特にラッキービーストは、小型の量産型ロボットという設定上「沢山画面にいると面白いキャラ」であり、なりきりの楽しみの独自性も高い物だったので、制作の優先度も高かった感じです。
【Caras式フレンズアバター】は、ピクスクのデフォルトアバターより頭が小さく細身なデザインです。参考に色々とRPGのドットを見ていましたが、ツクール95のプロポーションの影響が強いと思います。小さいドットでありながら、顔と体のディティールのバランスもいい。
これには理由があり「けもフレにおいてキャラクターの個性が出るのは耳と尻尾である」という持論があるためです(コンセプトデザイナーの吉崎先生も近いことを言っていた気がします)
他のジャンルだと、目や服装のディティールを増やす方が個性を出しやすいですが、けもフレアバターでは、長いor大きい耳(羽)や尻尾のバランスをそのままに入れられるように、頭の上や、横向き時の前後には、大きな余白を開けてデザインしました。言うなれば「けもフレ特化型アバター規格」……!!
ちなみに、けも好き0開催前に、「このアバターの改変ドットを頒布したいです!!」という問い合わせが来たので、少し考えて「一定の条件のもと改変再配布を許諾する利用規約」を発行し、アバターに同梱しました。
ざっくり言うと「非商用・けもフレのファン活動用途・ピクスク限定・規約継承必須」の制限の下で、改変再配布を認める趣旨のものです。
この要望に対応したおかげで、けもフレはピクスクでも有数の「めっちゃ大量の統一規格アバターが存在するイベント」になりました(たぶん)。
画面はめっちゃにぎやか、さながらジャパリパーク!!(画像はけも好き1の記念撮影です)
一方で、独自規格でフレンズアバターを作る方もいるので、あくまで多様性の補助線としての意味合いに収まったかなと思います。
そんなこんなで、まず初動としては、フレンズアバターの数を揃えました。アバターを着込んでデモ会場を練り歩くと、「かわいい!!」って言ってもらえたりして、ちょっとバ美肉の気持ちを味わったり。
そして、このアバターのデザインは事項以降の施策の布石にもなってきます。
■イベント名とヘッダーを作る
主催は手間のかかる作業……であれば、使えるリソースはどんどん使いまわしていかなければなりません。
当初は「超かわいいかばんちゃんとサーバルちゃんとボスの神イラストヘッダーを描いて、華々しいスタートを!!」などと考えていたものの、いったん理性的にブレーキをかけます。神絵師ってわけじゃないですし。
というわけで、まずヘッダーはアバターのドット絵をうまく活用して、進めることにしました。そして仕上がった規格はこれ。
まず、背景は昔描いたドット絵ファンアートの流用です(背景描くの苦手マンなので、過去の自分に助けられた…)
そこに、配布する新作アバターを乗せて、ちょっとしたゲーム画面仕立てにします。
あとは、フリーフォント「もじ(けもフレ風フォント)」を、けもフレの商標権に引っかからない範囲で利用しつつ(特許庁で登録商標を検索して精査しました)、親和性の高い「プイッコ」で組んだイベントロゴを配置して、完成です。
イベント名は、初代アプリ「けものフレンズ」以来、来園者への問いかけとして多用される、けもフレのコンセプトとも言えるセリフ、「あなたは、けものがお好きですか?」が由来です。このあたりも、けもフレにはタイトルごとに「世代」の概念が存在するため、全世代を包括的に扱うイベントにおいては最適と判断しました。
同時に、色々とファン間の関係が複雑なジャンルではありますが、その大前提として「けものフレンズが好きであること」がイベントの趣旨であることも表しています。
ロゴデザインのこだわりポイントでは、「青い羽根」は、けもフレにおいて「来園者」に配られる入場パスであり、イベント自体を作品の舞台「ジャパリパークの来園者」に見立てています。
「見立て」はヘッダーのデザインにおいても重視しているもので、ヘッダーをゲーム画面風に見立てたことで「ゲーム風のシステムを持った『操作する何か』であること」を言外で暗示してたりもします。そうした意味でも「操作可能なアバター」をヘッダーに利用したことは、結果的にイベントの実際の内容をこの上なく表現できた、と言えるかもしれません。
■pictSQUAREの説明を作る
さて、アバターも出来た所でイベントも立ち上げたわけですが、無料と言えどやはり申込者は少ない状況。現状では「なに?けもフレのゲーム作るの?」という認識の方も多い段階だったと思います。そこで、次に進めたのは「pictSQUARE自体を知ってもらうこと」です。
まずは解説画像を作りました。このあたりは、他ジャンルでもイベントを盛り上げようと説明を作っている方が多かったので、私の方も参考&便乗させて頂く形に。ここでもコンセプトは「ドット絵のゲーム風」。
こちらも結構拡散して貰えて、認知も広がりましたが、もう一つダメ押しになるものが欲しい……。そこで「まだ誰もやっていない事」を考えることにしました。
私は元々、ACTとかSTGで活動していた同人ゲーム開発者です。その立場から、操作を要するコンテンツにおいて最も有用な広報手段は何だったかと模索し、ひとつの回答に至りました。
「プレイムービーが必要だ!!」
そんなわけで、昔取った杵柄で、動画収録とAviUtilを駆使して、「アライさんのリモート即売会内覧レポート」が爆誕しました。実際の開場前のイベントで、アライさんを操作しながらイベントや頒布形式の概要を解説しています。
けもフレにおいて「アライグマのアライさん」の存在感は強烈で、けもフレをよく知らない人でも、口調やキャラは知ってる人が多いタイプの人気キャラです。
いくら私がアバターにこだわったとはいえ、pictSQUAREの解像度でキャラを判別するのは、ある程度のキャラへの知識が必要ですし、複雑な内面を持つキャラクターはどうしてもファンの内輪ノリ感が出てしまい、広報としてはわかりにくくなってしまいます。
ですが、アライさんは強烈にわかりやすいです。チャットウィンドウで「なのだ」と語尾につけてトークさせれば、この小さなドット絵でも「ああ、アライさんね」となります。すごくシンボリックなキャラであり、何でも断言口調で話してくれるので、すごく頼もしい解説役です。
最近は、けもフレ3(アプリ)1周年記念の広報も担当してますし。
これは、DLして遊ぶしかないのだ!!(自ジャンル宣伝)
……そんなこんなでアライさんの動画は、まさかのピクスク運営アカウントにもRT頂き、けもフレジャンルに留まらず、広くピクスクに興味を持つ方に「わかりやすい解説動画」として利用していただくことに繋がりました。
やっぱりアライさんのキャラの濃さにはかないません。次に解説・レポート動画作る時もお任せなのだ。
■参加者との繫がりを確保する
次に、イベントの開設に伴いって参加者を主催の告知垢で全員フォロー&リストに入れました。これは「DMの連絡経路確保」「告知拡散の協力体制」の二つの意味があります。
「DMの連絡経路確保」については、ピクスクにも個別メッセージ機能が実装され、活用は始めているのですが、参加者がすぐ気づくのはTwitterだという判断から、DMを重視しています。やっぱり、オタクはみんなTwitter大好きなので、通知が入るとその日の内に大体確認してくれるのです…。
そして、「告知拡散の協力体制」。これは相互フォローにより「けも好きを拡散してもらえる」という、イベント自体の認知の趣旨もありますが、どちらかというと「こちらから、けも好き参加者のツイートの拡散をする」目的が大きいです。
これは中小規模のイベントには特に重要な動きだと考えていて、サークル参加者も主催と同様、みんな「イベントに誰も買いに来てくれなかったらどうしよう…」という不安を抱えています。その不安を払拭できるよう、主催からも新作の告知に協力し、安心して本を出してもらえるよう心掛けています。それは、相互の利益と信頼関係にもつながると思っています。
ちなみに、けも好きではRTの他、エリアマップの作成とTogetterによる頒布物告知のまとめも行い、「どんなサークルが参加するのか」を周知する形のサポートも行っています。
こういったまとめが上がると、「同人イベントが始まるぞ!!」って、アガりますしね。
主催にとっては「イベントを知ってもらうこと」も大事ですが、そもそも一般参加者の目当てはサークルであるため、「参加サークルを知ってもらう」ために動くことが、結果的にはイベントをより賑やかなものにすることに繋がっていきます。
ちなみに、サークル参加者の交流用に、招待制のDiscordを開設し、参加者のTwitterのDMなどに招待を送付し、任意で参加して頂いてます。
これに関しては、けも好き1以降利用が活発になっていて、主催に質問がある時や、アバターや内装の進捗を見せ合ったりなどという形で、イベントが近づくにつれて賑わっていきます。
こちらも、交流の場としてもっと賑わえばいいなと思います(希望)
■知人にサークル参加者を募る
二次創作のサークルが主催を始める際、初動において重要な所はこれだと思います。公に募集する前に、非公開状態で協力的なサークルを集めてしまう路線です。
私の場合、プライベートな場で告知を行い、数件のサークル参加希望の方が現れ「参加サークル:主催のみ」の状態を脱してから、改めて公開募集を始めました。
「なんかサクラみたいでズルいのでは…?」という印象を持たれるかもですが、基本的に先着や抽選の優遇等ではないですし、なにより認知前の初動時点で「主催サークル1件」の状況が続くのは、冗談じゃなく堪えます(非公開の声掛けの間も、一時的にこれで震えてました)
これをしないと、ヘタすると速攻で心が折れます。
もし、申し合わせることができる仲の良いサークル主がいる方は、公開募集の前に、できればそれだけでイベントが行えるだけのサークル数を、個人的に集めてしまいましょう。その方が、精神衛生上絶対いいです。
■プレスリリースを送付する
これについてはジャンルと運に恵まれた所がありますが、けものフレンズではいくつかまとめサイトがあり、その中でも更新が頻繁かつ、コンプライアンスを意識し、ファンサイトとして誠実に運営されていると判断した「ジャパリ通信!!」様に、プレスリリースとして「おためし」のイベント概要と開催日程を送付し、記事を書いて頂きました。
こちらの管理人の方は、けもフレファンとしての創作活動もしており(けも好き1にもサークル参加していただきました)、pictSQUAREでファンイラストの展示会を開催したりと精力的にファンサイト&イベントを運営しています。
当イベントも多数の記事を掲載していただき、大変お世話になっています。ここに御礼申し上げます。
ただ、「まとめサイト」については、管理者の運営指針により毒にも薬にもなりえるので、そのサイトの運営を行っている人物が、ジャンルやコンプライアンスにどういった意識を持っているか、慎重に見極めた上で、協力を仰ぐべきかどうかを決定しましょう。
ゴシップ的に炎上等を招いたり、コメント欄が荒れているまとめサイトを協力者に据えるのは、PVが多くても、お勧めできません……。
■最後に…
そんなこんなで、私が「けも好き」の主催として「やったこと」を話しましたが、最後に「やった方がいいこと」をお話しして、この記事を〆させていただきます。
新刊を作ろうッッッ!!!!!!!1111
「けも好き2」では「けものフレンズ //(パラレル)」3巻を、どうにか出したいです……。
■宣伝
【けも好き2】参加サークル募集開始しました!!