弁護士のキャリアプラン

弁護士のキャリアプランというと,書籍等で紹介されているものは大手の法律事務所へ入所して,留学へ行って,その後,パートナーになって…とか,そういうものはあるように思うし,エライ弁護士の思い出話とかそういうのはあるように思いますが,いわゆるマチベン(一般民事事件とよばれる個人の事件を主に取り扱う弁護士),しかも一般的な弁護士はどのようなキャリアを歩んでいくのでしょうか?

私が弁護士になった2009年ころは就職難の時代で,私も複数の(しかも,何十件もの)事務所に履歴書を送りましたが,事務所説明会まで進めるのも数件,面接まで漕ぎ着けられたのも数件という状況でした。
※ロースクールの成績は壊滅的だったのと,司法試験合格までに幾分時間がかかったことも影響しているかもしれません。

その中で,使用者側の労働事件を多く取り扱っている事務所からのオファーがありましたが,別の事務所の結果待ちのタイミングだったこともあって、少し待ってほしいと伝えたところ、ボス弁曰く「君に選択権はない」(つまり,いまここで受けるか断るかしかないという意味)とのことでした。正直に言うと少しムカッと来たのでその場で断りました。

「こんなやつの下では働きたくないな…」と思ったのが理由ですが、結果として、集合修習が始まっても未だ就職活動をしているという状況になりました。当時は修習が終わっても行くところがないという状況にプレッシャーを感じておりまして、酒を飲んでは「第三東京弁護士会でも作りますわ」と言っていました。
※この当時は,弁護士業界はおろか,社会人としての常識も分かっていなかったので,今思えば明らかに弁護士側がおかしい対応をしている場合であっても,「そんなものか…」という風に思っていたように思います。例えば,面接の後,返答をくれる約束になっている時期にメールすらないとかは今考えるとおかしいのですが,その時はそんなもんか…と思っていました。
※ちなみに,現在使用者側の労働事件を担当することが多いのですが,不思議なものですね。

内定を断った後の記憶はあまりないのですが、おそらくいくつかの事務所に履歴書を送り続け,最終的には、前に所属していた事務所に呼ばれ,あっさりと内定をもらいました。
※来る予定の修習生(当時は旧試合格者もいました)が二回試験に落ちたとかで,リザーバとして呼ばれた訳です。

そんなこんなで二回試験,不合格発表(二回試験の発表は不合格の番号だけが貼り出されます),一斉登録となり,初めての事務所での初出勤の日になりました。その後の出来事が非常にインパクトがあったので,正直最初の内に何をしたのかは良く覚えていないのですが,dellのデスクトップパソコンを5~6万円で購入してセッティングしていたような記憶があります。当時はノートパソコンという選択肢は自分の中ではあまりなく,デスクトップパソコンを使用して起案していたように思います。メモはリーガルパッドに手書きで書いてました。
※現在は,手書きはほぼ無く,全てパソコンに保存しています。手書きのメモはスキャンする手間となくしてしまうリスクがあるので極力使いません。

話が逸れますが,その後1年くらいしてMacBookAirを10万円位で買って,しばらく使った後,5万円位で売って,14万円くらいでレノボのX1carbon(2014年モデル)を購入した記憶があります。今はLet's note単体で全ての業務を行っていますが,1~5年目くらいまでは色々と試したりしていましたね。ガジェット系が好きな人にとっては弁護士の仕事は,効率化を追求するという名の下に,いろんな電子機器を試していけるので,よいかもしれません。ちなみに教訓としては少なくとも数千万円レベルで売り上げるのですから,数十万円レベルの仕事道具をケチってはいけません…。

話を戻しますが,1年目の思い出深い話としては,裁判官にキレられたことが挙げられます。言葉通り怒鳴り散らされたのですが,理由は,自分の作成した訴状の出来が余りにも低レベルだったからです。自分も恐縮してしまって,「はい」「はい」言うだけだったのですが,裁判官の「何年目だ!」の言葉に対して「1年目です」と回答した後は,急に優しくなって,「まあ,それだったらしょうがないね…怒りすぎて悪かったね」などという感じで収束し,相手方の先生も「なんか嫌なことでもあったのかね?気にすることはないよ」とおっしゃっておられ若干救われた気分になりました。事件の内容も含めて非常によく覚えているエピソードです(その依頼者とは今でも交流がありますが,今の自分であればもう少し対応の仕方があったようにも思います)。

最初のテーマとズレましたが,弁護士の1年目は概ね,事務所のボスから振られる事件を一緒にやっていくということになります。打合せに一緒にはいって,ボスがおおまかな方針を立てますので,新人弁護士が内容証明郵便の案や訴状案を起案します。自分のボスは,あまり起案に対して逐一修正を求めるタイプではなかったので(だから,裁判官にキレられたりするのですが…),実地で覚えていったような感じになります。
※この辺は,自分の性格にもよるのですが,取りあえずやってみる,指摘を受けたら直せばよいではないか,というやり方でした。ボスになってみたら,お客さんからの催促とか,ボスが上手く対応してくれていたのだな,と思うと頭が下がります。

まとめると,1年目はボスの立てたおおまかな戦略に従って,自分の判断で戦術を立てて,失敗して,先輩等に質問して,リカバリーして,というような感じで仕事をしていました。
※文章にすると淡々としているように見えますが,いつもおなかが痛かった記憶があります。実際2年目には弁護士辞めて他の業界に転職しようかと思って実際に説明会とかに行ったりしていました。

1年目はわからないことしかないので,何でも調べまくって,できれば自分で判断した方針を,ボス弁に確認して進めるのがよいように思います。ボス弁に何でも決めてもらうクセが付くと,何も決断できない弁護士になってしまいますから。

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