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[スバル・レガシィ アウトバック]低反発クッションの様な、包み込む乗り心地。
「優雅さと安定感を両立した、新しいスバルの方向性を示唆した新型」
スバルがフラッグシップモデルと位置付ける、新型レガシィ アウトバック(以下:アウトバック)が発売されました。
今なお続く世界的なSUVブームの最中、スバルが四半世紀以上こだわり続けたワゴンボディに、現在の技術の総力を投入してきた意欲的な1台。
「NEW LUXURY~それは、よりよく生きるための選択~」というコンセプトのもと。
このアウトバックに乗って、スバルが今まで築いてきたアイデンティと、今後のスバルがユーザーに提供していきたい”スバル車としての価値”が表現されていると、筆者はイメージしました。
今回の記事では、全体的に上質さを磨き上げ、アーバンシーンにもより映えるモデルとなったLimited EXの試乗レビューをお届けします。
・試乗協力店:栃木スバル 宇都宮店
https://www.tochigi-subaru.jp/
※記事内 画像引用:株式会社SUBARU
https://www.subaru.jp/legacy/outback/
■SUWという選択肢
スバル・アウトバックは、スバルが開拓の立役者ともいえるSUW(スポーツ・ユーティリティ・ワゴン)というジャンルに属する車です。
しかし、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が人気な現代にSUWとは、あまり聞き慣れないワードだと思われた読者もいるのではないでしょうか?
(筆者も実は、この新型の試乗時に初めて聞きました汗)
簡単に表現すると、最近では各メーカーからも車種が増えてきたクロスオーバーSUVの一種です。
その中身は「ワゴンボディの持つ快適性+SUVらしい力強さ」をかけ合わせる事で、街中からアウトドアまでを1台で網羅できる、オールラウンダーを目指して開発されたクルマです。
スバルは1995年発売の「レガシィ グランドワゴン」より、その思想を具現化した車を現在まで作り続けてきました。そのスピリットを受け継いだ最新型が、このアウトバックです
〈独特な形状の樹脂パーツによるアクティブ感+前後に流れるシャープさを持ち合わせ、より個性際立つエクステリアとなった新型アウトバック〉
クロスオーバーにより手に入れた、多様な走行シーンへ対応できるアクティブ性能の高さ。そこに、優雅さを覚える上質感と最新の安全性能が加わり、現在のスバルを表現したフラッグシップモデルとして誕生しました。
ちなみにフラッグシップとは、どのような位置付けのモデルを指すのか?
Wikipediaでの説明は、以下の通りです。
フラグシップ機は、メーカーの商品群の中で、メーカーの象徴的存在となる製品やメーカーが技術の総力をあげて取り組んだ製品を指し、通常はメーカーの最高価格や最高級の製品が多い。 (引用:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/フラグシップ機)
では、アウトバックも属するSUWを選ぶ利点とは何なのでしょうか?
筆者が思うに、大きく2つに分かれると考えます。
① ワゴンボディにおけるアクティブ性能の向上
普通のワゴン車の場合は、車高は一般的なセダン車などと同様になります。そのため、未舗装や悪路などがあるようなアウトドアシーンでは、下回りを擦ってしまうなどの事象も想定されます。
しかしアウトバックは、SUVの様にロードクリアランスがしっかり確保されているため、未舗装路でも安定して走れるよう設計されています。
また、スバル車らしくフルタイム4WDであり、路面状況によって最適な駆動制御を行うX-MODEも搭載されているので、アウトドア好きな方にもオススメです。
〈必要十分なロードクリアランスを備える〉
また、SUVほどアイポイントが高くならず。悪路走破性を有しながらも、一般的なセダンやハッチバックモデルなどと同様の運転感覚で乗ることができます。
〈各部のブラックレイアウト化&撥水シートなど、よりアウトドア向きのグレード:X-BREAK EX〉
② ユーティリティ性能
縦方向にクリアランスを取るSUVに対して、前後方向に空間が取れるワゴンボディのため、奥行き方向に広大なラゲッジスペースが生まれるのが一番のメリットと言えます。
さらにリアシートを倒すことで、サーフボードやロードバイクも積載可能です。
中には、ワゴンとSUVの良いとこ取りである特性上、中途半端感を持つ人も居るかもしれません。
しかし、そこはスバル。長年、このカテゴリーにこだわり続けた事によるノウハウにより、高次元でクロスオーバーを実現出来ています。
世の中に多数のSUV車があふれている昨今。SUVと同等性能を求めながら、他の人と違うクルマを求めるユーザーさんは、このアウトバックはぜひオススメです!
■新体験な乗り心地
各部に洗練さを漂わせながら、広い居住区間を活かした余裕感のある運転席に座りこみ、いざ試乗スタート。
〈アイサイトXが標準装備となり、センターには専用の11.6インチディスプレイが搭載される〉
走り出しから、意外や意外。堂々としたビッグボディながら、全体的に軽快さがある乗り味となっているのが、瞬時に感じ取れました。
スポーティーモデルのようなダイレクト感はないものの、軽い操作感ながらクイックへの応答性も良いナチュラルなハンドリングは、ドライバーの疲労軽減に貢献してくれます。
また加速性能も、発進からラグなく速度が立ち上がるスムーズさがあり、とても好印象です。
実はこの新型アウトバックの試乗に際して、筆者が一番気になっていたのは加速性能でした。
過去モデルでは2.5リッターなど、比較的大きめな排気量のエンジンが搭載されていました。
しかし、この新型にはレヴォーグやフォレスター(グレード:スポーツのみ)に採用されている1.8リッターターボエンジンが採用されています。
「この車体の大きさ&重さに、1.8リッターで大丈夫か?」
と、当初より懸念を抱いていたのですが。街中などの常用域においても、全く不満なく使用できる加速性能を持っていたので、不安が一気に解消されました。
また静粛性が高くなっているのも効いており、多少アクセルを踏み込んでもエンジン音は気にならなかったです。
〈ノイズ対策の効果は絶大だった〉
そして、特筆すべきは足回りの完成度の高さ。
柔らかすぎず、硬すぎない。タイヤとサスペンションが路面からのショックをしっかりと吸収してくれながら、乗っている人は柔軟性のある空間に包まれている感覚。
まるで低反発クッションに乗っているようなフラット感が、どの路面を走っても続いていく。なんとも不思議な新体験と言える、安定感ある乗り心地を体感しました。メカニカルサスペンションで、これを実現出来たのはエンジニアに努力がうかがえます。
上質で落ち着いた移動の喜びを得るのに、必要な要素がこの1台に凝縮されている。そう感じさせるほど、クルマとしての仕上がりに好印象を覚えました。
とはいえ、気になった点も当然あります。
まずは、この車格の大きさです。
全長4870mm×全幅1875mm×全高1675mmという、スバルの現行ラインナップで最大サイズを誇る、まさにフラッグシップにふさわしい迫力ある姿は頷けます。
しかし、街中での使用においては、やはり気を遣うサイズであるのも否定はできません。
確かに、運転席からの視認性が良くて車両サイズを把握しやすく。車線逸脱抑制もついているので、慣れてしえば気にならなくなると思います。
しかし、道幅の狭い区間や、駐車場内での使用は気を遣う車格であるのは確実です。
〈比較的に大きめのボディサイズである筆者のBR型レガシィワゴン(右)と並べても、大きさの違いがハッキリと分かる〉
そして、個人的な意見になってしまうのですが。この車がICE(インターナル・コンバッション・エンジンの略。アシスト無しのエンジン車を指す)である事です。
約1.7トンの車に1.8リッターエンジンを組み合わせ、カタログ燃費13.0km/L(WLTCモード)となると、まぁ妥当な数字と思います。レギュラー仕様であるのが、経済的な救いでもあります。
しかし、走りごたえやダイレクト感を求めるモデルではなく。日常域における落ち着いた乗り味を堪能出来るこのアウトバックにおいては、「何かしらの電動アシストを入れて燃費性能を向上させても良かったのでは?」と、思ったのが本音です。
その一方、搭載されているCB18エンジンが、とても素晴らしい逸品なのも確かな事実。
メカニカルな詳細は割愛しますが、スバルの持ち味である水平対向エンジンの、新たな可能性を証明した、まさに技術の結晶とも言える名機です。
〈現行レヴォーグより搭載されたCB18エンジン。キャラクターの違う他車種へも搭載される事により、その汎用性の高さも実証されている〉
カーボンニュートラル、電動化が騒がれている昨今。前述したフラッグシップの定義の通り、メーカーの誇りでもある水平対向エンジンの最新版を選択してきたスバルの潔さ、一人のスバルファンとしても高く評価したいところです。
■ニッチな市場ゆえに輝く存在感
いかがでしたでしょうか?
今回紹介したアウトバックの様なSUWというカテゴリーは、世界的にも車種数が少ないニッチな市場でもあります。それゆえに、競合車はおのずと外国車になってしまいます。
そのため、スバルが熟成を重ねてきたシンメトリカルAWDによる走行性能や、アイサイトX標準装備などの安全性能の高さ。そして、前述した通りSUWというカテゴリーにこだわり続けてきたからこそ、搭載されているノウハウの数々。
それらを総まとめした結果の車両価格=429万円(税込み/OP無し)は、コスパが良い1台とも言えるでしょう。
また、今まで培ってきた技術で得られる”バランスの良い安定感ある運転感覚=今までのスバルらしさ”をしっかり有していながら。
ゆったりと落ち着きがあり、乗った人が”車での移動を喜びに変える乗り心地=これからのスバル”も合わせて表現されている、まさにフラッグシップにふさわしい1台でした。