本の中の上質な暴言①

暴言が好きです。暴力的なものに惹かれます。
四捨五入しなくてもスラムのような汚ねえ町で生まれ育ったからかも知れません。地元に蔓延るチャイニーズヤクザに怯えながら生きてきました。

以下、暴言に関して追随を許さない作家を紹介していきます。

●平山 夢明
言うまでもありません。レジェンドオブ暴言。何食ったらあんな異常な言語化ができるようになるのか。『異常快楽殺人』は一生物のトラウマになりました。ゲロ吐きながら読む読書体験って何?

僕の著作『異常快楽殺人』は世界各国のシリアルキラーを紹介したノンフィクションです。ところがこの本を担当した編集者は、ホラーが死ぬほど嫌いな人物でした。そんな人間が連続殺人の記録を延々と読むわけですから、これはもうほとんど拷問です。あまりにも原稿をチェックするのが嫌で、最後は会社に来なくなってしまいました。

平山夢明『恐怖の構造』(幻冬舎新書)

私も『異常快楽殺人』は一周で勘弁してください!という感じでした。表紙が既に怖え〜。
以下、特にお気に入りの文章を引用させてもらいます。

なにせ僕の住む街には、やたら怒鳴ったり叫んだりする大人が多かったんです。かくれんぼをしていたら突然「ふざけんな」って一升瓶で殴ってくるオヤジとか、公園で「男のパンチを見せてやる!」と樹木を殴りつけながら拳を血まみれにしているオヤジなんてのが大勢いたんです。

平山夢明『恐怖の構造』(幻冬舎新書)

世の中、上には上がいますね。(この場合は下には下かである)

 例えば習い事であれば、ピアノの才能がどう見ても疑問であるにも拘らず、母親が自分がピアノが習えなかった恨みを子で賄おうとする場合等が其で、チンパンジーが弾いたような音色に涙ぐみながら〈感動した〉と装ってみたり、自分が果たせなかった夢を継いで貰おうと、小さな頃から我が子をサッカー漬けにしてしまい、どうみても審判やボール自体のほうがお似合いであるにも拘らず〈幻のシュートを放つ足だ!〉などと持ち上げているのが此にあたると思われます。

平山夢明『非道徳教養講座』(光文社文庫)

☆私的推薦図書…『あむんぜん』
心底具合悪くなりたい日、腹から声出して笑いたい日、気持ち悪い描写が見たい日にオススメ!


●川井 俊夫

書店員さん&作家さんが書籍紹介を行うYouTubeチャンネル『積読チャンネル』さんで紹介されていて、思わず購入しました。
経歴が既に面白い。ジジイ・ババア関連の暴言に事欠きません。言葉と拳の暴力のオンパレードです。
ご本人のX(旧Twitter)もオススメ。

 悩んだり絶望したりする暇はない。たぶんサイコ野郎の設計したベルトコンベアの速度は、宅配便サイズの荷物を扱うことを前提にしている。俺は素早く先回りしてベルトコンベアを飛び越え、反対側に回り込み、デカい箱の横っ腹を思い切り蹴飛ばした。反対側で運転手がそいつを受け止めて、なんとか床に降ろす。立て続けにもう一つやってきた。同じように四回くらい蹴りを入れて反対側に突き落としてやる。
「お客様の荷物は大事に扱うんだ! そいつがお前らの仕事だ! 泥棒扱いされたくなきゃ、荷物は丁寧に扱うんだ!」
 またどこかで変態野郎の叫び声が聞こえた。今度は俺が叫ぶ番だった。
「うるせえんだよ! ぶっ殺すぞ!」

川井俊夫『金は払う、冒険は愉快だ』

疾走感が凄い。めちゃオススメです。
☆私的推薦図書…『金は払う、冒険は愉快だ』


●ビアス
『悪魔の辞典』は知的暴言の宝庫として有名ですよね。以下、お気に入りの一文。

運命 ​(destiny​ ​n.)​  暴君が悪事を行う時に利用する典拠、愚者が失敗をしでかした時に持ち出す口実。

ビアス『新編 悪魔の辞典』(岩波文庫)


まだ他にもたくさんあるので、まとめ次第更新します。
オススメの暴言がありましたら、ぜひ共有してください✨️

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