音楽のパワーを改めて感じた日
「えっ!?待って待って待って。今日やん!!」
珍しく朝から夫が大声を出しているので、何事かと思うと彼の好きなガーナのバンドが来日中らしい。しかも今日は我が家から1時間半圏内でライブがあると。バンドの名前は知らなかったけど、いつも家で流れてるのでその音楽は私も聴いている。
ハイライフというジャンルの音楽で、ざっくり言うとアフリカの踊れる格好良い音楽である。あちこちに電話して当日券の有無を確かめて、急遽私達は会場に向かった。
近年アフリカのダンスミュージックがヨーロッパで人気なのは知っていたので、日本の音楽ファンが見に来るんだろうか?とにかく踊りたい!と思いながら会場に到着した私たちは拍子抜けした。
会場は成人式をするような市民会館で、全席着席。
しかも音楽ファンっぽいお客さんは数少なく、市民の皆さんが来ている感じだった。主にお年寄りや主婦のおばさま方。これは・・・?
どうやらバンドのプロモーション担当は大使館や音楽財団らしく、ちょっと文化事業っぽいノリ。会場に入ると共に渡されたパンフレットに今日のセットリストと各曲の説明が全部書いてある。ピアノコンサートみたいな雰囲気に、私の頭は??でいっぱい。
開演すると上からスクリーンが降りてきて、ガーナという国はどんな場所なのか、どんな音楽がそこから生まれているのか、まず動画。
そこからバンドの演奏が始まった!8人で構成される彼ら、だけど8人以上の音の厚みがあって、とにかくすっごい格好良い。立ち上がって踊りたくて仕方ないけど後ろの人が全然見えなくなっちゃうし、、お年寄りばっかりだからみんな立ち上がらないだろうし邪魔だよな、、と切なく思いながら着席で踊る。家で聴いてた曲を生で聴けて感激する夫と私。来れて本当に良かったね〜って言い合いながら、アフリカの風に浸る。
びっくりしたのは、1時間くらい経った所で演奏してる最中にどん長が下がり「これにて第一部終了です。15分の休憩となります」ってアナウンスが入ったこと。
ええ!?まだ演奏してたのに!なんで?!と思わず笑ってしまった。
めっちゃ格好良いバンドなのにプロモーターが良さを伝えきれてないのは文化事業だからなのか、ツッコミどころ満載。MCの時はスクリーンに字幕が映されて、これは言わされてるんだろうなぁって感じのこと話してた。見せ物っぽさに違和感を感じる。
ただただ彼らの音楽を体感したくて来たのになぁって。
だけど周りを見渡すとおそらく彼らのことを何も知らずに来たと思われる市民のお年寄りが結構ノリノリで聴いてる。休憩中にトイレに行ったらおばちゃん達が「すごかったわね、聴いててスッキリするわあ!」なんて話してる。
おお、ツッコミどころ満載だけど、ちゃんと伝わってるんだ。すごい。
MCで字幕に書かれてないことを話してもお客さんは誰も反応しないからきっと言葉はほとんど伝わってない(何せ客層は音楽ファンではなく地方都市の一般市民)、彼らのことを知ってる人は数少ないであろう、そんな中でもバンドの素晴らしい音楽はみんなに伝わるんだ。
第二部が始まると、みんな立ち上がって踊ってください!って彼らが言った時にノリノリなおじいちゃんがステージにまで上がって踊ってたのがとっても可愛かった。
一曲踊ったらみんな静かにまた着席するところが、ずっと立ってたら疲れちゃう世代の方々が多いので仕方ないとはいえ少し残念だった。
でもみんなが踊ってた時にふと横を見たら隣のおばあちゃんも爆踊りしてて、ああやっぱり音楽ってみんなを一つにするんだ、どんな世代の人も気分の良い音楽がかかったら体揺らしたいよねって、改めて音楽のパワーを目の当たりにした。始まった時は内心「いや、これって演奏する側も結構サブいやつ・・?」ってヒヤッとしたけど、本当の意味での日本の一般市民をも踊らせちゃうアフリカ人、やっぱすごいし格好良いと心底痺れた。
良い音楽が色んな垣根を越えて人の心に響く瞬間を目の当たりにしてなんだか胸がいっぱいだった。始めはじーっと静かに見つめて、一曲終わるごとに拍手喝采(でも歓声はナシ)という大人しめな観客の皆さんが最後は笑顔で踊っていた。
音楽のパワーって本当にすごい。本物を目の当たりにした気持ちだった。
公演終了後にサイン会があったので、メンバー数名とお話しできた。
私が伝えたかったのは「いつも家であなた達の音楽を聴いてます!」ってこと。
なんだかトンチンカンな日本でのプロモーションで、もっと踊れる会場とオーディエンスだったら更に熱量のあるライブになっただろうと思うと惜しい。けど、彼らの音楽は最高だったしいつも応援してるファンがいるよってのを言いたかった。
そしたら「君たちからその言葉を聞けて本当に嬉しいよ」とリーダーが言ってくれて、思い切って話しかけて良かったと思った。応援の気持ちを直接伝えられた。
握手してもらったメンバー全員の手が私の3倍くらい分厚くて、手を握りながら「こんなにも手が違うんだ!世界は広いなぁ」って嬉しくなった。
世界中に存在するまだ見ぬ素晴らしい表現に、もっと触れたい。
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