[スバル•WRX S4]変革を迎えた新型が唱える、スポーツセダンの新たな存在価値とは⁇
「速さだけではない、ハイパフォーマンスの定義とは?」
長年、「走りのスバル」のイメージを築き上げてきたWRX。待望の新型となるWRX S4がついに発売されました。
伝統のシンメトリカルAWDを搭載した現行ラインナップの中で、唯一のパフォーマンスモデルなのもあり。スバル好きに限らず、スポーツカー好きなユーザーからの注目度も相当高いはずです。
2.4リッター化したエンジン、新開発のCVTミッション、大胆なアレンジを取り入れたエクステリア、アイサイトX搭載...等々、全てにおいて大きな変革が起きたんだ今回のフルモデルチェンジ。
はたして、どの様な仕上がりとなっていたのか?
このWRX S4でスバルが表現したいものとは⁇
最上位グレード・STI Sports R EXの試乗レビューをお届けします。
・試乗協力店:栃木スバル 宇都宮店https://www.tochigi-subaru.jp/
※記事内 画像引用:株式会社SUBARU
■空力を取り入れたアグレッシブデザイン
各部に個性的なギミックが追加され、より特徴的となったエクステリアデザイン。
前後にはシャープに伸び、左右にはワイドに張り出す、ダイナミックなデザインとなったのも印象的です。
<新型はソーラーオレンジパールがイメージカラー>
その中でも特にチャレンジングさを感じたのが、樹脂フェンダーの採用です。SUV車などでは多く見られる、フェンダー部分を無塗装の樹脂で覆うこの手法。大径タイヤを収める為にフェンダー部を拡張するのと同時に、視覚的にもアクティブさを演出します。
昨今のスバルは積極的に樹脂パーツ使い、個性的なデザインを表現している傾向が見受けられますが。
まさかそれを、スポーツ色の強いWRXにやってくるとは。新型発表の時は、とても驚きました。
「最近のSUVブームにあやかって、スポーツカーというより、アウトドア向きのセダンになってしまうのか?」
と、一抹の不安がありましたが。
いざ実車と対面してみると、その不安は一瞬で吹き飛びました。
空力を取り入れ、抑揚のついたボディ造形にうまくマッチしており見事に個性を演出しています。
<樹脂パーツの表面には空力テクスチャーがある>
また、前後バンパー下部・フェンダー・サイドガーニッシュを連なったデザインの樹脂パーツとすることで、引き締め効果でシャープさを演出すると同時にボディの抑揚をより際立たせています。
<サイドからリアにかけての絞りこみも、トランク開口が狭まるが、空力&デザイン性を優先させた賜物>
「今すぐ走り出したいっ!」と思わせる、まさにスポーツモデルらしい躍動感溢れる外装を形成しています。
内装に目を向けると、試乗したモデルはアイサイトX搭載グレードなので、センターコンソールに専用の11.6インチモニターが備わっています。
システムの都合上、変更は出来ませんが。アイサイトX搭載車はこのディスプレイがセットとなる為、インパネは共通デザインとなりがち。
「またかよっ」とツッコんでしまうぐらい、個性が薄いのがちょっと残念。という、個人的なグチはさておき(笑)
正面の液晶メーターに表示される280km/hスケールのスピードメーターを見て、スポーツモデルである事を実感することでしょう。また、サブウィンドウにブーストメーターを表示できるのが、走り好きにはさらに嬉しいポイントです。
また、意外だったのはリア席。驚くほど広いわけではないが、身長183cmの筆者の体格でも、普通に座って移動できるぐらいの十分のスペースは確保されていた。
<183cmの筆者が座っても、指3本半のぐらいの頭上スペースがある>
スポーツセダンとはいえ、セダンボディなりの居住性・利便性はしっかり確保されているのは、普段使いも視野に入れているユーザーとしても嬉しいポイントですね。
<奥行きのあるラゲッジは、決して狭くは無い>
■"走り出しから感じるスポーツ"
ついに試乗が実現した、新型WRX。
やはり、2.4リッター化したエンジンがおおいに効いています。アクセルを少し踏み込むだけで、エンジンの持つトルク感=タイヤを回転させる力が、アクセルペダルを通じて右足に確実に伝わってくる。1.8リッターなどのダウンサイジングターボが主流だった昨今のスバル車では味わえないペダルレスポンスです
走り出しから”いかにもスポーツモデル“である事をドライバーに感じさせる味付けになっている事に、スポーツカー好きとしてのテンションが高まります。
<最大馬力=275PS,最大トルク=375N•mを発生する新搭載のFA24エンジン>
そして加速も、実に良い。前述したダイレクトなトルク感を失う事なく、エンジンはスムーズに回転数を上げていき。決して速くない速度域においても、スポーツモデルらしい”鋭い”加速フィールを実現しています。加えて、車内に響いてくるエキゾースト音が、ダイナミックさをより引き立たせる演出に。
正直、車内に静粛性を求めるユーザーには気になる点ではあります。しかし、車のキャラクター性を考慮した上で、スポーツモデル好きの筆者としてはとても好印象でした。
<躍動感ある音を奏でるデュアルエキゾースト>
次に乗り心地について。STI Sport R以上のグレードには電子制御ダンバーが備わるのですが、その恩恵は絶大です。運転状況・路面状況により各ダンパーの減衰を電子制御してくれるので、常にフラット感が続く安定性のある乗り心地です。
ドライブモードセレクトとも連動し、選択モード毎にも減衰設定が分かれている為、加速のみならず乗り心地についてもキャラクター性を使い分けて楽しめるのも良いポイント。
今回の試乗は市街地内をノーマルモードで大半を走行していたのですが、路面のギャップ(段差)が点在する区間においても「今、段差の上を走っているんですよね?」と思ってしまうぐらい、うまく衝撃をいなしてくれているのを実感。スポーツモデルとはいえ、日常使いにおける上質さも得られる乗り心地でした。
この電制ダンパーの減衰制御に加え、車体剛性の高さも相まって、かなりダイレクト感のあるハンドリングなのも好印象。コーナリング中でも車両姿勢が乱れない為、安定感を保ったまま狙ったラインをトレースして曲がる事で出来るのは安心感にも繋がりますね。
<グリップの良い幅広タイヤを履くため、多少のゴツゴツ感はあるものの。不快さは感じなかった>
最後に、今回のWRXから新投入されたスバルパフォーマンストランスミッションについて。このミッションは2ペダルスポーツモデルのために、スバルが新開発したCVTミッションです。詳しいメカニズム解説は、当記事では割愛しますが。
<スバルパフォーマンストランスミッション>
市街地での試乗においては「ロスなく、滑らかにギアチェンジしてくれるなー」と思ったのと、Sport+モードにおいてシフトアップの感覚が素早くなったのを実感したくらいで。
残念ながら、その性能を十分実感する事が出来なかった。
担当営業さんが言うには「速度域が高い状況・サーキットなどでのスポーツ走行などで、マニュアルミッションの様な変速を実現している」とのこと。
<スバルによるイメージ画像>
何はともあれ、日常の範囲ではスムーズなシフト感覚で不満なく使用できるのは分かったものの。
仮にスポーツ走行を体験出来る機会があった時は、ぜひ確かめてみたいものです。
■新しいドライビングプレジャーの表現
新型WRX S4の感想をまとめると「スポーツカーとしてのダイナミックさを持ちながら、日常使いにおける上質も感じられる、個人的に理想な1台」でした。
アグレッシブさを纏うエクステリアや、トルクフルで鋭い加速フィール、高揚感を覚えるエキゾーストノートなど、スポーツモデルに乗っているという欲求を満たしてくれる車であるのと同時に。
普段使いにおける最低限+αの居住性・利便性もありながら、アイサイトなどの先進技術による安全性も備わっていて、フラット感のある乗り心地は上質なセダンモデルとしての側面も合わせ持つ。
このWRX S4に乗り、最近のスバル車に抱いていた考えが、確信に大きく変わった気がします。
以前から筆者がスバル車に持っていたイメージは「走りごたえ」でした。ドライバーが感じる運転の楽しさ=”クルマを操る楽しさ”と捉えていました。
しかし最近のスバル車は、走りごたえはあるものの。上質さや、モードセレクトによるシーンにおけるキャラクターチェンジなど。
1台の車がオールラウンダー的な役割を担い、より多くのユーザーが「車移動の愉しさ」を感じられる様な車が増えてきたなと思っていました。
このWRXも、まさにその定義に当てはまる性質があります。
スポーツカーなどでよく用いられるハイパフォーマンスという言葉は、主にその車のハイスペック=速さを表していますが。
「ハイパフォーマンス=シーンを選ばず、高次元で車を扱う喜び・車移動の喜び(ドライビングプレジャー)を感じられるクルマ」
という、新たな価値観を得た気がします。
確かに、ガソリン価格の高騰やカーボンニュートラルなどの時代背景により、純粋なエンジン車であるWRXのランニングコストは、決して安くはないと思われます。
けれども、現時点のスバルの情熱が詰まったこの1台は、走りの楽しさを感じさせてくれる格別の1台と言えるでしょう。
本気で乗りたいと思えた、いい車でした!