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「好き」を持ち寄って暖まりあう。

私が初めてインターネットのファンコミュニティというものに触れたのは2019年初頭である。

結成直後の某アイドルグループのMVを見たときに電撃が走り、情報収集をしたくてTwitterのアカウントを作った。

まだファンが少ない状態だったので、そのグループの名前で好意的なツイートをしている人を見ると珍しくて「貴重な仲間だ!!」と嬉しくなり、リプライを送った。

また、語り合える人を見つけたくて、現場に行ったときには「どなたかご挨拶できる方いますか?」というツイートをしている人を探して、話しかけた。

すると行く現場行く現場で新たな出会いがどんどん増え、好きを爆発させる喜びを分かち合ううちに、現場とは関係なく遊びに行ったりする仲になっていた。

普段の趣味も生活も価値観もまるで違うのに、それらを飛び越えて、同じ熱狂を共にする。

普通に生きていれば決して交わらなかった者同士が、推しメンという奇跡の存在によって出会いを果たす。

それはそれまでの私からすればとても不思議な状態であった。


(これから登場する画像には何の意図もない)

初めての現場参戦以前は、日本の端っこの地方に住んでいて、1人でこっそりと応援し、寂しい思いをしていた。

現場に行く心理的・距離的なハードルは高く、アイドルにのめり込むにも不向きな環境であることは自覚していたため、ここから先は沼だというラインから先には行かないように自制していた。

しかし、実家のある県に戻ってきたのを機に現場に行くようになると、生のライブ・実在するアイドルの凄さに改めて圧倒された。

同時に、インターネットを通じて自分と同じ熱量を持つ人に出会えるようになった。

それは「こんなに楽しい世界があるんだ!」という感動的な出来事であり、グループが提供するエンターテインメントとはまた別個の、刺激的に思える要素だった。

職場で推しメンの話をしても白けた顔で見られるようであれば尚更だ。


そして時は流れて次に欅坂46(現:櫻坂46)を好きになった。

が、今度はあまりにファンが多すぎて誰と交流を持てばいいのか分からなくなってしまった。「#いいねかRTで気になった人フォローする」が全部同じ人間に見える。それは逆に大勢から見た私の存在も同様であり、完全にモブキャラと化した(いや最初から今までずっとモブなのだが)。

ド新規すぎて歴史も文化も作法も分からず、誰かと仲良くなるきっかけを掴めなかった私は、自分が何か通行証の類のものを持っていないのではないかという感覚を抱いた。

同じメンバーを応援する人や面白いツイートをする人と仲良くなりたいが、自分がツイートする内容が(知識や熱量的な意味でも)月並みすぎて、及び腰になっていたのである。

無限かのように思える広大なネットの海の前で震えながら、欅坂を好きになって2年弱経ったころ、Twitterにスペースという機能が追加された。

ファンの人が文字ではなく音声で推しメンや推し活について語るのは非常に興味深かった。コロナ禍において、初めてSNS越しのオタクが実在することを感じ取られた事象でもある。

そしてそれを聞いていたら自分も喋ってみたくなったので、スピーカーのリクエストを送った。

その時点で私は変な日本語を話す傾向があったので(それはもちろんユーモアとして)、もう何年もの口癖である「(現場に)行くか行かないかは行ってから考えましょう」などと口にしていたらそのいくつかの語録を面白がってくれて、それをきっかけにファンが何人かで遊んでいるオンラインゲームに誘われた。

もちろん私は「やるかやらないかはやってから考えます」と答えた。

それが初めてフォロワーに自分の素性というものが理解される(そしてアピールできる)タイミングだった。

何度かAmong Usでボロ負けしたことをきっかけとして、再び観客を入れるようになった現場でその人達と会うようになり、またその出会いから出会いが生まれ、今に至る。

ファンになりたての時にただ人の波に圧倒され、沼の入り口で立ち尽くしていた世界は全く変わった。何者でもない自分に出会いのきっかけをくれた人とは、今は全く関わらなくなってしまったけど、感謝の気持ちを今も持っている。

そしてその出会いの中で誰かからもらった優しさが、また誰かへ循環するようなイメージで、自分も親切であれたらなと思う。それは坂道以外のグループを好きになっても同様である。


さて、

ここまで明け透けに言うのもどうかと思うが、何かしらのユーモアでも交えないとファンとしての自分には何もないように思う。

変なことばかり言ってる人だと思われても構わなくて、むしろそれは上等で、逆にまともであろうとすればいよいよ自分の個性なんてものは存在しなくなってしまう気がする。ずっと何かに引っかかるフックが欲しかった。

あと、オタク気質ではないという自覚があって、知識や歴史を突き詰めるタイプでも、分析を重ねて言語化するタイプでもないから、有益なことは特に何も伝えられない。

だから実際はさておき、常に自分が一番新参者で下っ端のファンだというマインドでいる。せめて気持ちだけでも。それは、周りに人がいることが当たり前ではないと思うから。

だけど、人と会って話すようになってびっくりしたのは、そんな自分でも価値があると教えてくれる人がいたということ。

なので、今周りにいて、自分が発することを面白がってくれる人には本当に感謝しかない。


私は、ファンコミュニティの人と一緒にいる時に、"何かを好きでいる"という気持ちを持ち寄って焚き火を囲んでいるような感覚になる。

これ、めっちゃあったかくて。

推しメンから貰った火種を燃やし続けるような感じで、人との関係を大事にしていきたい。