研究書評 Vol.1
Clayton.M.Crystensen , Michael.E.Raynor , Rory MacDonald (2015,12)
https://hbr.org/2015/12/what-is-disruptive-innovation
“What Is Disruptive Innovation?”
<内容総括・選択理由>
今回取り上げた文献の内容として、以前の書評で言及した破壊的イノベーションに関してそれ自体に対する誤解と再定義、またその再定義に限らないイノベーションに関してUberなどの具体例を挙げた上で説明しさらにイノベーションの具体性を上げることを目的に説明されている。この文献を選択した理由として以前破壊的イノベーションを主導するものをアウトサイダーと仮定したが、破壊的イノベーションを起こす企業自体を市場に対するアウトサイダーと考え、社内企業に同様の経営方針を掲げているものがないかを参照するために選択した。
<内容>
第一に破壊的イノベーションの誤解に関して、イノベーションとブレークスルーを混同してしまう事がある。ブレークスルーとはもともと科学、スポーツ分野で使用されてきた言葉であり、拡大していく一つのニーズを満たし続けるという困難を解決するという意を表している。それと対比してイノベーションとは顧客の新たなニーズを開拓するという違いが存在する。また再定義に関しては当該記事においてイノベーションを、海外の研究者が言うような「既存の企業が躓き業績が下がっていく事」ではなく、技術革新によるメジャーなツールの変遷を原因とした市場の変動を指すディスラプション理論を基に、ある特定の業界での高級市場、ローエンド市場または以前とは全く異なる新市場の開拓による既存企業に対する打撃を与える事をイノベーションであると再定義している(そもそも学者によってイノベーションの定義が異なる場合がほとんどであり、当該記事でも「もっと洗練されるべき理論」であると述べられている)。しかしその定義に当てはまらないながらもイノベーションを起こした企業も含め具体的な企業例が3社挙げられている。第一にディスラプションによる新市場の開拓を起こした例としてuber (交通系アプリ)が挙げられている。しかしこのuberは一般人がタクシーのように料金をもらいながら目的地まで送り届けるというシステムにも関わらず、既存のタクシーの需要を減らしているとは限らない。しかし一般的にuber はイノベーションを起こした一例として挙げられる。またその他にはNetflix、AppleのiPhoneが挙げられるがこれらも提供当初、市場においてフリンジを起こすような影響力は存在せずカスタマーの要求に合わせていく形で最終的にマスを占めるようになっていった。以上のことから破壊的イノベーションはより段階的なものであり、更にいうのであれば市場に革命を起こすものを持続的イノベーションで改善することでフリンジを起こすのではないかとまとめられていた。
<総評>
破壊的イノベーションと持続的イノベーションを対立するものとして説明する事がほとんどだった文献に比べ少なくともサービス業、製造業に関しては各々のイノベーション関連性がより明確化されていた。企業のアウトサイダー的立ち位置に置いても参考になった。