[トヨタ•クラウンクロスオーバー]見た目だけじゃない。走りもブランニューした16代目は、伊達じゃない。
「冠」という名が示す通り。1955年の初代登場より、トヨタにおけるフラッグシップモデルとして君臨し続けているトヨタ•クラウン。
しかし昨今は、トヨタのハイブランドであるLEXUSの躍進や、他ラインナップ車の完成度の高さに圧倒されて。
以前よりも影が薄くなっていた印象だ。
そして現在。大幅な路線変更に舵を切った新型が登場した。
個性溢れるデザインに、4種類のカテゴリー展開となる事が大きな話題となった。
今回は、新型クラウンの初陣となるクロスオーバーの試乗記をお届けする。
内外装レビューはこちらの記事を参照
■走りで優雅さを表現
今回試乗するのは、レギュラー仕様のエンジンを搭載するモデルの最上位グレード「G Advanced・Leather Package」だ。
今回のクラウンクロスオーバー(以下:クラウン)は、時代の流れもあり、ハイブリッド車のみとなる。
エンジンは2種類用意されており、走行性能を重視したハイオク仕様の2.4リッター•ターボエンジンモデルと、日常での使用に適したレギュラー仕様•2.5リッターエンジンモデルとなる。
さらに驚いたのは、全グレード4WDのみの設定である事。クロスオーバーというボディであるにしろ「クラウンで4WD⁇」と。ここからして、過去のイメージを払拭しにきていると思った。
しかも、よくある"なんちゃって4WD"ではなく。
走行状況により2WD•4WDを自動で切り替えるE-fourが搭載されているという事もあり。最初から4WDを想定して開発されたのがうかがえる。
その恩恵は、力強い加速と安定感ある乗り心地に大きく現れていた。
このクラウンに乗って1番印象的だったのが、走りの安定感だ。直進時のみならず、コーナーリング時も続いていく。フラット感が消えない。
まさに一枚の土台の上に座っている様な感覚だった。
それでいて足回りも感触も良い。
ビシッと安定していながら、嫌な硬さがあるわけでも無く、フラフラする柔らかさでも無い。
この安定感に車内の静粛性も相まって、大柄なボディサイズながら、スムーズ且つ優雅さのある乗り心地を実現している。
さらに、ドライバー視点の話となると。ドライブフィールは、意外なほどダイレクトだった。
約2トン近くの車重に、21インチの大径タイヤを履いているのもあり。ハンドルは若干の重さを感じる。
しかし応答性が良く、クイック操作への反応も高い。
前述した安定性にも繋がる話になるが、ハンドルへの無駄な振動も少ない為。
コーナリング時のステアフィールは、さながらスポーツカーを運転している様な、走りごたえたのある仕上がりとなっていた。
ここまでを含めて、今回のクラウンはかなり走行性能にも力を入れていると思われる。
比較対象にはならないものの。フルタイム4WDのマイカーに乗っている身としても、このクラウンの乗り心地は一見の価値ありと心底思ったほどだった。
■ブランニューなユーザーを獲得できるか?
筆者としては、予想外だったと言える走行性能の高さに驚かされた新型クラウン。確かに、1台の車としての完成度は個人的には申し分無い仕上がりだったと思う。
この新型クラウン。外観から既に察する通り「過去からの脱却」というニュアンスの言葉を、プロモーション含め随所で見られている事に、最後に触れておこう。
仮に、他の名前を冠した車だったら、まだ親しみがあった事だろう。しかし、これは「クラウン」なのだ。
あくまでイメージ先行で申し訳ないが。クラウンという車は"所有すること=ステータス"という印象が強い。つまりは「クラウンだから買う•乗る•魅せる」ユーザー層が多いと思う。
しかし、そのユーザー層のみをターゲットとしてビジネスを成り立たせるのも、昨今の世情では中々難しいのもハッキリしている。ましてやトヨタの様なフルラインナップメーカーなら、尚更だ。
その状況を踏まえながらクラウンを存続させる為にトヨタが選んだのが、新しいユーザー層の獲得。 今回のクラウンの変化を見ると、その背景が容易に想像がついた。
実際に筆者も、今回が人生初のクラウンの運転だった。今までなら、ハッキリ言って見向きもしない。むしろ不得意な分野の車でもあった。
しかし、ここまでブランニューな車となったからには、触れて体感してみたいと思い、試乗を申し込んでみたのだ。
この様に、過去のイメージに囚われることなく。メーカーのイメージした通り「1台の新型車」として捉えられる新ユーザーをどれだけ獲得できるかが、今後のクラウンの存続に大きく影響するのは、言うまでも無い事実だ。
はたして、路線変更は成功するのか?今後の動向が気になる次第だ。