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恋をするには危険すぎる香り

私の夫は10歳下。
以前働いていた職場で出会った彼。
年齢の割に落ち着いていて、誰に対しても分け隔てない接し方をし、
物腰が柔らかい。

そんな夫との結婚生活は、月日が経過するほど安定していた。
付き合い始めた当初は、各々の価値観が衝突する場面が多く、その度に
自分の本心を打ち明けるという儀式が執り行われていた気がする。
本来の私は、のらりくらりとやり過ごしたいタイプな気がするけど、
夫はそれを許さなかった。
「同じことを繰り返したくないから、その都度ちゃんと話をしよう」
いつだって夫はそのスタンス。

さて、恋の相手のこと。
結婚20年を超える既婚者。
兎にも角にも頭の回転が早い。
察知能力が高い。
相手が求めているであろう台詞を、いとも簡単に発する。
それは狙ってのことなのか、天賦の才か。
そして私と同い年。

今まで思ったことはないけれど、年齢が近いっていいな。
初めてそう思った。
恐らくここ最近の私は、年齢を重ねていく自分を目の当たりにし、
夫に対して引け目を感じていた気がする。
結婚前、10歳の差を簡単に考えすぎていたのかもしれない。
女性ホルモンが減って行くことで、急激に劣化が進む(ように感じる)
なんて、結婚前の私は考えもしなかった。

その点恋の相手は、同い年というだけで謎の安心感があった。
社会的地位も、収入も、女性の扱いも、夫より10年分多い経験値があった。
10年分の経験値がそうさせるのか、彼は女性の扱いに慣れていた。
しかし彼が発する言葉の端々に、複数の女性の影を感じる。
「英雄色を好む」
そんな言葉が頭をよぎる。

「今度一緒にどこか行く?」「LINE交換する?」
そんな台詞を聞く度に、どうしてこの人は「どこか行こう」とか「交換しよう」って言わないんだろう。
相手に委ねるっていうのは、優しさのように見せかけて、「決めたのは自分でしょ?」って言える状況を無意識に作っているように私は感じた。
そしてそれを怖いと感じた。
私の人生において、出会ったことの無い人種。




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